専門獣医師が解説するウサギ・げっ歯類の常生歯
概要
ウサギやげっ歯類は、出生前(または出生直後)に乳歯を抜けて永久歯に生え変わり、通常は永久歯の状態で生まれ、歯肉から露呈している長い歯冠と歯肉に埋まっている短い歯根を持つ長冠歯という歯をしています〔Stan 2014〕。ウサギは植物を採食し、それらの植物は咬耗をして細かい状態にする必要があるために歯には研磨性を持たないといけません。そのため生涯にわたって歯は継続的に成長する必要があり、このような歯をエロドント(Elodont)タイプ、日本語では常生歯(じょうせいし)と呼ばれます。
犬や猫、人の永久歯は発育したら、その後は成長しませんが、常生歯は継続的に歯を成長させるために、歯根が開いた状態になっており(無根歯)、その部分に歯を成長させる細胞がありますので、常生歯は伸び続けることができるのです。
食物繊維の多いエサを噛むことによる歯の摩耗によって、歯の喪失と成長のバランスが保たれています。 げっ歯類もウサギと同じ食性の完全草食のモルモット、チンチラ、デグーでは切歯と臼歯が常生歯ですが、その他のげっ歯類であるハムスター、リス、ジリス、プレーリードッグなどは雑食あるいは草食に近い雑食性なため、切歯だけが常生歯で臼歯は常生歯ではありません。木を切る、果物の種をかじる、または攻撃のために使用されます。
常生歯をもつ動物は、その歯が伸び過ぎてしまわないように、種子類、樹皮、茎や根などの摩耗力の強いエサを食べて、歯を擦りあわせる(咬耗:こうもう)の回数が増やして、歯が摩耗されることで長さを調整しています〔奥田ら 1999〕。ペットの常生歯を持つ動物は、歯が伸び過ぎてしまわないように 硬いものをかじったり、歯を咬摩耗させる咀嚼運動を促進する牧草を多く与えましょう。軟らかい物を食べてばかりの生活で歯が伸び過ぎて、不正咬合の原因になります。
参考文献
■奥田綾子,Crossley DA.げっ歯類とウサギの臨床歯科学. ファームプレス.東京.1999
■Stan F.Comparative morphological study of oral cavity in rabbits and guinea pigs.Scientific Works. Series C. Veterinary Medicine60(1):p27‐32.2014