1. TOP
  2. 3 チンチラの病気
  3. 専門獣医師が解説するチンチラの毛噛み/毛咬症・自咬症

専門獣医師が解説するチンチラの毛噛み/毛咬症・自咬症

 2022/09/09 3 チンチラの病気 この記事は約 5 分で読めます。 3,083 Views
チンチラ毛咬み

行動異常

チンチラには行動障害の1 つとして、自ら噛んで被毛を切ったり(毛噛み/毛咬症)、皮膚を損傷させる行為(自咬症)が見られます。

原因は?

過密飼育、高温度・湿度、騒音などの環境ストレスが関連している可能性が高いです。特に親から早期離乳における子の情動行動の変化ならびに神経内分泌の影響も深く関与しており、毛噛みの発生率がより高いことが指摘されています〔Donnelly 2004〕。それ以外にも食餌の栄養素の不均衡、皮膚糸状菌症、甲状腺あるいは副腎などの内分泌疾患,内部寄生虫も発生要因になるという報告もあります〔Eidmann1992,Vanjonack et al.1973〕。消化管のうっ滞尿結石などの疼痛がある疾患によって、毛噛みが二次的に起こり、外傷骨折趾瘤症などにより、患部の自咬が起こることもあります。

症状

毛噛みは齧って短くなった被毛を,自咬は損傷した皮膚を確認して診断されます。そして、原因となる基礎疾患を考えないといけませ。被毛を齧るのは口が届く箇所で、短く切れ目のある被毛が特徴です。齧られた領域の被毛が、短く粗剛になっていたり、段がついて窪んでいたりしています。被毛が途中で切られた状態なので、毛皮の色合いが変わって見えます。顕微鏡で被毛を観察すると、切断された被毛構造が確認されます。皮膚の自咬は尾や四肢の発生が多く、切歯による咬傷が見られます。

ホルモンが本当に関与しているのか?

なお、チンチラで毛噛みの原因としてクッシング症候群の報告があります。表皮の過角質化および萎縮、皮脂腺萎縮、毛様体炎、皮下のカルシウム沈着など、犬のような特徴的な皮疹が見られました〔Tisljar et al.2002〕。甲状腺過形成は被毛への影響や体温調整にも関与する可能性が高いですが〔Eidmann 1992〕、実際に報告された甲状腺機能亢進症の症例では、体重減少、高血糖を示したに過ぎませんでした〔Fritsche et al.2008〕。副腎や甲状腺疾患の関与の詳細はよく分かっていないのが現実です。

治療あるの?

基本的な治療は原因を除去しないと根本的な解決になりませんが、毛噛みの具体的な原因を特定することは困難なことがほとんどです。エリザベスカラーの装着が必要となることもありますが、チンチラにかかるストレスが大きいです。飼育環境や食餌をしっかり見直して、様子を観察するしかありません。Galeano らは毛噛みのチンチラに、フルオキセチンを10mg/kg/日で、90日間経口投与を行いましたが、約46%にしか有効でなかったと報告しています〔Galeano  et al.2003〕。自咬による炎症や化膿がある場合は抗生物質を使用します。

参考文献
■Donnelly TM,Disease problems of chinchillas.In Ferrets,Rabbits,and Rodents:Clinical Medicine and Surgery.Quesenberry KE,Carpenter JW eds.Saunders,Saint Louis:p255-265.2004
■Eidmann S.Untersuchungen zur Atiologie und Pathogenese von Fellscaden beim Chinchilla (Studies on etiology and pathosis of fur damages in the chinchilla). Thesis (D.V.M.).fur Pathologie der Tierarzlichen Hochschule,Hannover, Germany.1992
■Fritsche R.Simova-Curd S,Clauss M,Hatt JM,Hyperthyroidism in connection with suspected diabetes mellitus in a chinchilla(Chinchilla laniger).Vet Rec163:454‐456.2008
■Galeano MG,Ruiz RD,Marta Fiol de Cuneo et al.Effectiveness of fluoxetine to control fur-chewing. behaviour in the chinchilla(Chinchilla lanigera).Animal Behaviour Science146(1-4):112-117.2003
■Tisljar M,Janić D,Grabarević Z,et al.Stress-induced Cushing’s syndrome in fur-chewing chinchillas.Acta Vet Hung502:133-142.2002
■Vanjonack WJ,Johnson HD.Relationship of thyr in the chinchilla.Comp.adrenal function to “fur-chewing”Biochem.Physiol.A45:115-120.1973

\ SNSでシェアしよう! /

チンチラ情報室|専門獣医師による飼育と病気の解説の注目記事を受け取ろう

チンチラ毛咬み

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

チンチラ情報室|専門獣医師による飼育と病気の解説の人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

関連記事

  • 専門獣医師が解説するチンチラの胃のうっ滞・毛球症〔Ver.2〕急死することもある!

  • 専門獣医師が解説するチンチラのファースリップ~驚くとハゲができる?

  • 専門獣医師が解説するチンチラの皮膚糸状菌〔Ver.2〕人にうつるカビ!

  • 専門獣医師が解説するチンチラの中毒とメトロニダゾールについて

  • 専門獣医師が解説するチンチラのてんかん発作

  • 専門獣医師が解説するチンチラのリステリア感染症