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専門獣医師が解説するペットのヘビの分類と知らないといけない知識〔Ver.2〕

1 ヘビ この記事は約 9 分で読めます。 9,910 Views

ヘビの特徴

ヘビは細長くて四肢を欠いており特徴的な外貌をしており、各内臓も細長い形状をしています。また、顎を大きく開けて獲物を丸飲みするという野生感も魅力になっています。この独特なヘビは、トカゲなどと同じく有鱗目の仲間で、へビ亜目に属しています。古代にトカゲから進化して〔Mehrtens 1987、Sanchez 2007〕、その過程は水中あるいは地中に生活することで、四肢を喪失したと言われています。感覚器も特殊で、ニョロニョロと舌を出して、空気中の匂いの粒子を捉え、口腔内上顎にあるヤコブソン器官で感知します。視力は種類によって異なりますが、一部のヘビではピット器官という赤外線感知器官を備え、獲物であるネズミを発見するのに役立ちます。外耳を欠いていますが、内耳は備え、地面の振動を受信して捉えます。

現在、ヘビは約3900種から構成され、コブラなどの毒ヘビは一部で、大半の種類は無毒です。大きさも最大10mといわれるアミメニシキヘビやオオアナコンダなどのヘビは、人に巻きついたり、飲み込むような事故もあります。

そのため、 日本ではコブラ科やクサリヘビ科などの有毒種、ナミヘビ科とボア科、ニシキヘビ科の一部などの大型種のヘビは、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)の規定に基づいて、特定動物(人に危害を加えるおそれのある危険な動物)の飼育許可が必要でした。しかし、2019年6月19日の法改正により、愛玩目的での飼育は禁止となり、規制対象に特定動物との交雑個体も追加されました(2020年6月1日に施行)。愛玩目的以外で特定動物の飼育や管理を行う動物園などでは、都道府県知事または政令指定都市の長の許可を受けなければなりません。飼育に際しても設備その他の基準(マイクロチップを埋め込む、毒ヘビならば抗血清を準備する)を定めることで許可されています。

表 特定動物のヘビの種類

分類 種名
ニシキヘビ科 アメジストニシキヘビ
オーストラリアヤブニシキヘビ
インドニシキヘビ
アミメニシキヘビ
アフリカニシキヘビ
ボア科 ボアコンストリクター
オオアナコンダ
ナミヘビ科 ブームスラング属全種
ヤマカガシ属全種
タキュメニス属全種
アフリカツルヘビ属全種
コブラ科 コブラ科全種
クサリヘビ科 クサリヘビ科全種

現在はペットで人に危害を加えるおそれのある毒ヘビや大蛇は飼育が禁止され、日本で主に流通し飼育されるのはナミヘビ科の無毒種や弱毒種、ボア科やニシキヘビ科の小型から中型種になります。

内臓

細長い体内には全ての臓器が細長く収納され、一対の臓器(腎臓や生殖器など) は隣り合うのではなく、前後に位置しています〔Mader 1995〕。大半のヘビは左肺は痕跡的で、機能する右肺しか持っていません〔Mader 1995〕。この肺には、血管が発達した気管末端部から繋がり、肺の末端にはガス交換が機能しない気嚢に連絡しています〔Mader 1995〕。

 

骨格

ヘビの骨格は他の爬虫類の骨格とは根本的に異なります。脊椎は200~400個またはそれ以上の椎骨で構成され、椎骨にはそれぞれ2本の肋骨が関節で結合しています。ほぼ全体が拡張した胸郭で構成されています。尾椎の数は比較的少なく、肋骨がありません。椎骨には筋肉の強力な付着を可能にする突起があるため、ヘビは四肢を使わずに移動することができます。

丸飲み

ヘビの頭骨は関節が多く、特に可動性の高い顎骨は大きな獲物の摂取を容易にします。顎関節は2つの部分から構成され、さらに下顎結合が癒合せずに左右が分離していますので、頭よりも大き な獲物を飲み込めるよう、大きな開口角がとれます〔Funk 1996〕。

 

食後の代謝アップ

採食後のヘビは消化が順調に行われるように、活動性は低下しますが、消化管の代謝を上げます。そのために環境温度を上げることが代謝エネルギーが関係し、ガラガラヘビ(Crotalus durissus)は、消化の際にの体表体温が1.2 ℃上昇した報告があります〔Tattersall et sl 2004〕。食後は適温を保つように保温し、触りすぎると獲物を吐き戻すことがありますので注意して下さい。

四肢

一部のヘビでは、総排泄腔の両側には一対の蹴爪を備えた骨盤帯を持っており、これは後肢の痕跡です。原始的なヘビと言われるニシキヘビとボアでは、オスは交尾の際に蹴爪でメスの背中を引っかくような交尾行動を触発します〔Mehrtens 1987〕。

 

