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げっ歯類の食糞

 2021/09/28 1 マウスの生態と特徴 この記事は約 10 分で読めます。 1,376 Views

糞を食べること

食糞(しょくふん)(Coprophagy)とは、動物が自分自身または他の動物の糞を食べることで、その目的は動物種によって様々です。

どんな動物がするの?

食糞する動物で一番に有名なのがウサギで、植物が繊維質(セルロースなど)は消化管の消化酵素では消化が困難であり、繊維質の未消化残渣などの成分を盲腸で発酵し、この発酵で得られたエネルギー(VFA)や栄養素の塊として特殊な糞(盲腸便)を作り、それを食糞します。ウサギの盲腸便は粘膜に包まれた柔らかい糞の塊で、直接肛門に口をつけて摂取します。盲腸便にはアミノ酸、ビタミンBが豊富に含まれていることが分かっています。

ウサギ以外にも、キツネザル〔Charles-Dominique et al.1971〕、スナネズミ〔Flurer et al.1988〕、馬〔J. entwickelten Schurg〕、ラット〔Kennedy 1927〕、マウス〔Takahashi et al.1982〕、ハムスター〔Shichijo et al.2013〕、モルモット〔〕、チンチラ〔Holtenius et al.1985〕、デグー〔Kenagy et al.1999〕、スナネズミ〔 Schwentker 1968〕、ビーバー〔Ingles 1961〕、トガリネズミ〔 Loxton et al.1975〕などげっ歯類を含めて多種の哺乳類で見られます。基本的に食糞する動物は植物を発酵する盲腸を後ろの腸に備える動物に見られ(後腸発酵動物)、多くが小型から100 kg未満の中型の草食動物になります。これらの動物は盲腸で発酵を行い、食糞をします。しかし、盲腸で発酵するという同じシステムを持ちながら、フクロモモンガなどは食糞をしません。また、馬はウサギと異なり、子馬のみ食糞をし、親と同じに腸内細菌叢を整えます。コアラも子のみが食糞しますが、腸内細菌と栄養を豊富に含んでいるピュレ状のパップ(Pap)と呼ばれるものを口にします。

食糞をよくする種類とあまりしない種類がいる

身近な動物では、ウサギ、モルモット、 チンチラの食糞は旺盛ですが、 ハタネズミでは極めて少なく, ラット、 マウス、 ハムスターはその中間位です。夜行性の動物が多いためか、昼間に食糞をすることが多いと思われます。これはエサが摂取できない時間帯に食糞をすることで、消化管への継続的な摂取が可能になり、腸の蠕動を維持する目的もあると言われています。食糞の研究は昔からウサギとラットで行われてきましたが、まだまだ分かっていないことが多いです。

表:各動物の食糞〔Ebino 1993〕

動物種 食糞数/日/頭 明時間に食糞する割合(%)
回数 頭数
マウス(IVCS strain) オス 1.0±0.4 10 100
メス 3.3±0.5 20 100
ラット(Wister strain) 4.5±0.6 5 51
ゴールデンハムスター 21±8 5 61
チャイニーズハムスター 20±10 5 68
ヨーロッパハタネズミ 4.3±0.9 5 82
モルモット(Hartley strain) オス 165±20 5 83
メス 197±12 5 67
チンチラ 201±11 4 93
ウサギ(ジャパニーズホワイト) オス 72±15 5 60
メス 58±14 5 58

各動物の食糞

マウス

マウスは上半身を肛門に向けて曲げて座位で食糞します 。ラットの食糞する糞は、通常の硬い糞と比べて、やや水分を含んで柔らかいです。食糞の糞を摂取する方法は、実験動物のマウスにおいては系統によって異なる報告があります。IVCSマウス(IVCS strain)は、口で肛門から直接糞便を採取した後、前肢で糞便を保持してから摂取します。 ウィスターラット(Wister strain)は幼若体ではIVCSマウスと同じ方法ですが、成体になるとケージの床に落ちた糞を摂取する傾向があります〔Takahashi et al.1982〕。
マウスの食性は雑食動物の中でも比較的草食に近く、 種子には含まれていない造血に関与するビタミンB12を腸内細菌から合成するとを目的として食糞を行っていると考えられています。食糞行動は、エサのビタミンB12含量とマウスの栄養状態等によって影響を受けて、栄養要求の高い時期では食糞の頻度と量は多くなりますが、老化など栄養要求量が低い時は減ってきます。近年の栄養バランスの                                                                                                                                                                                                                  取れたペレットが出てきたため、食糞の必要性はなくなると思われます。なお、 食糞をしなくても、ストレスなどの大きな影響は認められませんが、腸内細菌数の減少が示唆されるため、食糞によって腸内細菌叢が維持されている可能性があります。 食糞は栄養が整ったエサを給餌されていても発現し、離乳したての幼体においても認められることから、本能的行動です〔Ebino 1993〕。

