専門獣医師が解説するヘビの鱗
鱗の名称
ヘビは鱗で全身が覆われていますが、大きな獲物を飲み込めるように皮膚を伸縮させます。また、ヘビの鱗にはさまざまな形や大きさがあり、鱗は粒状あるいは板状ですが、表面が滑らかで、あるいは縦方向の隆起や竜骨がある場合もあります。頭、背部、腹部の鱗の形状と数は特徴的で、分類目的に使用され、身体上の位置に応じて鱗に名前が付けられています。背側の鱗(体鱗)は細かく、鱗同士は強固に連結せずに、皮膚に癒着しています。
腹側は横幅が広い 腹板(腹鱗)と呼ばれる硬い鱗からなり、体鱗と比べて大きく、移動の際の滑り止めや、地面や樹上を移動する際に身体を守る役目を担います。なお、ウミヘビは生涯陸に上がらないため、体鱗と腹板は区別 がつかず、同じ形状です。
腹板の尾部は1~2列の尾下板に分化し、その間の総排泄孔には1~2枚の肛板があります。
胴体中央部の腹板以外の鱗の横列の数を体鱗列数と呼ばれ、腹板や尾下板数とともに種類の鑑別に使われます。
表:ヘビの体鱗列数
種類 | 列 |
ボールパイソン | 53~63 |
タイワンハブ | 25 |
スジオナメラ | 25 |
アオダイショウ | 23ないし25 |
タカチホヘビ | 23 |
ジムグリ | 21 |
マムシ | 21 |
シマヘビ | 19 |
ヒバカリ | 19 |
ヤマカガシ | 19 |
シロマダラ | 17 |
ワモンベニヘビ | 13 |
イラスト:ヘビの頭部の鱗(ag 前咽頭板,f 額板,in 鼻間板,I 頬板,la 上唇板,la’ 下唇板,m 頤板,p 頭頂板,pf 前額板,pg 後咽頭板,pro 眼前板,pso 眼前下板,pto 眼後板,r 吻端板,so 眼上板,t 側頭板,v 第一腹板)図はmith, Malcolm A. (1943) The Fauna of British India, Ceylon and Burma including the whole of the Indo-Chinese Sub-region, Reptilia and Amphibia. Vol I – Loricata and Testudines, Vol II-Sauria, Vol III-Serpentes. Taylor and Francis, London.引用
つまり、脱皮した鱗が完全であれば形状から種の鑑別も可能です。
臭腺
ヘビでは2つの肛門嚢(臭腺)が尾の基部の腹側にあり、総排泄腔に開口しています。外敵に対する防衛手段として、外敵が嫌う臭いを放します〔Funk 1996〕 。
潤滑油の発見
ヘビ(カリフォルニアキングスネーク)の鱗の表面にわずか数ナノメートルの極薄の脂質でコーティングされ、さらに腹側が背中側よりはるかに滑らかで整然とした層を形成しているという報告もあります〔Baio et al.2015〕。
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参考文献
■Baio JE et al.Evidence of a molecular boundary lubricant at snakeskin surfaces.J R Soc Interface6:12(113):0817.2015
■Funk RS.Biology.Snakes.In Reptile medicine and surgery.Mader DR ed.Saunders:p39-46.1996