専門獣医師が解説するオカメインコの回虫
糞に白い虫が・・・
オカメインコには回虫が寄生し、糞から虫が見られることがあります。
回虫とは?
回虫とは線虫の仲間の寄生虫で、長さが数cm~10cmを越すものもおり、白くて長いニョロニョロしています。主に消化器に寄生する虫です。
人をはじめとする哺乳類、鳥類、爬虫類や両生類にそれぞれの回虫が寄生し、数百種類も分類されています。一部の回虫は動物種を超して寄生し、動物の回虫は人にも寄生するものもいますが、鳥の回虫は人にかかった報告はありません。鳥の回虫は、Ascaridia numidae、A.hermaphrodita、A.sergiomeirai、A.ornata、A. nicobarensisa、A.galli (ニワトリ回虫)、A.columbae (ハト回虫)、A.platyceri〔Kajerova et al.2004〕、Baylisascaris sp.〔Diab et al.2012〕が多いです。オウムやインコでの回虫は多い発生ではなく、ペットではオカメインコにほとんどです。オカインコからA.nymphii n.sp.(オカメインコ回虫)という新種の回虫も発見されました〔Abe et al.2015〕。
どこでうつったの?
衛生状態が悪い繁殖場で、回虫にかかった親鳥や同居鳥からうつったと考えられます。感染は回虫の卵を飲み込むことで起こり、たいていは汚染されたエサが原因です。エサの汚染は、回虫の卵を含む便が混じった土に触れることでも起こります。回虫の卵は丈夫で、土の中で何年も生存することができます。
どんな症状?
口から入った回虫の卵は、腸でふ化して幼虫になります。幼虫は小腸の壁を通り抜けてリンパ管や血流に入り、肺へ到達します。肺に到達した幼虫は、そこから気道を上昇し、再び飲み込まれて、腸で成虫になります。なお、一部の回虫は脳に移動することがあります。腸でとどまり、1~2年間生存します。成虫から産み出された卵は便とともに体外に排出されます。
回虫にかかっても、多くの鳥では症状がみられません。幼虫が肺に移ると咳が起こりますが、鳥ではまれです。一部の脳に移動した回虫が増殖すると、足の麻痺、斜頸、てんかんなどの神経症状が起こります。多くの症状は消火器症状で、腸で回虫が増えると、軟便・下痢が起こり、体重が落ちてきます。精神的にイライラして毛引きが見られることもあります。
どうやって検査するの?
顕微鏡による糞便検査で回虫の卵を検出します。糞に白くて細長い成虫が排出して気づくこともあります。
治療は?
多くは駆虫薬を飲ませて治療ができます。同居している鳥にも一緒に薬を飲ませた方が良いです。
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参考文献
■Abe N,Matsuo K,Makino I.Ascaridia nymphii n.sp.(Nematoda: Ascaridida) from the alimentary tract of a severely emaciated dead cockatiel Nymphicus hollandicus.Parasitol Res.114(11):4281-2288.2015
■Diab SS Uzal FA, Giannitti F, Shivaprasad HL.Cerebrospinal nematodiasis outbreak in an urban outdoor aviary of cockatiels (Nymphicus hollandicus) in southern California.J Vet Diagn Invest.24(5):994-999.2012
■Kajerova V,Barus V,Literak I.Nematodes from the genus Ascaridia parasitizing psittaciform birds:a review and determination key.Vet.Med.–Czech49(6):217–223.2004