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専門獣医師が解説するミニブタってどんな動物?〔Ver.2〕知らないといけない生態と特徴

 2021/09/07 1 ミニブタの生態・特徴 この記事は約 13 分で読めます。 5,708 Views

豚なんですよね?

ブタはイノシシを家畜化した動物です。 家畜化された時期については複数の諸説があり、よく分かっていませんが、紀元前6,000年の農耕遺跡からブタの骨が出土した記録があります。

この家畜化したブタが逃げ出し野生化したものが野ブタ(野生のブタ)で、全身に剛毛が生え、牙が伸びて、先祖返りしてイノシシ化することがあります。この野ブタが野生のイノシシと交尾してできた交雑種がイノブタです。

現在、ペットとして人気のあるミニブタは小型のブタを指しています。食肉用の大型のブタの体重は140〜230kgに達しますが、ミニブタは40~70kgです(まれに100kg以上に育つ個体もいます)。ミニブタは実験動物として作られたのが始まりです。

実験動物として活躍している理由

医学研究においてのミニブタは、毒物学、薬理学、実験手術、呼吸器学、心臓病学、異種移植、整形外科手術、老化研究などの分野で使用されてきました〔Høy-Petersen et al.2020〕。ブタは他の実験動物と比べて身体もそれなりに大きく、サル以上に体重や皮膚の状態、内臓の大きさなどが人間に近い動物です。異種間移植の臓器提供用動物としても研究が続けられています〔Cooper David 2017〕。例にあげると、ブタは人の胃腸の構成細胞、通過時間やpH〔Claudia et al.2012〕、肝臓における主要薬物代謝酵素も類似しています〔Dalgaard 2015,Claudia et al.2012,Zuber et al.2002.〕。皮膚が裸出しているため、化粧品や外用薬の塗布試験などにも使われます。

どのようにしてミニブタは作られたのか

ペットのミニブタは、元々家畜として飼われていたブタの小型種と交雑によって作られた種類の2つのルートがあるようです。交雑種は主に実験動物として開発されたもので、ほとんどはポットベリー種と他の小型種から作られました。中にはドイツで開発されたゲッティンゲン種の血を引くものと思われるものもいます。ゲッチンゲン種はミネソタミニブタ、ベトナムのポットベリー種、ドイツのランドレース種を交配することによって開発された小型種です〔Bollen et al.1996〕。

ミニブタとマイクロブタ

実験動物やペットのブタにはさまざまな形や大きさ、そして様々な品種があります。形状とサイズから、マイクロ、ティーカップ、ナノ、ピクシーなどと呼ばれていますが、定義は曖昧です。 ミニブタやマイクロブタと言っても、子豚では将来の正確な身体サイズの予測できません。 可能であれば、親豚の身体のサイズを確認した方がよいでしょう。
マイクロブタ
マイクロブタはミニブタよりも小さく、18~40kgまでしか成長しないのが一般的です。

ブタの分類

哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ科(イノシシを家畜化したものがブタです)
学名Sus scrofa domesticus
英名:Pig(Miniature potbellied pig,Miniature pig,Mini-pig)
別名:ミニチュアブタ

ブタの生態

環境:イノシシと同様に森林に生息しています。

行動
・ブタは社会的な動物で、母系の小さな群れを作ります。その群れは2~6頭の母豚とその子たちで構成されます。群れは30頭くらいまで増えることもあります。若いオスは数頭で緩い群れを作ります。
・行動範囲は1~25km2と広く、季節ごとの食べ物や水を求めて移動します。縄張りを他の豚やグループと共有することもあります。
・群れの個体同士でグルーミングをしたり仲間と密接な接触をしています。
・イノシシは昼でも夜でも活動し、主に薄明薄暮に活動する〔Robert et al.1987〕。ブタも昼行性と言われているが、薄明薄暮が最も活動する。夜は草や枝などで寝床を作り休んでいます。
・湿地や沼地を好み泥浴びもします。

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食性
・ブタは雑食動物で、生息地や季節ごとに採取できるエサに適応しています。春は植物や若木の葉や花のつぼみ、ジャガイモなどの塊茎などを食べ、秋から冬はどんぐりや果実などを食べています。ミミズ、昆虫、両生類や爬虫類、げっ歯類、腐肉を食べることもあります〔Signoret et al.1975〕。
寿命:10~15年

これがポイント!(分類と生態)
・イノシシを家畜化したのがブタ
・小型のブタがミニブタ
・ブタは群れで生活する
・雑食性
・寿命は10~15年

習性

頭が良い

ブタは知能が高く、犬よりも賢いと言わてています。鏡に映った自分の姿を見て、視覚的に自分自身と認識できます(鏡映認知)。鏡映認知ができる動物は、チンパンジー〔Gallup 1970〕、イルカ〔Reiss et al。2001〕、ゾウ〔Elephants’ Jumbo Mirror Ability 2006〕、カササギ〔Prior et al.2008〕、ヨウム〔Hill et al.2015〕などがいます。トイレのしつけ、お座り、お手、お回り、待てを覚えさえることも可能です。

