専門獣医師が解説するネオテニー
幼形成熟
両生類の幼生は鰓を持ち鰓呼吸を行いますが、変態をして肺や皮膚による呼吸を行われます。しかし、有尾目内には変態をせずに幼生の形態を残したまま性成熟する種や個体群がおり、ネオテニー(Neoteny)/幼形成熟(Pedogenesis)と呼ばれています。代表的な種類としてメキシコサンショウウオが挙げられます(ウーパールーパーは俗称)。
メキシコサンショウウオのアホロートル
また、メキシコサンショウウオを含むトラフサンショウウオ科の幼形成熟個体はアホロートル(Axolotl)と呼称されます。
アンダーソンサンショウウオのネオテニー
他にもホライモリ科やサイレン科など他の群にも散見される。ネオテニーは低温の環境で育つことと餌や水中のヨウ素不足が原因と考えられ、環境を変えたり甲状腺ホルモンを与えたりすると変態するようになります。トラフサンショウウオの仲間は、比較的寒冷な地域に棲息し、水温が低いことに加え、ヨウ素が少ない環境であるため、変態に必要となる甲状腺ホルモン(サイロキシン)を生成できません〔池田2002〕。
参考文献
■Yoshizato K.>Biochemistry and cell biology of amphibian metamorphosis with a special emphasis on the mechanism of removal of larval organs.
Int Rev Cytol119:97-149.1989
■池田純.メキシコサラマンダー.爬虫類・両生類800種図鑑 第3版.千石正一監修.長坂拓也編著.ピーシーズ.p234.2002