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専門獣医師が解説する爬虫類・両生類の脱皮

脱皮とは?

爬虫類の表皮は特に体表からの水分蒸散による乾燥を防ぐため、表皮の表面に硬い鱗を持ち、ケラチンを多く含んだ死滅した細胞が厚い角質層を形成しています。この鱗は成長に伴って、周期的に新しい角質層が下に作られ、外側の古い角質層が剥がれて脱落するのが脱皮です〔Kardong 2002〕。トカゲやヘビでは一定の周期で短期間で脱皮が促進する現象が見られますが、カメはそれに比べて緩慢に時間をかけて脱皮しているようです。なお脱皮をすることでダニなどの外部寄生虫も一次的に除去されます。また、脱皮をすることでフェロモンが放出され、皮膚の色や模様が鮮やかになり、交尾相手の魅力が高まるよな作用もあります〔Bauwens et al.1989〕。

頻度は?

脱皮の頻度は、種類、気温や湿度、栄養状態、成長期などによって異なり、一概に脱皮頻度はこのくらいが普通ということは言えません。新陳代謝の激しい幼体の期間は脱皮の頻度が高く、成体になると脱皮の間隔が長くなります。また、爬虫類は夏になると気温が高くなり、新陳代謝が高くなるので脱皮の頻度が高くなります。あえて言うならばヒョウモントカゲモドキとフトアゴヒゲトカゲは2〜3週間に1回、ナミヘビは1〜3ヵ月に1回くらいです。ヘビやヤモリの仲間は、比較的決まった頻度で脱皮することが多いです。幼体時のヘビも2週間に1回の割合で脱皮する傾向にありますが、一方、パイソンの成体などの大型のヘビは1年に1回しか脱皮しないようなこともあります。

タイプは?

カメの脱皮はじりじりと継続的に行われますが、トカゲやヘビでは脱皮していない休止期と一気に増生する時期と極端に分かります。脱皮が始まると、ケージの中の木や石、シェルターなどに体を擦りつけて古い角質層を剥がします。カメとトカゲは時間をかけて体の部分ごとに脱皮するため部分脱皮と呼ばれます〔Gravish et al.2008〕。ヘビは全身の皮が繋がって剥がれるため全身脱皮と呼ばれ、ヘビの抜け殻として有名です〔Rutland et al.2019〕。特にカメの脱皮は知らず知らずに目立たなく行われ、甲羅も皮膚の一部なので、古い甲板がポロリと剥がれ落ちます。水ガメでは水槽の水底に古い甲板が沈んで発見されます。

カメの甲羅の脱皮不全はコチラ!

トカゲの脱皮の明確な前兆がありません。トカゲのグループであるアガマ(フトアゴヒゲトカゲ)やイグアナ、カメレオンは、全身の皮が浮いて細かい断片になって古い皮が剥がれる典型的な部分脱皮ですが、ヤモリはヘビに近い脱皮をします。ヤモリの脱皮は全身にうっすらと膜を被ったような感じになり、つやもなくなります。その膜の所々に亀裂が入り、脱皮の皮が浮き上がり、それを口を使って引っ張って取り去ります。脱皮した皮を食べてしまうヤモリもいます。多くの爬虫類は脱皮の直前には、皮膚や鱗は色がくすんで乾いた感じになり、薄い皮が浮いて見えてきますので、脱皮直前には白っぽくなります〔Rutland et al.2019〕。

ヘビも脱皮前に、鱗の色がくすんで乾燥し、同時に目(アイキャップ)も白濁し、脱皮に備えます。ヘビは摂食を控え、隠れるか安全な場所に移動し、その数日以内に、古い鱗は口の付近で破れ、ヘビは周りの粗い表面に身を擦り付けるようにして身をよじらせながら古い鱗を脱ぎ進めます。多くの場合、脱ぎすてた靴下のように一連の脱け殻になり、頭から尾まで全身が裏返しになっています〔Rutland et al.2019〕。ヘビの脱皮こそ永生と新生をもたらす象徴とされ、古くから縁起物と考えられ、財布などに入れておくと金運があがると信じられています。

ヘビの脱皮不全はコチラ!

ヤモリもトカゲよりはヘビに近い脱皮をします。多くのヤモリは、まず全身にうっすらと膜を被ったような感じになり、つやもなくなります。その膜の所々に亀裂が入り、脱皮の皮が浮き上がってきます。ヤモリは、それを口を使って引っ張ったりしてどんどん取り去っていきます。古い皮は食べてしまうヤモリもいます。

 

ヒョウモントカゲモドキの脱皮不全はコチラ!