愛情深い

群れの仲間を大切にし、互いに鼻を接触させることで親密になります。採食や探索をしながらも仲間の行動を視覚で捉え、声で常に互いの存在を確認し合います。ブタは飼い主を嗅覚よりも資格て認識します。特に服の色が手がかりになり〔Koba et al.1998〕、次いで体形や顔の特徴で見極める〔木場ら 1999〕。ペットのミニブタも人に飼われることで温厚愛情深くなり、飼い主の好意を受け取り、それを愛情として返してくれるようになります。また、ミニブタは、犬や猫などの他の動物とも仲良く飼うこともできます。

力強い

ミニブタも力強い動物で、鼻で攻撃する以外にも、甘えたり、注意を引き付けるために、飼い主に押し付けてきます。機嫌が悪いと、家具を倒してしまうようなこともあります。

きれい好き

清潔を好むため、排泄をする場所はエサを食べる所や寝床から離れた決まった1ヵ所に決める習性があります。トイレは低い所で、湿った所を好みます。

鳴き声

ブタの鳴き声は、「ブーブー」「ブヒブヒ」というのが定番ですが、他にも複数の鳴き方によって意思表示をします。母ブタが授乳する時は、優しく「グウグウグウ」と鳴くことで子ブタを集め、子ブタも先立って甲高い声を出します。何かに興味を示している時は「グッグッグッ」、空腹や怒っている時は「グォーグォー」と甲高く鳴き、闘争や痛い時は「ギャーギャー」と鳴きま、20種類以上の鳴き声を使い分けているといわれています〔Kilgour et al.1984〕。

特徴

ブタはオリジナルのイノシシと違って、長く家畜化されてきたために、性格や身体の形態はかなり変化をしてきました。いずれのミニブタも品種や系統、個体差により、イノシシの外貌に近かったりするなど、相違が大きいです。

短い頸

地面のエサを鼻で掘って探すために、太くて短い頸の方が合理的です。見た目はどこに首があるのか分かりません。

長い胴体

家畜化したブタはイノシシと比べて胴体が長いです。これはロースやベーコンといった肉を得るために背中や大腿部の肉が多くとれるようにした結果です。イノシシの胸椎と腰椎の数は19個に対して、ブタは平均21個と数が多いです。

短い鼻

ブタはイノシシと同様、土中の虫や植物の球根など掘り返して食べるため、他の家畜と違って吻が長く伸びて突き出しています。鼻先は鼻鏡となり、2つの鼻孔があります。鼻鏡はいつも湿っており、鋭い嗅覚を備えています。この鼻鏡にも短い毛(ヒゲ)が生えていおり、触覚にも敏感です〔阿部 1982〕。しかし、ミニブタは地面を掘ってエサを探す必要がないため、吻は著しく短縮して、上方へしゃくれています。

鋭い嗅覚

ブタの嗅覚は土中の深い場所にあるエサを見つけることができるほど優れています。また、嗅覚はコミュニケーションや仲間の認識にも役立ちます。特にフェロモンを唾液や尿に分泌させで、相手が見えなくても尿や体臭で見分けたり、なわばりにもマーキングします。この特性から高級食材であるトリュフを掘り起こすのに、メスのブタが使われていました。トリュフにはオスのブタのフェロモンと同じ成分が含まれており、ブタはその匂いを嗅ぎつけて掘り起こします〔ダネンベルグ 1995〕。

皮膚・被毛

皮膚は特に肩から背中にかけて厚いです。被毛は剛毛で、イノシンでは背中はたてがみ状の長い毛が生え、ブタの被毛はブラシの原料に使用されることもあります。皮膚の構造が人に類似しており、3ヵ月齢ぐらいの皮膚の厚さが人間の成人に近く、実験動物として積極的に使用されています。他の実験動物に比べ毛が少ないのも、人に近い特徴です。換毛は年に1~2回です。

温度調節が苦手

ブタは汗腺を欠くため、体温調節が苦手で、夏は人以上に熱中症にかかりやすいです。発汗ができないので、暑い夏は呼吸回数を多くして体内の熱を蒸発させる泥浴びをします。泥を身にまとうことで水分が蒸発する時に体熱を奪っていくので、効率よく体温を下げます。

体色

毛色も白色、黒色、茶色、赤褐色など様々で、斑紋のあるもの、有色で白いベルトを肩の部分にもつものなど、変異が多いです。

歯式は切歯6本、犬歯2本、前臼歯8本、後臼歯6本の計44本です。犬歯は長く伸びて牙になり、生涯伸び続けます。鼻先と牙を使い、家具などを押し上げて壊すようなこともできます。また、人に突進して鼻先を股ぐらに突っ込み、頭部を持ち上げながら強くひねるような攻撃もできます。野生時代の名残ともいえるこの行動をしゃくりと呼ばれます。しかし、ミニブタのは牙があまり伸びず、マイクロブタはほとんど伸びません。伸びたら人に危害を与えないように切除又は抜歯することになりますが、その必要性は少ないです。

近眼

ブタは近眼(視力は0.017~0.07)なので遠くの物を確認するのは苦手です〔Tanaka et al.1998〕。色彩の判別は青色のみ可能で、緑色は困難で、赤色は認識できません〔Tanida et al.1991〕。

