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血液検査で肝臓の値が下がらないんです・・・専門獣医師が解説するフェレットのE型肝炎ウイルス

 2023/07/29 5 フェレットのER この記事は約 6 分で読めます。 1,590 Views

フェレットは肝不全が多い

フェレットの検診あるいは調子が悪くて、病院で検査された結果、肝臓が悪いと診断されることが多いです。本来、フェレットには細菌性胆管肝炎、肝リピドーシス、リンパ球性胆管炎、腫瘍(肝臓癌、リンパ腫、嚢胞性胆管癌など)、胆石などの発生が多様に発生し、特にリンパ球性胆管炎などは自己免性疾患として多発することでも有名でした。また、リンパ腫の発生もフェレットでは珍しくなく、肝臓に腫瘍が発生するケースもあります。しかし、近年になってフェレットからの E 型肝炎ウイルス(HEV)が検出され、肝炎の原因の一つに考えられるようになりました。

フェレットの E 型肝炎ウイルス (HEV)

E 型肝炎ウイルス(HEV)は、ヘペウイルス科ヘペウイルス属に属し、肝炎を引き起こします〔Meng et al.2012,Emerson et al.2003〕。 シカ、ブタ、イノシシからヒトへのHEV の感染はよく知られ、E型肝炎は人獣共通感染症として認識されています。 人獣共通感染症E型肝炎は、主に遺伝子型 3(G3)およびG4のHEV 感染と関連しています〔Li et al.2005,Tei et al.2003〕。 シカ、ブタ、イノシシに加えて、サル、ラット、フェレット、ニワトリ、コウモリなどの他の動物も HEV または HEV 様ウイルスを保有していますが〔Meng2010,Raj et al.2012,Yamamoto et al.2012,Drexler et al.2012,Johne et al.2010〕、これらの動物からのHEVが人間に伝染するかどうかは明らかではありません。

アメリカ株?オランダ株?

フェレット HEV の抗原性や疫学は依然として不明です。オランダで検出された株〔Raj et al.2012〕と米国で検出された株〔Yang et al.2013〕は、遺伝子的に同一性が82.4~82.5%であり、フェレットのHEVは遺伝的に多様であることが示されました〔Li et al.2014〕。つまり株によって病原性も異なる可能性があるわけです。現在は世界中のフェレットに分布している可能性があり、アメリカから輸入された日本においての実験用フェレットからも2013年に検出され、これはアメリカで感染して、その後日本に輸送されたことを示唆しています。

実際の症状は?

不顕性感染、あるいは急性肝炎や持続感染のパターンが知られ〔Li et al.2017〕、それぞれの感染したヘルペスウイルスの株などで異なることが予想されています。今後の研究で病原性が解明されると思います。

診断は?

残念ながら日本では死後の剖検でないと診断できません。

参考文献

■Drexler JF,Seelen A,Corman VM,Fumie Tateno A,Cottontail V,Melim Zerbinati R,Bats worldwide carry hepatitis E virus–related viruses that form a putative novel genus within the family Hepeviridae.J Virol86:9134–947.2012
■Emerson SU,Purcell RH.Hepatitis E virus.Rev Med Virol13:145–154.2003
■Johne R,Heckel G,Plenge-Bönig A,Kindler E,Maresch C,Reetz J,Novel hepatitis E virus genotype in Norway rats, Germany. Emerg Infect Dis16:1452–1455.2010
■Li TC et al.Gnetic and physicochemical analyses of a novel ferret hepatitis E virus, and clinical signs of infection after birth Inf Gen Evo51.p153-159.2017
■Li T,Yang T,Ami Y,Suzaki Y,Shirakura M,Kishida N et al.Complete Genome of Hepatitis E Virus from Laboratory Ferrets. Emerg Infect Dis20(4):709-712.2014
■Li TC,Chijiwa K,Sera N,Ishibashi T,Etoh Y, Shinohara Y,Hepatitis E virus transmission from wild boar meat. Emerg Infect Dis11:1958–1960.2005
■Meng XJ,Anderson DA,Arankalle VA,Emerson SU,Harrison TJ,Jameel S,Hepeviridae.In Virus taxonomy:ninth report of the ICTV.King AM,Adams MJ,Carstens EB,Lefkowitz EJ eds.Elsevier/Academic Press.London:p1021–1028.2012
■Raj VS,Smits SL,Pas SD,Provacia LB,Moorman-Roest H,Osterhaus AD,Novel hepatitis E virus in ferrets,the Netherlands. Emerg Infect Dis18:1369–1370.2012
■Meng XJ.Hepatitis E virus: animal reservoirs and zoonotic risk. Vet Microbiol140:256–265.2010
■Tei S,Kitajima N,Takahashi K,Mishiro S.Zoonotic transmission of hepatitis E virus from deer to human beings.Lancet362:371–3.2003
■Yamamoto H,Suzuki J,Matsuda A,Ishida T,Ami Y,Suzaki Y,Hepatitis E virus outbreak in monkey facility, Japan. Emerg Infect Dis18:2032–2034.2012
■Yang T,Kataoka M,Ami Y,Suzaki Y,Kishida N,Shirakura M,Characterization of self-assembled virus-like particles of ferret hepatitis E virus generated by recombinant baculoviruses.J Gen Virol94:2647–2656.2013

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