両生類

両生類は、脱皮した皮は食べてしまうのが普通です。特にカエルは、四肢をを使って全身をこすって剥がします。水生の有尾類の場合は、脱皮途中で水に流されてしまって食べることができずに、いつまでも、脱皮した皮がふわふわと水中を漂っていることも多いです。

水分と栄養が脱皮のカギ?

爬虫類の皮膚の治癒は表皮が再生するのではなく、脱皮により下から新しい表皮が出来上がることで治癒するため、哺乳類の皮膚よりもはるかに時間を要し、皮膚の欠陥が完全に回復するまでに約 6 週間もかることもあります〔O’Malley 2005〕。皮膚の治癒過程で栄養失調になると、低タンパク血症になり、脱皮に関わる十分な酵素を産生することができず、治癒が遅れます。また、栄養失調や脱水(水分不足)は脱皮不全も生じます〔Price 2017〕。皮膚や鱗が水に触れると皮膚の透過性が高まるため、温浴は脱皮不全の治療に適しています〔Price 2017〕。ヘビは目が開いたままで、瞬きをしません。透明な皮がコンタクトレンズの様に眼球の角膜の上を覆って保護しています。この皮をアイキャップ(Eye cap)、スペタル(Spectacle)、ブリル(Brille)と呼ばれています。アイキャップは、普段は透明なので見えせんが、目が傷つかないような役目をしています。目の縁からアイキャップはしっかりとついて、体の脱皮する皮とつながっています。つまり、体の脱皮の時にアイキャップも一緒に脱皮して新しくなります〔Bauer et al.1989〕。脱皮不全が起こると、同時にアイキャップ遺残起こることがあります。

脱皮のとっかかりを与えよう

脱皮の際に古い鱗や皮をひかっける物があった方が行いやすいです。爬虫類は体をこすりつけるので、ケージの中に岩やレンガ、流木などを設置していると引っかかって剥けやすくなります。素焼きのシェルター(ウェットシェルター)は、体を擦り付けるのにも利用でき、保湿効果もあるので有用されています。

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爬虫類の脱皮を促進する液体製品が販売され、それぞれ鱗にかけて使用します。

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アリオンシェッドは液体スプレータイプで、全身にスプレーをして使用し、脱皮不全のしつこい部分ピンポイントでアリオシェッドフォームと使い分けることができます。成分は還元水素イオン水・液体リンゴ酸・精製クエン酸・L-酒石酸・フェチン酸・L-アスコルビン酸ナトリウム・純加糖などで、還元水素イオン分子は真皮の奥まで浸透して分離を助け、真皮まで浸透する事で皮膚内部から新陳代謝を促進します。また、真皮からの新陳代謝向上により色揚げ効果もあります。真空特殊二重構造のボトルによるスプレーは、超微粒子ミストになり、浸透性が向上します。天然成分で化学薬品を一切使用せず、生体の眼を痛めず・舐めても安全ですので安心してご使用いただけます。1日〜2日おきに全体が濡れるくらい散布し、皮が白濁してきたら多めに散布します。

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脱皮前の生体に直接スプレーを吹き付けてご使用します。アイキャップ遺残のヘビでは、直接スプレーしても、目に刺激をしません。成分は、オイル、可溶化ハイドロトロープ、グリセリン、ホホバオイル、ビタミンEアセテートを配合しています。ハイドロトロープは親水性を高める合成界面活性剤で、皮膚のバリアを壊して水を皮膚に入れる保湿作用があり、ホホバオイルも高い保湿力があり、皮膚の質を高める肌に良い成分が豊富に含まれています。 …

参考文献

■Bauwens Dirk,Van Damme Raoul,Verheyen Rudolf F.Synchronization of Spring Molting with the Onset of Mating Behavior in Male Lizards, Lacerta vivipara.Journal of Herpetology23 (1): 89–91.1989
■Bauer AM,Russel AP,Shadwick RE.Mechanical properties and morphological correlates of fragile skin in gekkonid lizards.The Journal of Experimental Biology145:79-102.1989
■Gravish N,Autumn K.Gecko adhesion:Evolutionary nanotechnology.Philosophical Transactions of the Royal Society A. 366:1575-1590.2008
■Kardong KV.Vertebrates,Comparative Anatomy,Function,Evolution.3rd ed.McGraw-Hill.New York.2002
■O’Malley B. Clinical Anatomy and Physiology of Exotic Species.Structure and Function of Mammals, Birds,Reptiles and Amphibians.Saunders Ltd.Philadelphia.2005
■Price ER.The physiology of lipid raft storage and use in reptiles.Biological Reviews92:1406-1426.2017
■Rutland CS et al.Reptilian Skin and Its Special Histological Structures Biology, Environmental Science.Veterinary Anatomy and Physiology.Catrin Sian Rutland,Valentina Kubale eds.2019