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とても詳しいウサギの不正咬合の話し

 2019/09/24 3 ウサギの病気 この記事は約 8 分で読めます。 4,473 Views

歯のトラブル

●ウサギは前歯も奥歯も伸び続けます。伸びすぎたり、異常な方向に伸びることで、エサが食べれられなくなったり、口の中を傷つけたりします。この病態を不正咬合と呼びます。
木を齧るウサギ

歯の知識

●ウサギには前歯と奥歯があり、全部で28本あります。
ウサギの歯のイラスト ウサギ頭骨
●前歯は1年で10~12cm伸び、ハサミの刃のように鋭い咬合面で、植物を小さくカットします。
●上顎の前歯は、正面からのぞいている大きい歯とその後に小さな歯(小切歯)があります。
ウサギ前歯 ウサギ前歯
●奥歯は上に6対、下に5対あり、口の中をのぞいてもなかなか見ることができません〔奥田ら 1999〕。前歯でカットした植物を石臼のような動きで細かくすり潰します。
ウサギの奥歯 
●前歯も奥歯もエサである植物を食べることで磨耗しますが、ウサギの歯は常生歯(じょうせいし)といって、一生伸び続けます。歯の根っこ(歯根)に歯を伸ばす細胞があり、歯を成長させているのです。
ウサギの歯のイラスト
ウサギ歯根
●摩耗しても歯が短くならないように、ウサギの歯は生涯にわたって伸び続けます。

原因は?

●原因は以下のことがあげられ、それぞれが組み合わさって起こることもあります。

  • うまれつき(先天性)
  • エサ
  • 事故
  • 老化

生まれつき

●近年、頭と顔が小さくて丸いウサギが人気です。鼻先も短い顔が好まれ、このようなウサギを短頭種(たんとうしゅ)と呼ばれています。ネザーランドドワーフなども代表的な短頭種の一つで、ロップイヤーもその傾向があります。頭が丸いと、とてもかわいらしく見えます。

●短頭種は頭蓋骨の形状が野生のウサギと異なり、上顎や下顎にも影響が見られます。下顎過長症(かがくかちょうしょう)や下顎突出症(かがくとっしゅつしょう)と呼ばれる下顎が前方に突出する病態が有名です。下の前歯も前方に突出して伸びてしまいます。
  ウサギ下顎突出症

事故

●ケージを前歯で噛んだり、高い所から落下して、前歯が異常な方向に変位したり、折れることがあります。その結果、前歯の咬み合わせが悪くなり、ずれて不正咬合が起こります。
ウサギ不正咬合

エサ

●歯の摩耗が少ないエサを食べると歯が伸びやすくなります。葉野菜やペレットは、牧草と比べると歯の摩耗が少なく、ペレットが好物なウサギもいます。特にエサの影響は歯に大きな影響を与えます。

老化

●年をとるとウサギも骨が薄くなり、歯を支えている骨(歯槽:しそう)も弱ってきます。歯がぐらぐらして、異常な方向に生えて不正咬合が起こり、歯も弱って抜けてしまうこともあります。

症状

●前歯も奥歯もどちらも、伸びすぎたり、異常な方向に伸びることが様々な症状を引き起こします。
●奥歯は歯の表面のエナメル質が棘の様に尖り、うまく口を動かすことができなくなります。食欲はありますが、食べれない、あるいは食べにくくなるような症状がみられ、ヨダレも多くなります。
●ヨダレを口から流しているウサギをスローバー(Slobber:ヨダレをたらす人)と呼ばれます。ヨダレのせいで口の周りや顎下が濡れたり、脱毛や皮膚炎になります。
ウサギスローバー
●胸の肉垂の毛が濡れている状態はウエット・デューラップ(Wet dewlap:濡れた肉垂)と呼ばれます。
●ウサギはヨダレの垂れた口の周囲を前足でこするので、前足の脱毛や皮膚炎になったりすることもあります。
●伸びすぎた歯が邪魔になって毛繕いが上手くできず、体全体の毛ツヤが悪くなり、ヨダレのために毛がゴワゴワしてきます。
●歯は口の中で伸びる余地がなくなると、歯根(歯の根本)も伸びてきます。

  • 食べづらそうにしている、食べたそうだが食べられない
  • ヨダレが出ている
  • 口の周や肉垂が濡れて、脱毛している
  • 涙が出ている
  • 目の周りの毛が濡れている
  • 目が飛び出ている
  • 下顎が膨れ上がっている

ウサギ肉垂

前歯

●前歯はウサギを抑えて唇を広げれば観察が容易にできます。
ウサギの歯
●正常は上の前歯が下よりも前方にずれています。しかし、反対に下の前歯が上よりも前に出ていたり、長く伸びた前歯はさらに湾曲して伸びます。
●上の前歯は左右に八の字に広がりながら伸長することもあり、ウルフ・ティース(Wolf teeth:狼の歯)と呼ばれます
●下の前歯が前方につきでるとバック・ティース(Buck teeth:雄の歯)と呼ばれます。唇にあたって傷つけることもあります。
ウサギの歯
●上と下の前歯の先端がぴったりぶつかっている状態は、バッティング(Batting)と呼ばれます。

