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ミルクスネークってどんなヘビ?専門獣医師が解説する知らないといけない生態と特徴〔Ver.2〕

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ミルク好きなヘビ?

ネズミを食べるために牛舎に侵入したのを、牛の乳を飲みにきたと勘違いされたことがミルクスネークの名前の由来になっています。ミルクスネークは毒々しい色をしていますが、毒ヘビではありません。毒ヘビのサンゴヘビに擬態して、赤、黒、黄色のバンド(横縞)を持った派手な模様をしています。ミルクスネークは過去に25亜種に分類されていました。分布域も広く、多様な色彩や模様があり、大きさも様々です。

サンゴヘビは体長が 80cm位で、赤色、黒色、黄白色のリング模様が特徴の毒ヘビです。北アメリカ南東部に分布しており、ミルクスネークと分布域が一部重なります。

サンゴヘビ

分類と生態

分類

爬虫類有鱗目ナミヘビ科キングヘビ属
学名Lampropeltis triangulum
英名:Milk snake
別名:ミルクヘビ

分布

アメリカ南部、メキシコ、南米北部

生態

環境
・生息範囲が広いので環境も異なります。一般的には森林に生息していますが、一部の地域では、開けた大草原や農地、あるいは岩の斜面などです。
・基本的に夜行性です。
・季節的移動をする種類も知られ、冬になると冬眠のために高く乾燥した生息地に移動し、夏は湿気のある場所に移動します。

・冬眠は10月下旬~4月中旬に見られます〔Harding et al.2017〕。
食性:動物食で、小型爬虫類、鳥類やその卵、小型哺乳類などを食べています。
寿命:野生では約12年、飼育下では約21年

身体

全長:60~200cm
一般的にメキシコより以南の熱帯地域に生息するものは、アメリカに生息する種類よりも大きいです。

性格

性格は温和なヘビですが、コーンスネークよりは臆病です。ハンドリングは苦手な個体が多いので、綺麗でツヤのあるカラーリングを見る観賞用のヘビかもしれません。

ミルクスネーク

特徴

滑らかで光沢のある鱗を持っており、典型的な色と模様は、赤・黒・黄色または白・黒・赤色のバンドを交互に配置されています。しかし、バンドの代わりに赤いしみ状の斑紋が見られる種類もいます。

亜種・品種

ミルクスネークのバンド模様はトリカラーをしており、バンドの数や幅、あるいは頭部の斑紋の入り方によって亜種分けをされています。亜種での差異がわずかで、分布域も重なるため、分類定義は不定です。以前は25亜種に分類されていましたが、現在は亜種ではなく、7種に再分類されています。それぞれの亜種においてCB(繁殖)個体が、色々なカラーバリエーションとして作られていますので、模様だけでの鑑別は困難です。種類の鑑別が難しいので、現在も昔の亜種の名前で販売されています。下記に正式な7種類のミルクスネークの情報と販売さている旧亜種を列記しました。


表:ミルクスネークの種類

学名 和名 英名
Lampropeltis triangulum トウブミルクスネーク Eastern milk snake
Lampropeltis annulat メキシコミルクスネーク Mexican milk snake
Lampropeltis abnorma グアテマラミルクスネーク Guatemalan milk snake
Lampropeltis polyzona ベラクルスミルクスネーク Atlantic central american milk snake
Lampropeltis elapsoides スカーレッドキングスネーク Scarlet king snake
Lampropeltis micropholis ナンベイミルクスネーク Ecuadoran milk snake
Lampropeltis mgentilis セントラルプレインズミルクスネーク Central plains milk snake

①トウブミルクスネーク(イースタンミルクスネーク)

英名:Eastern milk snake
学名Lampropeltis triangulum
分布:カナダ南東部(オンタリオ州、ケベック州)、アメリカ北部(イリノイ州、ミネソタ州、ミシガン州、アイオワ州、ミズーリ州、テネシー州、アーカンザス州、ルイジアナ州北部、ミシシッピ州、アラバマ州南部、ジョージア州南部、サウスカロライナ州南部、ノースカロライナ州北部、バージニア州、ウェストバージニア州、ケンタッキー州、インディアナ州、イリノイ州、ウィスコンシン州、オハイオ州 、メリーランド州、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、コネチカット州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、バーモント州、サウスカロライナ州)

