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マウスやラットが痒がって毛が抜けています・・・ 専門獣医師が解説するケモチダニ

 2020/03/23 5 マウス・ファンシーラットのQ&A この記事は約 5 分で読めます。 12,080 Views
マウスケモチダニ

マウスやラットの皮膚病?ダニ?

マウスやラットが痒がって毛が抜けたり、毛並みが悪い、皮膚炎が起こる原因と言ったら、まずはダニを疑います。ダニの寄生以外の原因も考えらえますが、特にダニが原因であることが多いです。しかし、ダニ以外も原因となることがあるので、素人判断はせずに、動物病院で診察をしてもらって下さい。

ケモチダニって?

ケモチダニとはケモチダニ科に分類されるダニで、数種類がいます。ケモチダニは白色で扁平した体をしており、短い第1脚の先端に把毛器を備え、毛をつかむ特有の構造をしています。名前のケモチも、毛にしがみついて生活をしていることが所以で、体液を吸って生活をしてます。脚の先端に把毛器は口から飛び出た牙ように見えます。ケモチダニは厳密な宿主特異性を示します〔内川 1977〕。動物種ごとに決まったダニが寄生し、他の種類には寄生しません。もちろん犬猫や人にはうつりません。主にマウスやラットへの寄生が問題となり、かなり蔓延しています。マウスでのMyobia musculi(ハツカネズミケモチダニ)、Mycoptes musculinus(ネズミスイダニ)、Radfordia affinis(ハツカネズミラドフォードケモチダニ)、Mycoptes musculinus(ネズミケクイダニ)、ラットでのRadfordia ensifera(イエネズミラドフォードケモチダニ)が有名で、これらはマウスやラットの被毛ダニと総称で呼ばれています。

ハツカネズミケモチダニ

ハツカネズミいわいるマウスを宿主とし、特に実験動物用マウスに多く、ペット用のマウスにも見られます。オスは体長0.27~0.31mm、幅0.17~0.18 mm、メスは体長0.35~0.3mm、幅0.21~0.22mmで、メスのほうが大きいです〔Friedman et al.1977〕。

ケモチダニ  マウスケモチダニ

ダニの寄生が引き金となり、アトピー性皮膚炎が起こるとが知られ、実験動物のマウスで研究されています〔Suto et al. 1999〕。

ハツカネズミラドフォードケモチダニ

マウスのケモチダニで、ハツカネズミケモチダニと比べて細長く、同時寄生が起こることもあります。

マウスケクイダニ

オスとメスの形が異なり、メスは胴部が丸いことが特徴です。病原性は弱いです。

イエネズミラドフォードケモチダニ

ラットのケモチダニで、オスの体長は0.322~0.392mm、メスは0.462~0.588mmで、形はハツカネズミケモチダニと比べて、やや寸胴で丸味を帯びています〔松崎 1962〕。

ラットケモチダニ

どんな症状?

ケモチダニが体表に寄生して皮膚炎を起こしますが、ダニの数が少ないと無症状です。寄生数は毛繕いによって抑えられるためか〔藤原ら 1977〕、あるいは長い潜伏期があるのか不明ですが、発病には個体差があります。病原性も多様であり、毛並みの悪化、薄毛から脱毛、皮膚炎までみられます。

ラットフケ

皮膚炎は頭や顔、肩甲部、背中に多発し、一部のマウスやラット(マウスに多い)にはダニの抗原に対するアレルギー反応による激しい掻みが起こり、激しい皮膚の自咬や引っ掻き傷を作ります。

マウスケモチダニ  マウスケモチダニ

検査は?

毛をよく見ると、白い粉のように見えます。この毛を抜いて顕微鏡で観察すると、卵や生体が発見されます。

ラット毛の検査 マウスケモチダニ

治療は?

背中に垂らすタイプの駆虫薬を数回投与することで治療します。

予防できるの?

ケモチダニの感染は接触で起こりますが、、寄生したマウスやラットに接触した人の手やケージを介しての感染も考えられます〔藤原ら 1977〕。同居したマウスやラットは感染している可能が高いので、検査をしほうがよいでしょう。同じケージから、あるいは飼い主の手を介しての感染もあり得るので注意して下さい。

参考文献
■Anderson NL.Basic husbandry and medicine of pocket pets. In Saunders Manual of Small Animal Practice,SJ Birchard and RG Sherding (eds).WB Saunders.Philadelphia.p1363-1389.1994
■Friedman SWeisbroth SH.The parasitic ecology of rodent mite,Myobia musculi. IV Life cycle,Lab.Anim.Sci27.p34-37.1977
■Paterson S.Skin Diseases of Exotic Pets. Wiley-Blackwell.2006
■Percy DH,Barthold SW.Pathology of Laboratory Rodents and Rabbits.Amws,IA, IowaState University Press.1993
■Suto H,Matsuda H,Mitsuishia K,Hiraa K, Uchidaa T,Unnoa T,Ogawaa H,Raa C.NC/Nga Mice:A Mouse Model for Atopic Dermatitis. Int Arch Allergy Immunol120.70-75.1999
■内川公人. 日本産食虫類および齧歯類に寄生するケモチダニ類,ダニ学の進歩.佐々木学編.p415-431.北降社.1977
■松崎沙和子.ラット,ドブネズミに寄生するダニの本邦未記録種 (Radfordia ensifera (Poppe,1896)) について(第14回大会講演要旨)衞生動物13(2).p158.1962
■藤原公策,中川雅郎.石井俊雄.高垣善男編.実験小動物の感染病.p353-383ソフトサイエンス社.東京.1977

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