ラット

ラットの食糞の糞は通常の糞便よりもアミノ酸、ナトリウムとカリウム、ビタミンB12が高く〔祐森ら2006〕、上半身を肛門に向けて曲げて座位で食糞します。ラットでは栄養不足がある場合に食糞の頻度が増加すると言われていますが〔Nováková et al.1989〕、食糞の目的もマウスと同じです。特徴として、食糞行動は離乳直後は頻繁に見られますが、成長するにつれて回数が減少することです。具体的には生後約25日齢に頻度が増加した後、急激に低下し、自然離乳の時期と一致して完全に停止しました〔Ebino 1993〕。食糞行動の1日当たりの平均回数は、3-4週齢で最も多く、16.4回でしたが、25週齢では平均3.2回まで減少します〔池田ら1991〕。なお、離乳時間が延長された栄養不良の個体では食糞は長引き、早期に離乳した個体(16日齢)には見られませんでした〔Ebino 1993〕

ハムスター

ハムスターは上半身を肛門に向けて曲げ、座位で食糞をしますが、ウサギやモルモットと比べて頻度が少ない理由は、ミズハタネズミと同様に前胃が牛のルーメン(第1胃)のように発酵が常に行われ、さらに比較的大きな盲腸も備えていることです〔Arai et al.1983,Hornicke 1981〕。この胃前および盲腸の発酵に対して食糞の影響があることは間違いないのですが〔Shichijo et al.2013〕、具体的なことは分かっていません。

モルモットとチンチラ

モルモットやチンチラは食糞の頻度は高く、両動物とも同じ目的で行われているようです〕。食糞する糞はウサギのようなブドウの房状でなく他のげっ歯類と同じに一個づずの軟便です。栄養素の利用に食糞が重要とされています〔Hintz 1969〕。

デグー

デグーは薄明薄暮の生活をしていますが、1日の糞便生産の約38%が食糞され、この食糞の87%は夜に行われます〔Kenagy et al.1999

参考文献
■Arai T,Oki Y.Induction of dietetic diabetes and its mechanism in Microtus arvalis Pallas.Exp.Anim32.191-200 (In Japanese with English abstract).1983
■Charles-Dominique P,Hladik CM.Le Lepilemur du sud de Madagascar:Ecologie,alimentation et vie sociale.La Terre et la Vie25.3-66.1971
■Ebino KY.Studies on Coprophagy in Experimental Animals.Exp.Anim42(1).1-9.1993
■Flurer CI,Zucker H.Coprophagy in marmosets due to insufficient protein(amino acid) intake.Lab.Anim21.330-331.1988
■Hornicke H.Utilization of caecal digesta by caecotrophy(soft faeces ingestion)in the rabbit.Livest.Prod.Sci8.361-366.1981
■Hintz HF.Effect of Coprophagy on Digestion and Mineral Excretion in the Guinea Pig.The Journal of Nutrition99(3).p375–378.1969
■Holtenius K,Björnhag G.The colonic separation mechanism in the guinea-pig (Cavia porcellus) and the chinchilla (Chinchilla laniger).Comparative Biochemistry and physiology82(3).537-542.1985
■Ingles LG.Reingestion in the mountain beaver.J.Mammal42.411-413.1961
■Kennedy C,Palmer LS.The funda[1]mental food requirements for the growth of the rat.IV. Coprophagy as a factor in the nurition of the rat.J.Biol.Chem16.607-621.1927
■Kenagy GJ,Veloso C,Bozinovic F.Daily rhythms of food intake and feces reingestion in the degu, an herbivorous Chilean rodent: optimizing digestion through coprophagy.Physiol Biochem Zool72(1).78-86.1999
■Loxton RG,Raffaelli D,Begon M.Coprophagy and the diurnal cycle of the common shrew,Sorex araneus.J.Zool.Lond177.449-453.1975
■J. entwickelten Schurg, of Bakteriologie, W.A., Anim. Y., whole Frei,D.L., bei Suzuki, Cheeke, P.R., cornMenschen Sci., Verfa-hrens plant par-asitenkunde, K., mit and 45, den Infektionskrankheiten und bisherigen Hygie,fð¹rblichen Verfahren zu
■Nováková V,Babický A.Coprophagy in young laboratory rat.Physiol Bohemoslov38(1).21‐28.1989
■Schwentker V.Care and maintenance of the mongolian gerbil.Tumblebrook Farm,Inc.New York.p13.1968
■Shichijo H,Takahashi T,Kondo Y,Sakamoto SH,Morita T.Nutritional significance of coprophagy in the rat-like hamster Tscherskia triton Reviewed.Mammalia77(3).329-333.2013
■Takahashi KW,Saito TR,Suzuki W,Katsuyama M,Sakuma S,Tauchi K et al.Studies on coprophagy in the mouse.Zool.Mag92.397-401.1983
■祐森誠司, 黒澤 亮, 池田 周平, 栗原 良雄.ラットの食糞行動と栄養素摂取の関係.ビタミン80巻(9).2006
■池田周平、裕森誠司、伊藤澄麿.ラットの成長に伴う食糞行動回数の変化.日本家畜管理学会誌34(3).71-75.1999

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