全長:61〜90cm(最大種約132cm)
特徴
・ミルクヘビの基亜種です。

②メキシコミルクスネーク

英名:Mexican milk snake
学名Lampropeltis annulat
分布:メキシコ北東部(ヌエボレオン、ケレタロ、タマウリパス、コアウィラ、サンルイスポトシ東部、イダルゴ)
全長:61~76cm
特徴
・黒色と黄色のバンドの幅はやや狭く、亜種内でもかなりサンゴヘビっぽいです
・他の種類と比べて胴回りが太いです。

③グアテマラミルクスネーク

英名:Guatemalan milk snake
学名Lampropeltis abnorma
分布:メキシコ(ベラクルス南部、ゲレロ南東部、チアパス、オアハカ、カンペチェ、キンタナロー、タバスコ、ユカタン)、グアテマラ、ニカラグア、ホンジュラス、西コスタリカ、ベリーズ、エルサルバドル
全長:61~91cm
特徴
・頭頂板の前半分より前方が黒く、吻端に白い横縞がります。
・地色の赤色は濃く、成長と共にブラックチップが多数散るようになります。

④ベラクルスミルクスネーク

英名:Atlantic central american milk snake
学名Lampropeltis polyzona
分布:メキシコの大西洋岸(コリマ、ゲレロ、イダルゴ、ハリスコ、プエブラ、ミチョアカン、オアハカ、シナロア、ソノラ、ベラクルス、おそらくグアナファト、モレロス、ナヤリト、西サンルイスポトシ、アグアスカリエンテス)
特徴
・ミルクスネークの希少亜種で、自然下での生態なども不明な点が多いです。

⑤スカーレットキングスネーク(スカーレットミルクスネーク)

英名:Scarlet king snake、Scarlet milk snake
学名Lampropeltis elapsoides
分布:アメリカ南東部(バージニア州北部、ノースカロライナ州、フロリダ州南部、ミシシッピ州、テネシー州、ケンタッキー州南部)
全長:36~51cm(最大68.6cm)
特徴
・過去にミルクヘビの亜種とされていましたが、キングスネーク属の1種類でミルクヘビとは異なるとも論議されています。
・キングスネーク属の最小亜種です。
・赤や黄色の部分がほとんど黒化しません。頭頂骨の後部を横切る黒い線が入ります。

⑥ナンベイミルクスネーク(エクアドリアンミルクスネーク)

英名:Ecuadoran milk snake
学名Lampropeltis micropholis
分布:コロンビア、コスタリカ、エクアドル、パナマ、ベネズエラ
全長:2mを超えることもあります。
特徴
・ミルクスネークの最大亜種です。

⑦セントラルプレインズミルクスネーク(ヘイゲンミルクスネーク)

英名:Central plains milk snake
学名Lampropeltis mgentilis
分布:アメリカ (テキサス州北部、オクラホマ州西部、カンザス州西部、コロラド州東部、ネブラスカ州南西部)、メキシコ(コアウイラ州)
全長:41~91cm
ヘイゲンミルクスネーク

表:ミルクスネークの昔の亜種

学名 和名 英名
Lampropeltis triangulum abnorma グアテマラミルクスネーク Guatemalan milksnake
Lampropeltis triangulum amauna ルイジアナミルクスネーク Luisiana milksnake
Lampropeltis triangulum andesiana アンデスミルクスネーク Andean milk snake
Lampropeltis triangulum annulata メキシコミルクスネーク Mexican milksnake
Lampropeltis triangulum arcifera ハリースコミルクスネーク Jalisco milksnake
Lampropeltis triangulum blanchardi ユカタンミルクスネーク Blanchard’s milksnake
Lampropeltis triangulum campbelli プエーブラミルクスネーク Pueblan milksnake
Lampropeltis triangulum celaenops ニューメキシコミルクスネーク New Mexico milksnake
Lampropeltis triangulum conanti コナントミルクスネーク Conant’s milk snake
Lampropeltis triangulum dixoni ディクソンミルクスネーク Dixon’s milksnake
Lampropeltis triangulum lapsoides スカーレットキングスネーク Scarlet milk snake
Lampropeltis triangulum gaigeae クロミルクスネーク Black milksnake
Lampropeltis triangulum gentilis ヘイゲンミルクスネーク Central Plains milksnake
Lampropeltis triangulum hondurensis ホンジュラスミルクスネーク Honduran milksnake
Lampropeltis triangulum micropholis ナンベイミルクスネーク Ecuadoran milk snake
Lampropeltis triangulum multistriata シロミルクスネーク Pale milksnake
Lampropeltis triangulum nelsoni ネルソンミルクスネーク Nelson’s milksnake
Lampropeltis triangulum oligozona チアパスミルクスネーク Pacific Central American milksnake
Lampropeltis triangulum polyzona ベラクルスミルクスネーク Atlantic Central American milksnake
Lampropeltis triangulum sinaloae シナロアミルクスネーク Sinaloan milksnake
Lampropeltis triangulum smithi スミスミルクスネーク Smith’s milksnake
Lampropeltis triangulum stuarti スチュアートミルクスネーク Stuart’s milksnake
Lampropeltis triangulum syspila アカミルクスネーク Red milksnake
Lampropeltis triangulum taylori ユタミルクスネーク Utah milksnake
Lampropeltis triangulum triangulum トウブミルクスネーク Eastern milksnake

