専門獣医師が解説する牧草の餌
繊維質はごちそう!
牧草は繊維質が豊富に含まれているエサで、ウサギ、モルモット、デグー、チンチラ、プレーリードッグやジリスなどの草食動物の主食になります。牧草は繊維質が豊富であり、胃腸の動きを調節し(腸炎、胃のうっ滞・毛球症の予防)、歯の擦りあわせも促進(不正咬合の予防)するスーパーフードです。しかし、多くの種類の牧草があり、それぞれに特徴があるため、動物種や体調、嗜好性などを考えて与えないといけません。正直どれを選んだらよいか分からないですよね?選らんで買ってあげる前に、少しだけ牧草の勉強をしてみましょう。
生?乾燥?
小動物用の牧草には、大きく分けて生牧草と乾牧草が販売されています。生牧草は名前の通りにフレッシュな青々しい牧草で、豊富なビタミンAが含まれています(これらを乾燥させて通常販売されているのが乾牧草です)。青刈りの生牧草の水分含有量は65~85%ですが、乾牧草は15~20%ですので〔須藤 1981〕、水水しい野菜好きの動物ならば食べてくれると思います。ビタミンAが多い生牧草は粘膜を強くする作用があるので、くしゃみが多い(スナッフル)、軟便がちな動物にぜひ食べさせて下さい。
多くの商品は乾牧草です。生牧草は傷むのが早く、販売は時期が決まっており、いつでも買えるわけではありません。すぐにしおれるので、乾牧草の方が流通するには向いています。生牧草を与えたいために、種子から栽培して与えるような方法もあります。
生牧草のお薦め商品
ウサギハート うさぎさんの頬張る緑のオーツヘイ 70g
生牧草ならコレ! 国産無農薬のオーツヘイです。生牧草なので、甘い香りで食欲も刺激し、もりもりと食べてくれます。刈り取る時期が決まっているので、出荷できる時期も決まってしまいます。常にチェックして下さい。
自分で生牧草を収穫しちゃおう!
プレゼントにぴったり!友人のウサギの誕生日や初めて仲良くなったウサギ仲間へのお礼に、ウサギ栽培セットを贈るのが流行っています。
牧草を刈り取って流通すると自然に乾燥してきます。普段ウサギに与えているのは乾牧草になります。
乾牧草を脱殻して取り去った後の牧草の茎と葉を、さらに天日干しを行って完全に乾燥したものが茶色のワラになります。ワラにはビタミンDが多く含まれ〔須藤1981〕、骨を強くする役目をもっているので、年よりの動物に向いています。繊維質が多いのですが、栄養価は低く〔須藤 1981〕、おいしくないので床敷などに使われることも多いです。
おもちゃとして与える?
牧草は床敷やおもちゃの素材としても使用されることもあります。動物はエサといておいてある牧草よりも、床敷やおもちゃの牧草をかじったり、引っ張って食べる習性が見られます。牧草ラックに入れて引っ張って食べさせたり、牧草でできた玩具も崩壊させて遊びながら口にしますので、ストレス予防にもなります。ぜひ与えて下さい。なお、牧草の欠点は長期保管に難点があります。腐敗したり、虫がついたりすることもあるため、可能な限り新鮮であるものを与えましょう。
種類
牧草の種類は、主にマメ科とイネ科の2種類が流通しています。マメ科の牧草は粗蛋白質とカルシウムが豊富で〔須藤 1981〕、成長期の動物(幼体)に適しており、おいしいので大半の動物は食べてくれます。イネ科の牧草はマメ科と比べて、粗蛋白質とカルシウムが少なくいのですが、繊維質が豊富です〔須藤 1981〕。イネ科は維持期(成体)に通常与える牧草として扱われ、繊維質が豊富なためにダイエットの時、カルシウムも少ないので尿結石の予防をしたい時に向いています。幼体にはマメ科の牧草を主体に与え、成体になったらイネ科の牧に切り替えるのですが、切り替えがスムーズに行くように幼体の時から少しずつ、イネ科の牧草を増やしていくとよいです。
表:牧草の成分比較
種類 | 粗繊維 | 粗蛋白質 | カルシウム | 嗜好性 | 対象 |
マメ科 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | 幼体/妊娠 |
イネ科 | ◎ | ○ | △ | ○ | 成体 |
マメ科
マメ科にはアルファルファやクローバーなどが有名です。
アルファルファ