ひづめ

ブタの指は4本で、第1指は退化し、第3指と第4指が強大で、蹄(ひづめ)で覆われています。このような足先を肢蹄(してい)と呼ばれています。

巻尾

尾は短くて上に向かって巻いています。嬉しい時には小さい尻尾を振って喜びを表現します。

乳頭

豚は多産のため乳房がたくさんあり、左右6対計12個あります。

消化器

豚は人と同じく胃が1つで、大腸には植物質を発酵・消化する大きな盲腸を持っています。

繁殖

野生のイノシシが春に繁殖期を迎える季節繁殖動物で、ブタは一年中繁殖可能な周年繁殖動物です。

性成熟

オスは8ヵ月齢、できれば精子が安定する10ヵ月齢で繁殖に使います。メス8ヵ月齢で成熟して妊娠できます。

発情

メスは約21日周期で発情します。発情すると外陰部は赤色に腫大になり、粘液が出てきます。発情期間は約7日続きます。発情は3つの時期に分かれ、前期は腫大が軽微で(平均2.7日間)、中期は腫大がピークを迎え(平均2.4日間)、粘液も乳白色になり粘度が高くなり、オスを許容します〔田中 2019〕。排卵は中期に入った約30時間後に起こります〔丸山 1996〕。それ以降は後期となり、平均1.8日間です〔田中 2019〕。

交配

メスは発情開始後26~37時間で排卵します。オスがメスの後ろから乗って交尾を行います。

出産

妊娠したメスは出産の1~2日前に群れを離れ、安全に出産できる場所を探します。地中に穴を掘り、草や小枝で隠し、快適な巣を建設します。一般的に4~7頭の子を出産します。

子育て

子ブタは産まれてすぐに歩き始め、目も耳も開いており、子豚は自分の母親の声を認識して、乳を吸うための乳首を見つけます。その授乳場所の序列は初日に決まるそうです。兄弟間の絆は強く、生後8週間の時点ではまだ完全に群れにくっついて行動します。離乳は遅く、14~17週まで乳を飲み続け、再び母親が妊娠する頃、独り立ちします。子ブタは皮下脂肪が約1%(ウサギ6%、ヒツジ3%)なので、寒さに弱いです〔Pond et al.1978〕。生後7日までの体温調整機能が確立するまでは28~35℃で保温しないといけません〔三村 1980〕。

参考文献
■Gallup GG Jr.Chimpanzees:Self recognition.Science167 (3914).86–87.1970
■Hill HM,Webber K,Kemery A,Garcia M.Kuczaj SA.Can sea lions (Zalophus californianus) use mirrors to locate an object?.International Journal of Comparative Psychology 28.2015
■Kilgour R,Dalton C.Livestock behaviour 1st ed.Granada.London.1984
■Koba Y,Tanida H.How do miniature pigs discriminate between people?: Discrimination between people wearing coveralls of the same colour.Applied Animal Behaviour Science73(1).p45-58.2001
■Pond WG,Houpt KA.The Biology of Pig.CorねlUniversity Press.New Yorlk.1978
■Prior H,Schwarz A,Güntürkün O.Mirror-induced behavior in the magpie (Pica pica):Evidence of self-recognition.PLoS Biology 6 (8).e202.2008
■Reiss D,Marino L.Mirror self-recognition in the bottlenose dolphin:A case of cognitive convergence.Proceedings of the National Academy of Sciences98 (10).5937–5942.2001
■Robert S.Dancosse J.Dallaire A.Some observations on the role of environment and genetics in behaviour of wild and domestic forms of Sus scrofa(European wild boars and domestic pigs).Applied Animal Behaviour Science17(3-4).p253-262.1987
■Signoret JP,Baldwin BA,Fraser D,Hafez ESE.The behaviour of swine.In The Behaviour of Domestic Animals 3rd ed.Hafez ESE ed.Baillière Tindall.London.UK.p295‐329.1975
■Tanaka T,Murayama Y,Eguchi Y,Yoshimoto T.Studies on the Visual Acuity of Pigs Using Shape Discrimination Learning.Anim.Sci.Technol69(3).260-266.1998
■Tanida H,Senda K,Suzuki S,Tanaka T,Yoshimoto T.Color discrimination in weanling pigs.Animal Science and Technology62.1029-1034.1991
■阿部光雄.解剖.豚病学第2版.熊谷哲夫他編.近代出版.東京.p3-39.1982
■木場有紀.家畜はヒトを識別しているのか?ヒトと家畜との相互作用.ヒトと動物の関係学会誌3.72-78.1999
■ダネンベルグHD.ブタ礼賛.福井康雄訳.博晶社 1995
■田中智夫.ブタの動物学.アニマルサイエンス4.第2版.東京大学出版会.東京.2019
■丸山淳一.Ⅵブタ.6繁殖.新編家畜大辞典.田中威和夫監修.養賢堂.東京.p950‐958.1996
■三村耕,森田琢磨.家畜管理学.養賢堂.東京.1980

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