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ハムスターが冬眠しました・・・どうしたらよいですか?〔専門獣医師向け〕

 2021/02/12 5 ハムスターのER この記事は約 6 分で読めます。 35,311 Views

寒いと冬眠する?

冬眠とは生命活動を停止することで寒さが厳しい冬を乗り越えていく一部の動物がとる手段です。野生のハムスターだけでなく、ペットのハムスターも冬眠をします。ゴールデンハムスターは5℃(±2℃)の低温の環境になると冬眠すると言われ〔米田 1991〕、ここから冬眠する温度は5℃と言われています。実際にケージの中が何度になっていたのか、しっかり温度計で測定して下さい。体温が低下させて生命維持のために眠ることでエネルギー消費を抑えています。

 

実際にどんな感じなの?

冬眠すると低体温になり、ゴールデンハムスターでは体が驚くほど冷たくなり、触れても反応をしませんので、まるで死んでいるように見えます。心拍数も呼吸数も低下しています。しかし、冬眠したハムスターは時々起きだしてエサを食べることもするそうです〔花谷 2007〕。

冬眠の原因は外温度の低下、日照不足、栄養不足やストレスなどが関与しますが、一番に影響するのが外気温で、次に日照不足になります。照明時間を短くする、いわゆる明るい時間を短くし、暗い時間を長くすることで冬眠に入りやすくなります〔花谷 2007〕。

ゴールデンは1週間以内の冬眠

ゴールデンハムスターの冬眠期間は最大でも6~7日と言われています〔Daan 1973〕。気温5℃で、24時間中2時間しか明るくしないでいると、約80%が2〜5日間した報告があります〔花谷 2007〕。

ジャンガリアンの冬眠は1日以内

ジャンガリハムスターはゴールデンハムスターのような長い日数の冬眠でなく擬似冬眠と呼ばれる1日以内の冬眠です。1日以内の短期間なので、日内休眠(Daily torpor)とも呼ばれています。外気温が15℃で、 8時間の照明時間にした所、体温の低下して5時間50分の休眠に入った記録があります〔Ibuka et al.1986〕。

野生では気温が低くなる冬にエサが不足します。この環境を乗り切るために、代謝活動を抑制することで体温を下げ、巣穴の中で小さく丸くなって動かなくなります。ゴールデンハムスターではがっつり冬眠をしますが、ジャンガリアンハムスターは1日以内の冬眠で、再び覚醒して蓄えたエサを食べ、また寒くなると繰り返えして冬眠します。

冬眠をコントロールする褐色脂肪

脂肪細胞は大きく白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類に分けることができます。 通常「脂肪」と呼んでいるのは白色脂肪で、余った栄養分を脂肪として溜め込むエネルギーの一時保管庫となります。 一方、褐色脂肪は脂肪を燃やして発熱するという、他の組織にはない極めて特異的な機能を有してます。褐色脂肪は、新生児や冬眠動物では特に豊富で〔Gest 2017〕、体を震わせないで体熱を生成します〔Chayama et al.2019〕。単一の脂肪滴が含まれている白色脂肪とは対照的に、褐色脂肪細胞は鉄を含んでおり、それが茶色を呈しています。褐色脂肪にはUncoupling proteinという特殊なタンパク質によって体熱産生が担われ、このタンパク質を含んだミトコンドリアが多量に含まれ、また多くの酸素を必要とするため、褐色脂肪組織はまた多くの毛細血管が集まっています〔Enerbäck 2009〕。

冬眠と死亡を見分けるポイント

ゴールデンハムスターの冬眠はまるで死んでいるようですが、死んでしまうと完全に体がだらんとし、目や口も明いていることがあります。冬眠だとよく観察すると、ほんの僅かに胸が上下しているように見えて呼吸が確認できます。ヒゲがわずかにピクッと動くこともありますので、よく観察して下さい。なお、死亡するとしばらくして死後硬直が起こるので、皮膚の弾力もなく、手足も固まっていきます。

ジャンガリアンハムスターの冬眠期間は短く、体温が下がると言ってもゴールデンハムスターほどは下がりません。触ればヨボヨボと少しは動きます。

冬眠時の緊急対応

冬眠に入ったハムスターをヒーターやストーブに直接当てて急激に温めることはやめて下さい。急激に暖めると、循環がよくなり、心臓に負担がかかり死に至ってしまう可能性があります。急速に暖めるのではなく、ゆっくりと暖めるがコツです。

まずは30分ハムスターを温かい部屋に移動し、両手でハムスターを包み込んで自分の体温で温めて下さい。循環を促すために、ハムスターの体を優しくさすってあげてみましょう。

それでも覚醒しない場合は、湯たんぽやカイロをタオルに巻いて火傷をしないように、1時間ほど焦らずにゆっくりと温め続けてみましょう。

しばらく時間が経っても覚醒しない場合は、死亡確認と同時に、動物病院へ連れて行ってあげて下さい。

上記の緊急対応をせずに、カイロなどで暖めながら、動物病院へ受診するのが一番よいと思います。

まと

冬眠すると、体力を消耗して覚醒せずに死亡することもあるため、冬眠はさせない方が賢明です。野生ではハムスターは冬眠前に栄養をたくさんとって準備をしますが、ペットのハムスターはその準備が十分にできていない場合が多いです。そのような状態で冬眠をしてしまうと、最悪の場合は死んでしまう恐れがあるので、冬眠を防ぐためにしっかりと冬は保温をして下さい。

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参考文献
■Chayama Y eta al.Molecular Basis of White Adipose Tissue Remodeling That Precedes and Coincides With Hibernation in the Syrian Hamster, a Food-Storing Hibernator.Front Physiol28;9:1973.2019<
■Enerbäck S.The origins of brown adipose tissue.N Engl J Med360 (19):2021–2023.2009
■Gesta S,Tseng YH, Kahn CR.Developmental origin of fat: tracking obesity to its source.Cell131(2):242–56.2017
■Ibuka et al.A paper presented at Japan-US seminar on biological rhythms (Honolulu).1986
■Daan S. Periodicity of heterothermy in the garden dormouse, Eliomys quercinus (L). Netherlands Journal of Zoology23.237-265.1973
■花谷利春.ハムスターの冬眠現象とその作出(セミナー「生体の温度・水分センサーの機能と構造」).低温生物工学会誌53.57-63.2007
■米田嘉重郎.シリアンハムスター.げっ歯目.各論.実験動物学.田嶋嘉雄監.朝倉書店.東京.1991

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