アカミルクスネーク

ミルクスネークの中でも赤みが強く、バンドに黄色が入らない小型亜種です。

ネルソンミルクスネーク

ミルクスネークの中型亜種のタイプです。吻部の白色部分が大きく、体の全てのリングは腹側まで回っており、赤い部分の面積が大きくて目の覚めるような色彩です。下の写真は黒色色素消失のアルビノです。

ネルソンミルクスネークアルビノ

プエーブラミルクスネーク

キャンベルミルクとも呼ばれる中型のミルクスネークです。頭部が黒色で、前額板から鼻間板にかけてアルファベットの「U」字状の白い斑紋が入ります。
黒色部と黄色部のリング模様が太いです。下の写真は黒色色素消失のアルビノとオレンジ色が入るアルビノ・アプリコットです。

プエブランミルクスネークアルビノアプリコット

下の写真は黒色と白色からなるオレオと呼ばれるカラーです。

プレブランミルクスネークオレオ

シナロアミルクヘビ

メキシコのシナロア州とその周辺に生息しています。ミルクスネークの中でも赤色のリング模様の面積が広くて綺麗な種類です。

ハリースコミルクヘビ

メキシコに分布し、中型種でバンド模様は細く密に入っています。レイクチャパラミルクスネークと呼ばれるチャパラ湖周辺に分布している地域変種も知られています。

ホンジュラスミルクスネーク

中米のホンジュラス、ニカラグア、コスタリカのカリブ海側に分布し、全長は最大150cm程度の大型亜種です。本亜種には、黒色色素が減退したハイポ・メラニスティック(下の写真)や白い部分がオレンジ色になるタンジェリンと呼ばれるタイプがよく流通しており、人気も高いです。

ホンジャラスミルクスネークハイポ

クロミルクスネーク

コスタリカからパナマ西部に分布し、全長は最大158cmになる位の大型亜種です。幼体時は他亜種と同様に黒、赤、白のバンド模様で派手で美しい体色をしていますが、成長に連れ黒色部が拡がり、全身が漆黒になる特異な亜種です。吻端部は黒く鼻の辺りに幅の広い白色のバンドが入ります。

クロミルクスネーク

アンデスミルクスネーク

ミルクスネークの中では最も南のアンデス山地に分布しています。頭部の吻端が白色ですが、小さな黒色斑があるように見えます。胴体の赤いバンドの数が他の亜種よりも著しく多いです。ミルクスネーク最大級の亜種で、全長は1.5m近くになり、アンデスモンスター・ミルクスネークと呼ばれることもあります。

アンデスミルクスネーク アンデスミルクスネーク

ニューメキシコミルクスネーク

アメリカ南部に分布しています。全長で70cm前後と比較的小型ですが、体型が太くがっしりしています。地色はオレンジを帯びた赤色で、赤というより朱色です。成体でも殆ど黒化をしません。

ユタミルクスネーク

地色がオレンジ色を帯びています。

シロミルクスネーク(ペールミルクスネーク)

細身のミルクスネークです。地色の赤色はやや幅広く、成長に伴って黒化が少ないのが特徴です。

繁殖

種類によって性成熟、繁殖期、産卵数は大きく異なります。
性成熟:3~4年〔Linzey  et al.2002〕。
繁殖期:5月上旬から6月下旬、7月過ぎに産卵〔Harding et al.2017〕

ポイントはコレ!
・アメリカ大陸に生息
・ポピュラーなペットヘビ
・動物食性
・基本は赤色・黄白・黒色系のバンド模様のトリカラ
・体色や模様により様々なバリエーションがいる

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参考文献

■Harding J,Mifsud D.Amphibians and Reptiles of the Great Lakes Region.Ann Arbor, MI:University of Michigan Press.2017
■Linzey DW,Clifford MJ. Snakes of Virginia. University of Virginia Press.2002
■千石正一監修 長坂拓也編著.爬虫類・両生類800種図鑑 第3版.ピーシーズ.121‐123.2002

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