アルファルファは栄養的に万能な牧草で、イネ科よりも多く含まれている粗蛋白質は、吸収性も優れています。カルシウムとカリウム、ビタミンAも豊富でありながら、一般的に味もおいしいです。しかし、アルファルファをはじめとるすマメ科植物を多く食べたウサギでは、尿の色が濃くなったり、茶褐色に色がつくことがありますが〔Cheeke et al.1987〕、病気ではないので安心して下さい。
クローバー
クローバーは栄養的にアルファルファに似ており、アルファルファに負けずとてもおししいです。シロツメクサ(白クローバー)、ムラサキツメクサ(赤クローバー)などは川の土手や田んぼのあぜ道に生えています。
イネ科
イネ科の牧草はチモシーやグラス類があります。マメ科よりも葉や茎は堅い特徴があり、そして、生育時期やその他の環境により栄養価が変動しやすい欠点があります。
チモシー
チモシーは最も使われている牧草で、流通している量も多いです。エサとして最も使われています。刈り込み時期により、一番刈り、二番刈り、三番刈り込と分かれて販売されているのはチモシほとんどです。
グラス類
グラス類にはイタリアンライグラス、オーチャードグラス、バミューダグラス、スーダングラスなどが販売されています。それぞれに少し個性がある牧草なので、チモシーにちょい足しするようにして与えるのがよいのかもしれません。
イタリアンライグラス
イネ科の王様とも呼ばれる綺麗な牧草です。ほのかな甘みがありますので、チモシーを食べない場合に、少し混ぜて与えるとよいかもしれません。
オーチャードグラス
穂や葉が多い牧草です。香りが強いために、好みの差が激しいです。
選び方
刈り込み時期
牧草は収穫時期によって、一番刈り、二番刈り、三番刈りと呼ばれ、食感が異なります。一番刈りは春から初夏に刈り取った牧草で、繊維質が多く、栄養のバランスも整ってますが、質感はやや硬めです。二番刈りは、夏から秋にかけて刈り取った牧草で、一番刈りよりは柔らかめです。三番刈りは初冬に刈り取った牧草なので、とても柔らかく、かむ力が弱い老体や牧草を食べ始める幼体に向いています。しかし、栄養価が低いので、メインの牧草と違ってエサよりも床敷や補助的なエサとして扱われます。
表:牧草の収穫時期による分類
種類 | 一番刈り | 二番刈り | 三番刈り |
収穫時期 | 春~初夏 | 夏~秋 | 初冬 |
繊維質 | 多い | 中 | 少なめ |
特徴 | 茎が太い | 中 | 茎が細い |
牧草の圧縮とは?
牧草は効率よく運送されるために、刈り取った後に圧縮されることがあり、その圧縮で牧草の食感が異なります。一度緩やかに圧縮されたシングルプレスは、茎や穂がほとんど潰れておらず、自然に近い牧草です。茎が長く残った状態なので、牧草が好きな動物向けですが、不正咬合など歯の弱い動物では食べにくいかもしれません。高圧縮が掛かったダブルプレスの牧草は、茎や穂が押しつぶされた状態になり、食べやすくなります。幼体や老体、硬めの牧草が苦手、歯の悪い動物に適しています。海外からの輸送費を抑える時などは、ダブルプレスにすると小さくできます。
保存性
牧草は酸化して劣化しやすいため、開封後はチャック付きの袋で保存して下さい。牧草は長期間の保存には向いておらず、時間が経つと、香りが飛び、味が落ちて悪くなります。梅雨など湿気の多い時期にはカビが生えたり、虫が発生することもあります。新鮮な状態で維持するには、チャック付きの袋で、涼しい場所に置くなどの保存方法の工夫しましょう。
おすすめ商品
第9位 牧草市場 スーパープレミアムチモシー 1番刈り 5㎏
牧草を食べ放題スタイルの方ならコレ!コストパフォーマンスだけでなく、このチモシー牧草は結構おいしくて大変好評なんです・・・10kgのサイズはもっとお得です。
第8位 オリミツ ロングマット
乾牧草なのに生牧草のようです!アメリカ産のサラブレッド用のチモシー牧草の乾牧草で、香りも味も生牧草のようで最高です。名前の通りに茎が長い牧草を使い、ダブルプレスでよく使って食べてくれますので、不正咬合を予防してくれるはずです。600g、1kg、3kgのサイズが販売されています。
第7位 オックスボウ オーガニックメドウヘイ
オーガニック好きならコレ!アメリカはオーガニックの認定が厳しいことで有名です。それをクリアーして栽培されてチモシー、オーチャードグラス、シロツメクサ(クローバー)などの数種類がブレンドされた乾牧草です。やや歯ごたえがある食感で、本当の健康にこだわる飼い主さんに圧倒的な支持を得ています!
