専門獣医師が解説するボタンインコ・コザクラインコの雌雄鑑別と繁殖〔Ver.2〕
雌雄鑑別
オスもメスも同じ色をしているので、体の特徴や行動などで鑑別しますが、不明瞭な点が多く、非常に難しいです。最終的には遺伝子検査で鑑別します。
体の特徴
嘴や頭の形、恥骨間距離などで鑑別しますが、個体差があります。
オス
オスの嘴はメスより大きく、頭頂部は丸みを帯びています。
メス
嘴はオスより小さく、頭頂部は丸みがありません。メスの恥骨間距離はオスよりも広いです。
行動
オス
オス特有の行動
- 性の相手に寄り添って体を擦りつける(求愛)
- 吐き戻しをする(発情吐出)
- お尻をこすりつける(マスターベーション)
メス
メス特有の行動
- 紙をちぎって羽にさす
- 狭い所に潜り込む
- お尻をあける(許容)
- 無精卵を産む
巣作り行動として、床敷の紙をちぎって巣を作ったりします(営巣)。巣にこもる行動として、紙の下などに潜り混むような行動をします。おもちゃやエサ入れの隙間に潜る行動も同じで、入れそうだなと思った狭い隙間にも入って行こうとします(巣ごもり)。お尻をあげる姿勢は、羽を広げて交尾を許容している姿勢です(シャチホコポーズ)。メスはオスがいなくても、無精卵を産みます。
遺伝子(PCR)検査
セキセイインコの性別は、獣医さんでも間違えることがあります。遺伝子検査は、採血をして血液を調べてもらう方法です。専門の検査機関に依頼するので、結果がわかるまでに1〜2週間ほどかかります。遺伝子検査こだと、ほぼ確実に性別が分かります。
繁殖(巣引き)
鳥を繁殖させることは巣引きと呼ばれています。相性がよく、年齢が近い雌雄の番を同居させて、巣を用意しましょう。容易に発情を起こし、繁殖が簡単にできる鳥ですが、卵塞などの繁殖疾患、卵巣・卵管疾患が多いので、計画的な繁殖以外は、無駄な発情をさせないで下さい。1年中繁殖できますが、冬は低温による雛の死亡や卵塞やなどのリスクが高いです。
性成熟
性成熟は6~12ヵ月齢です。オスは性的な成熟を迎えると精子が作れるようになります。メスは卵が産めるようになります。
発情
上述したようなオスとメスで発情兆候が見られます。発情させるために、栄養価の高い繁殖期用のペレットやシードに切り替えてください。産卵に備えてビタミンやカルシウムなども十分に補給して下さい。
交配
交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつ同じケージに入れますが、相性が悪ければすぐに喧嘩が始まります。メスとオスのケージを隣同士に置いて、相性を確認してから一緒にするとよいでしょう。発情したオスはメスに対して盛んに求愛行動を示し、交尾をせまります。メスはオスを気に入ると、しゃちほこポーズをとり、尾を上げて交尾を許容します。交尾はオスがメスの背中の上に乗って、お尻をこすり合わせて精子を注入します。相性が悪い場合はペアの組み合わせに変えてください。
産卵
交尾後にメスのケージに巣箱を用意をしますので、巣材にするために、ワラ、牧草、シュロ、紙などを与えて下さい。自ら営巣を始めます。巣箱は鳥の種類によって異なります。セキセイインコ、オカメインコ、ボタンインコやコザクラインコは木製の巣箱、ブンチョウやジュウシマツは壺巣、カナリアには皿巣を用いるとよいです。
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産卵は毎日あるいは1日起きに1個ずつ産み始め、産卵数は5~6個です。3~4個産んだ頃から抱卵を始めます。抱卵は約20日くらいで、メスは1日中巣にこもりっきりになります(巣ごもり)。出てくるのは糞とエサを食べる時ぐらいなので、1日数回ぐらいしか出てきません。オスは基本的に巣箱の中にこもらず、本来のオスの仕事はエサを抱卵中のメスに届けたり、巣箱の前で見張りをします。母鳥は神経質になっています。巣箱の中を覗いたり、ケージを移動させるのは最低限にしてください。刺激すると抱卵をやめてしまいます。なお、産卵した卵を人工孵化で孵卵させる方法もあります。
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雛・子育て
孵化が始まると、雛の鳴き声が聞こえるようになります。雛は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。母鳥が上手に雛に餌を与えます。雛は孵化後に数日で目が開き、羽も生えてきます。全身の羽が生えそろったら、雛でなく幼鳥と呼ばれます。巣から雛が出てくるようになり、この状態を巣立ちといいます。
自ら餌を食べるようになることを一人餌(ひとりえ)といいます。一人餌になったら、別のケージに移してあげましょう。幼鳥は3~5ヵ月後に親の羽に変わります。手乗りに育てる場合には、生後18~20日齢で巣からヒナを取り出し、親の変わりにさし餌をします。
表:繁殖知識
性成熟 | 6-12ヵ月齢 |
発情 | 周年繁殖 |
繁殖回数 | 3-4回/年 |
産卵数 | 4-6個(1日おきに産卵) |
抱卵 | 約23日 |
巣立ち | 35-40日齢 |