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ヤコブソン器官

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ピット器官

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内耳

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ヘビといえば毒が連想され、有毒な爬虫類の大半はヘビになりますが、ヘビの中でも毒を持つものは25%しかいません。毒蛇は上顎にある1対の毒牙の根もとに毒腺があり、毒液を分泌します。毒は唾液が変化したものです〔Mehrtens 1987,Oliveira et al.2022〕。毒ヘビは、マムシやハブを含むクサリヘビ科、コブラの仲間のコブラ科、そしてナミヘビ科にも一部、毒ヘビが含まれています。そして、毒成分は出血毒神経毒があり、クサリヘビ科は主に出血毒(全身に皮下出血を起こし、組織を破壊して死に至ります)、コブラ科は主に神経毒(神経毒は中枢神経を冒して、咬まれた動物は呼吸不全などの麻痺が起こり、ヘビはその間に獲物を捕食します。)を主成分としていると言われていますが、実際にはどちらも、神経毒と出血毒の両方を含んでいる事が多いです。毒ヘビを分類するのに、毒牙の位置によって前牙類(コブラ科やクサリヘビ科の大多数の種)と口の奥の方にある後牙類(ナミヘビ)という分け方、毒牙の中に管状の管牙(クサリヘビ)、表面に溝がある溝牙(コブラ)という分け方があります。特にクサリヘビの管牙は普段は折り畳まれており、咬む時に立ち上がる可動式になっているのも特徴です。また、多くの毒蛇には、毒の迅速な拡散を確実にする酵素であるヒアルロニダーゼが含まれています〔Mehrtens 1987〕。なお、毒ヘビを捕食する特定の鳥、哺乳類、および他のヘビ(キングヘビなど)は、特定の毒に対する耐性を獲得し、さらには免疫を獲得しています〔Mehrtens 1987〕。

ヘビの分類

ナミヘビ

全長50cm~2mの小型~中型のヘビで、全世界に1500種以上が分布しています。環境に応じて様々な形態をしており、地上性、樹上性、水性と環境に合わせて適応しています。ナミヘビ科にも有毒種がおり、ヤマカガシが有名ですが、大半は無毒種です。繁殖形態は主に卵生だが、寒冷地や水中に生息する種等では卵胎生の種もいます。ペットとしても沢山の種類が飼育され、北アメリカに生息するコーンスネーク、コモンキングヘビの亜種であるカリフォルニアキングスネークミルクスネークCB(繁殖)個体が多く流通しています。これらの種類はペットスネークと呼ばれ、品種改良が行われ、野生から捕獲せずとも累代繁殖した子孫のみになります。日本固有種のアオダイショウも人気です。

ボア・ニシキヘビ

いわゆる大蛇と呼ばれる仲間ですが、ペットで飼育されている種類はそれほどでもありません。ボアとニシキヘビは分類が異なり、子供を産むのがボア(卵胎生)、卵を産むのがニシキヘビ(卵生)です。

ボア

ボアは南北アメリカ大陸に分布しています(例外はスナボア属)。エメラルドツリーボアやボアコンストリクター,コロンビアレインボーボア,キューバボア,そしてアナコンダなどが分類されます。昔はボアコンストリクターは人気でしたが、現在はペットでの飼育は禁止になりました。

ボアコンストリクター

ニシキヘビ

ニシキヘビはパイソンとも呼ばれ、ボアの生息地以外の、アフリカ大陸 オーストラリア大陸 東南アジア ユーラシア大陸南部に分布しています。9mにもなる最大種であるオオアナコンダが有名ですが、現在はペットでの飼育は禁止され、ボールパイソン、カーペットパイソン、オリーブパイソンなどが人気があります。

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参考文献
■Barber PC,Raisman G.An autoradiographic investigation of the projection of the vomeronasal organ to the accessory olfactory bulb in the mouse. Brain Res81(1): 21-30.1974
■Funk RS.Biology.Snakes.In Reptile medicine and surgery.Mader DR ed.Saunders:p39-46.1996
■Mader D.Reptilian Anatomy.Reptiles3 (2):84–93.1995
■Mehrtens JM.Living Snakes of the World in Color.New York: Sterling Publishers.1987
■Sanchez A.Diapsids III: Snakes. Father Sanchez’s Web Site of West Indian Natural History. Archived from the original on 27 November 2007. Retrieved 26 November 2007
■Tattersall GJ,Milsom WK,Abe AS,Brito SP,Andrade DV.The thermogenesis of digestion in rattlesnakes.The Journal of Experimental Biology207(Pt4):579–85.2004
■Oliveira, Ana L.Viegas, Matilde F.da Silva, Saulo L.; Soares, Andreimar M.; Ramos, Maria J.; Fernandes,Pedro A.The chemistry of snake venom and its medicinal potential”. Nature Reviews Chemistry6 (7): 451–469.2022

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