第6位 オックスボウ ボタニカルヘイ
ハーブで食欲を出すならコレ!チモシーにハーブをブレンドした乾牧草です。ハーブはレモンバーム、ラベンダー、カモミール、レッドクローバーで、食欲を増進させてくれます。他の牧草とミックスして与えたり、ローテションで与えたりして使います。
第5位 マペット 牧草市場 USチモシー 3番刈りプレミアム牧草 スーパーソフト
アルファルファからチモシーへ切り替える時はコレ!アメリカ産チモシーの3番刈りで、葉が多く入っている乾牧草です。シングルプレスで、ふかふか感&芳醇な香りをし、味は最高です。牧草市場の袋にはチャックが付いており、脱酸素剤も入っていますので保存性もばっちり。500g、5kg、10kgのサイズがあります。
第4位 マペット 牧草市場 アルファルファ プレミアム
成長期ならコレ!アメリカ産のアルファルファの乾牧草です。香りがとてもよく、何の抵抗もなく食べてくれます。アルファルファの牧草はあまり流通していないのでとても貴重です。500g、5kg、10kgのサイズがあります。
第3位 ウーリー オーツヘイ
尿結石が心配ならコレ!オーストラリア産のオーツヘイの乾牧草です。オーツヘイはチモシーよりもタンパク質とカルシウムは低いです。ダブルプレスなので茎も柔らかいです。尿結石が心配、チモシー嫌いの時に使ってみてください。袋にもチャックが付いていますので、いつでも新鮮な状態を保てます。
第2位 マペット 牧草市場 USチモシー2番刈り牧草ソフトタイプ
食べやすい条件を揃えました!アメリカ産チモシーの二番刈りの乾牧草です。長さも短めで葉が多く、ダブルプレスななので食べやすいです。まさに食べやすい牧草にしていますので、ぜひ与えてみてください。袋はチャック付で、脱酸素材も入っています。500g、5kg、10kg、20kgのサイズがあります。
第1位 サンコー北海道産ソフトチモシー 630g
国産商品!なせかよく食べるんでNo1!イネ科のチモシーのおいしい部分だけを収穫してあります。二番刈りなので硬すぎることもなく丁度よい硬さが受けているのかもしれません。さすが国産だと思います・・・北海道の広大な大地の土壌も牧草成分や味に大きく影響します。どんな加工よりも、牧草は土壌なのかもしれませんね。確実に食べる牧草を商品化にしてあります。
まとめ
見た目で牧草の違いってなかなか分からないのですよね。牧草を与えても全くたべてくれない理由、この記事を読んで理解できたと思います。牧草の種類や作り方でこんなに違いができるものなので、ぜひ牧草選びは真剣に取り組んでください。きっと食べてくれる牧草が見つかるはずです。
●牧草を刈り取って流通して自然乾燥したのが普段与えている牧草(乾牧草)
●天日干ししてさらに乾燥したものが茶色のワラ
●牧草はオモチャや床敷として与えても動物は口にする
●幼体はマメ科、生体はイネ科
●収穫時期による一番、二番、三番刈りがある
●牧草圧縮によるプレス具合でも嗜好性が変わる
参考文献
■Cheeke PR.Digestive Physiology. Chapter 3 in Rabbit Feeding and Nutrition. Orlando: Academic Press.1987
■須藤浩.飼料講義.養賢堂.東京.1981