専門獣医師解説する爬虫類のビタミンB1(チアミン)欠乏症
ビタミンB1=チアミン
エネルギーの代謝に不可欠の酵素で、欠乏すると神経に特有の障害を引き起こします。チアミナーゼというビタミンB1分解酵素が、魚類,貝類、エビなどに含まれており〔Boś zet al.2000〕、水棲動物を食べるガーターヘビや水ガメでの発生が懸念されています。特にコイ、フナ、金魚などはチアミナーゼが豊富ですが〔Boś et al.2000〕、主食にしなければ問題にはならないはずです。その餌の割合や爬虫類の種類によってチアミンの感受性が大きく異なり、与えるべき明確な量は分かっていません。ヒメダカ、グッピー、ドジョウはチアミナーゼが梳く兄とも言われています。そして、チアミナーゼは加熱することで失活するため、魚類を餌として与える場合は一度湯通しをすると予防できます。しかし、反対にチアミナーゼは冷凍にすることで(冷凍魚を与えることで)機能が強くなるため注意して下さい〔Ross et al.2009,Anglesea et al.1985〕。
症状
チアミンは欠乏すると、一般的には食欲不振と体重減少が起こります。進行すると異常な姿勢や行動の変化、虚脱、筋肉の痙攣(振戦)、失明などが見られますが、 これらの症状は低カルシウム血症の症状と類似しているため、詳細な食餌歴、ビタミンB1による治療への反応、および血液検査でカルシウムの測定を行って鑑別します。
治療
餌の改善を行い、神経症状が発現している場合はチアミンが含まれているサプリメントを与えます。
参考文献
■Anglesea JD et al.Thiaminase activity in fish silage and moist fish feed. Anim. Feed Sci.Tech13:39-46.1985
■Boś M,Kozik A.Some molecular and enzymatic properties of a homogeneous preparation of thiaminase I purified from carp liver.J Protein Chem 19(2):75–84.2000
■Ross JR et al.Gizzard Shad Thiaminase Activity and Its Effect on the Thiamine Status of Captive American Alligators Alligator mississippiensis.Journal of Aquatic Animal Health 21(4):239-48.2009