●前歯が伸びて口がきちんと閉じれなくなっています。そのために口が開き気味になり、奥歯も伸びてきます。

●反対に前歯が短くなっていたり、いつのまにか生えていなかったりしていますが、これは歯が失活したり、歯根に炎症や膿瘍があるために、本来は常生歯である前歯が伸びなくなっているのです。
●前歯のみに異常があると、エサを食べづらくなるので、牧草や野菜を噛み切れなくなり、食べるのに時間がかかったり、エサをくわえたあと、上を向いて食べる仕草などもみられます。

奥歯

●ウサギの奥歯は正面から見ると下のイラストのようにほぼ垂直に生えており、上の左右の奥歯は下の奥歯よりも幅広く位置しているのが特徴です。
歯のイラスト
歯のイラスト
●奥歯の摩耗が減ると上の奥歯は頬側に、下の奥歯は舌側に向かって湾曲したり、奥歯の一部が棘のように鋭く尖って伸びます。
歯のイラスト
歯のスパイク

●この棘はスパイク(Spike)と呼ばれ、舌や粘膜を傷つけますの、ウサギはとても痛がります。

歯のスパイク ウサギスパイク

歯根

●上の前歯の歯根が伸びるとやっかいです。歯根が涙の排水路である鼻涙管(びるいかん:目頭から鼻へ涙を排泄する細い管)の近くに位置するので、伸びた歯根は鼻涙管を閉塞させたり、狭くする(狭窄)ので、涙が鼻に排泄できなくなり、涙目になります。
ウサギの歯のイラスト ウサギの歯のイラスト

鼻涙管(びるいかん)は覚えて!

●慢性的に涙目が続くと目頭の毛が濡れて、脱毛や皮膚炎がおこります。不正咬合を持つウサギではよく涙目になっており、ランニーアイ(Runny eye:濡れた目)と呼ばれます。
ウサギの涙

涙が止まらない時は歯があやしい?

●上の奥歯の歯根は目の下に位置するので、伸びると目や涙線にも影響がでて、眼球突出がみられます。
ウサギ眼球突出
●下顎の歯根が伸びると周囲の骨を押しやるので、下顎を触ると骨が凸凹しているのが分かります。
ウサギの歯のイラスト うさぎの歯の

膿瘍

●歯根に感染が起こり、膿がたまってしまった状態を根尖膿瘍(こんせんのうよう)と呼びます。膿瘍が起きた歯は腐ってくるので伸びなくなります。歯根の周囲の骨も破壊され、さらに骨は膿によって膨らんできます。この状態になると完治は困難です。
ウサギの歯のイラスト
●根尖膿瘍になると頬や下顎に膨らみができてきます。
ウサギ膿瘍
●上の奥歯に膿瘍ができると急速に顔の形が変わったり、目が飛び出て白い膿性の涙が出てきます。下の奥歯に膿瘍ができると下顎が大きく膨らんできます。口の中に膿が排泄され、ウサギが膿を飲み込んでいることがあります。根尖膿瘍が鼻腔に到達するとスナッフルがみられ、内耳・中耳に到達すると斜頸を起こします。
ウサギ膿瘍
●このよような状態になると、多くは前歯も奥歯も同時に悪化して進行していることもあります。
ウサギの歯のイラスト

検査はどこまでするの?

●基本的には前歯を肉眼で観察し、口の中に耳鏡などを入れて奥歯を観察します。肉眼で観察できるのは歯肉からでている歯の上の部分だけです。

●歯根はレントゲン検査をで評価をします。しかしながら、レントゲン検査は左右、上下が重なってうつるので、全ての異常を見することはできません。
ウサギレントゲン
●正確に診断するにはCT検査が必要になります。最近はT検査の機械が進化して短時間で撮影ができるようになり、無麻酔で行えます。
●CT検査では個々の歯の評価が可能ですが、一部の動物病院にしかない機械です。
ウサギCT ウサギのCT ウサギのCT

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治療は歯をけずるの?

●伸びすぎた歯は薬で治すことはできませんので、歯を削る必要があります。
●前歯は無麻酔でカットすることができます。
ウサギの歯のカット
●奥歯も伸びすぎたり、スパイクが出来ているなら、削る必要がありますが、ウサギはおとなしく口を開けてくれないので、全身麻酔が必要になることがほとんどです。全身麻酔にはリスクが伴いますが、獣医師とよく相談して下さい。
ウサギの歯の処置  ウサギの歯の処置
●根尖膿瘍が発生している場合には、原因となっている歯を抜歯し膿瘍を切開、浄する処置が必要ですが、完治は難しいでしょう。

予防

●不正咬合になると多くの場合は生涯にわたって、治療が必要になりますので、重要なのは予防になります。ウサギは自然界では主に草を食べており、歯を磨耗させることが一番のキーポイントになります。
●エサは柔らかいものでなく、歯と歯を擦りあわせる必要のある繊維質に富んだ牧草を多く与えることが最も効果的です。齧り木や牧草で編んだおもちゃやマットなども、ウサギが気に入れば有効でしょう。カロリーの高いおやつやペレットをたくさん与えると、ウサギはそれだけでおなかがいっぱいになってしまい、牧草を食べる量が減ってしまいます。もう一度ウサギのエサを考えなおしてみましょう。

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参考文献
■奥田綾子監修.げっ歯類とウサギの臨床歯科学.ファームプレス.東京.1999

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