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ファイヤーサラマンダーってどんなイモリ?専門獣医師が解説する知らないといけない生態と特徴

 2021/11/01 3 陸生のイモリ・サンショウウオ この記事は約 7 分で読めます。 54 Views

火の精霊

ファイヤーサラマンダーはヨーロッパに分布し、昔から神聖な火の精霊と同一視されてきました。サラマンダー(サラマンドラ)という名前も本来は「火の中に棲むもの」という意味です。そのため、信仰や正義などの象徴として扱われ、各国の王室の紋章などにも用いられています。普段は木の割れ目などの人の目につかない所に潜んでいて、料理などで薪を火にくべるとその中から這い出してくることが多いため、ファイヤーサラマンダーと呼ばれるようになったともいわれています。

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分類

分類: 有尾目イモリ科サラマンドラ属
学名:Salamandra salamandra
英名:Fire salamander
別名: マダラサラマンドラ、ヨーロッパサラマンダー

分布

北はドイツからポーランドにかけて、東はウクライナとルーマニアまで、南はギリシャとイタリア、西はポルトガルまでのヨーロッパほぼ全域とモロッコの北西部

亜種

ファイヤーサラマンダーはヨーロッパの各所に分布し、色彩などの種内変異が大きく、一般的には13 亜種に分けられている。基亜種はファイヤーサラマンダーですが、フランスファイヤーサラマンダーが最も広い地域に分布しています。亜種間で分布域が重なり、かつ単一亜種内でも形態変異が激しいため、外見から明確に亜種を区別することはできません。色の斑紋が赤褐色に変化したレッドタイプも見られます。

 

表:ファイヤーサラマンダーの亜種

学名 和名
Salamandra salamandra alfredschmidti テンディファイアサラマンダー
Salamandra salamandra almanzoris スペインファイアサラマンダー
Salamandra salamandra bejarae グレドスファイアサラマンダー
Salamandra salamandra bernardezi イベリアファイアサラマンダー
Salamandra salamandra beschkovi
Salamandra salamandra crespoi クレスポイファイアサラマンダー
Salamandra salamandra fastuosa ピレネーファイアサラマンダー
Salamandra salamandra gallaica  ポルトガルファイアサラマンダー
Salamandra salamandra gigliolii  イタリアファイアサラマンダー
Salamandra salamandra longirostris  ロスバリオスファイアサラマンダー
Salamandra salamandra morenica モレニカファイアサラマンダー
Salamandra salamandra salamandra マダラファイアサラマンダー
Salamandra salamandra terrestris フランスファイアサラマンダー

以前は、Salamandra corsica(コルシカサラマンダー)、Salamandra algira(アルジェリアサラマンダー)、Salamandra infraimmaculata(ムジハラサラマンダー) が、亜種とされていましたが、現在は独立種に昇格しています。

生態

環境

基本的には丘や標高の高い山地の暗く湿った林床に棲息しています。亜種によっては水辺を好んだり、実際には生息環境は多岐に渡ります。しかし、水場の破壊や化学物質による汚染などが原因で個体数が減少し、ウクライナ・ドイツ・スイス・オーストリアなどの国別のレッドリストに入っています。ベルン会議でも保護動物とされ、そして1992年のEU生息地指令付属書I に記載され、Natura2000(※)による生息地の保全が進んでいます。

※ナチュラ2000はヨーロッパの生物保護地区のネットワークで、ヨーロッパ自然遺産の自然と資源を保護することは欧州連合の取り組みの一環で、欧州連合(EU)の生息地と野生種を保護することを目的としています。生息地指令は200以上の生息地と900種以上の種を特定しています。

生態

薄明薄暮性で夕方と朝方に活動のピークがあり、昼や真夜中は水場に近い森林の林床の岩や木の下、他の動物の巣穴に隠れています。冬は冬眠して越冬します。

食性

動物食で、ミミズ、ナメクジ、クモや昆虫などの節足動物、さらには小型の両生類などを食べています。

身体

全長15~25cm

寿命

10~15年

性質

温和で、あまり活動的でありません。

特徴

模様

皮膚は見た目も触感もゴムのようで体色は光沢のある黒色です。警告色として鮮やかな黄色や赤色の斑点や縞が入り、これは同時に身体の輪郭を隠す役目ももっていて林床における隠蔽色でもあります〔Caspers 2020〕。

胴長

ずんぐりとした胴体に、細くて短い四肢があり、尾は太くて円筒状をしています。

顔には大きな丸い目が備わり、愛くるしい顔をしています。

四肢

前肢は4指、後肢は5趾で、水掻きや爪は備わっていません。遊泳は苦手で、深い水場では溺れます。

帰途能力

ファイアサラマンダーは空間認識能力に優れており、餌を採りに出歩いた後に元の場所に帰ることができます。主に視覚、補助的に嗅覚によってランドマークとなる地形を覚えて帰り道を判別できます。、餌を採った後は元の場所に戻ってくるそうです。

毒腺

目の後ろの耳腺と背中の正中線に沿って2列に並んだ毒腺があります。この毒腺は骨格筋に囲まれており、乳白色の毒液を筋肉の収縮によって外敵を狙って噴射することができます。ファイアサラマンダーは外敵に襲われると、相手に耳腺をかざすような警告姿勢をとります。この毒液の“ 発射” を意味する“Fire” から、ファイヤーサラマンダーと呼ばれるようになったという説もあります。ファイアサラマンダーの毒液は サマンダリン(Samandarin) と呼ばれるアルカロイド系の神経毒で、過呼吸を伴う筋肉の痙攣と高血圧をもたらします。皮膚分泌物に毒液は、サマンダロンと別にサマンダリンという成分も放出されることが報告されています〔Mebs et al.2005〕。動物の皮膚の色のついた部分は通常、これらの腺と一致します。皮膚分泌物中の化合物は、表皮の細菌や真菌感染症に対して効果がある可能性があります。

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参考文献
■Mebs D,Pogoda W.Variability of alkaloids in the skin secretion of the European fire salamander (Salamandra salamadra [sic] terrestris). Toxicon45 (5):2005
■Caspers BA.Developmental costs of yellow colouration in fire salamanders and experiments to test the efficiency of yellow as a warning colouration.Amphibia-Reptilia41 (3):373–385.2020

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