小鳥の毛引き(Ver.2)|何がストレスなんだ~

毛引き症とは?
鳥は羽を毛づくろいをしてきれいに保ちます。何らか理由で、毛づくろいが過剰になると、羽をつついたり、かんだりして羽をボロボロにしたり(羽咬症〔うこうしょう〕:Feather chewing)、抜いてしまいます(毛引き:Feather picking)。これらを総称で羽毛損傷行動 (Feather Damaging Behavior:FDB)と言います。
自分の皮膚をつついて損傷させることもあります(自咬症:Self biting)。羽や皮膚を傷つける行動を総括して自傷(自傷行動:Self-Mutilating behavior:SMB)と言います。
自傷行動(SMB) |
羽 | 羽毛損傷行動 (FDB) | 羽咬症 |
毛引き | |||
皮膚 | 自咬症 |
セキセイインコ、ボタンインコ、コザクラインコに多く発生し、オカメインコにも時々見られます。
原因は何?
自傷行動はストレスが原因ですが、一部病気によって引きおこされます。病気以外だと孤独や退屈、性的欲求不満、恐怖、嫌悪など具体的な原因になります。原因が一つとは限らず、複雑に絡んでいます。その原因が特定できないことも珍しくはありません。病気では寄生虫(オカメインコの回虫やヘキサミタ)やPBFD等のウイルスなどの病気も考えられます。健康にみえても体の中に病気が潜んでいることも珍しくはないです。
ストレスの原因
- 1羽で寂しい
- 退屈でヒマ
- 発情
- 気に入らない物
- 脳内セロトニン不足
病気の原因
- 羽に寄生しているダニやシラミ
- 皮膚炎
- 羽のウイルス(PBFD)
- 肝不全(脂肪肝症候群)
- お腹の寄生虫
- どこかに痛みがある
症状は?
一般的にクチバシが届く範囲で、羽を抜いたり、かんだり、皮膚をかんで傷つけます。
顔や頭にはクチバシが届かないので、羽は正常に生えそろっています。皮膚まで傷つけると出血して、痛がります。
原因と対応
ストレスは環境エンリッチメントを整えないことで起こります。鳥の本来の正常な行動を引き出し、異常行動を減らすために、飼育環境に対して行われる工夫を指します。環境エンリッチメントの内容は鳥の種類によっても異なります。
1羽で寂しい(孤独)
本来鳥は群れで生活をしている種類が多く、群れの中で社交性が求められています。1頭で飼育することで退屈になります。
あるいは1羽で飼育されて、人に馴れている鳥では、飼い主がいなくなることで寂しくなります。人が少し離れただけでも落ちつかなくなり、呼び鳴きをします。これを分離不安と言います。愛着の対象となっている人と離れることに極度に恐れる障害です。
1日中、鳥に構う時間をとるわけにいかないで、人にべた馴れになっても、このように困ることがあります。分離不安は、遺伝もありますが、ヒナの時に早くから親から放すことが原因ともされています。1羽で寂しい時には以下の方法をとって下さい。
- 鏡や鳥のおもちゃを与える(おもちゃは発情に注意)
- テレビをつける
- 飼い主のビデオを流す
退屈でヒマ
野生の鳥は群れで刺激を受けたり、また何十㎞も飛翔してエサを探し、採食に要する時間はかけて暮らしています。しかし、ペットの鳥は刺激も少なく、エサを探す必要もないので、退屈でヒマな時間が多くなります。
鳥にはテレビやビデオを見せたり、同種の他の鳥の鳴き声を再生したり、音楽を流すのも良いかもしれません。また、アスレチックやロープ渡りさせて運動させたり、おもちゃで遊ばせたりするのも刺激になります。ケージの中に流木や自然木の枝を複雑に設置して空間をうまく利用するのも一つの方法です。
鳥がが採食行動に費やす時間を増やします。そのためにフォージング(Foraging:採餌行動)を費やすために、パイプの中に入れたおやつやオモチャを探させたりするフォージングトイが注目されています。
- 鳥のテレビやビデオを流す
- 鳥の鳴き声を再生して聞かす
- 音楽を流す
- アスレチックやロープで運動させる
- おもちゃで遊ばせる
- フォージングトイを与える
発情
多くの鳥は一夫一婦性のペアを作ります。手乗りの鳥は、飼い主とペアの相手を認識しています。常に一緒にいないと、そして繁殖行動ができないことがストレスになります。発情によるストレスが原因である場合は、ペアの相手を当てがう、反対に発情を起こす飼い主、止り木、おもちゃ、巣箱などの性の対象を避けるしかありません。しかし、ペアの相手は必ずしも相性があるとは限りません。
- ペアの相手をあてがう
- 鳥が馴れ親しんでいる人から放す
- 止り木、おもちゃ、巣箱を放す
気にいらない物
鳥が嫌がる物や環境がストレスになります。隣のケージにいる鳥、飼い主の家族の中での嫌いな人、知らない来客、ぺットホテル、ケージやレイアウトの変更、気に入らないおもちゃ、部屋の模様替え、地震、台風、工事の騒音、犬や猫の声など色々と考えられます。特に多頭飼いでは相性が悪い鳥がストレスになり、よくケンカをしている姿が観察されます。嫌いな物は最終的に鳥に聞かないと分かりません。神経質な鳥にはできる限り急な変化を起こさないよう気をつけましょう。
- 相性が悪い鳥や飼い主から放す
- 鳥が知らない人とは接触させない
- 気に入らないケージ、レイアウト、おもちゃを避ける
- 部屋の模様柄をしない
- 犬や猫と接触させない
脳内セロトニン不足
自傷は異常行動の一つでもあり、ストレスによって脳内のセロトニンが不足することで起こります。鳥の本来の習性をみたすために、飛ぶこと、群れの中でも刺激を受けることが、体調やホルモンバランスを整えるのでしょう。
エサの見直しをして下さい。ビタミン不足やタンパク質の不足はセロトニン不足につながり、毛引きの原因になります。また規則正しい生活を心掛けることで、体内時計が整ってストレスが減ります。夜は暗くして早くに寝かせて、昼は時に日光浴などをさせましょう。
- 部屋で飛ばせる
- エサの見直し
- 規則正しい生活
- 夜は暗くして寝かせる
- 日光浴をさせる
診断つけれるの?
毛引き症は外観や考えらえる環境から推測して診断しますが、その原因を調べるのが容易ではありません。
自傷の原因が病気であれば、健康診断を行い、糞便検査、血液検査やレントゲン検査を適宜に行ってください。オカメインコでは腸の寄生虫などが原因になることが多いです。セキセイインコでは慢性的な発情、ボタンインコやコザクラインコではストレスが原因になることが多いです。ストレスの原因は鳥に聞くしかないです。
とりあえずエリザベスカラー?
自傷が重篤で出血まで起こしている場合は、エリザベスカラーを装着して、予防しなければいけません。
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まとめ
毛引きは根気よく対応しないといけません。焦らずにじっくりと、考えて対策を練りましょう。定期に健康診断をして、病気の早期発見だけでなく、飼育の見直しも獣医師に相談しましょう。
・原因はストレスか隠れた病気
・イライラするストレスは脳内のセロトニン不足が原因
・ストレスだと原因は特定がむずかしい
・環境が悪い、エサが悪いなどの要因がセロトニン不足を起こす