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専門獣医師が解説するハムスターの尿検査と膀胱炎/尿結石

 2022/07/07 3 ハムスターの病気 この記事は約 7 分で読めます。 5,570 Views

膀胱炎や結石ってあるんだ?

ハムスターに膀胱炎は好発します。X線検査を行い尿結石が見つかるケースも珍しくはありません。多くは血尿という症状で異常に気付いて、病院で診断されます。

まずは尿検査から!

尿は生体の健康状態を判定する上に重要で、尿中の蛋白代謝終末物、解毒物質その他ビタミンやミネラル(カルシウム)などの量的変化、あるいは異常物質の出現などによって、腎・尿路の疾患(膀胱炎や腎炎、尿結石)はもちろん、時には全身性疾患(糖尿病)の判断も可能となります。したがって、尿検査は臨床診断の一つとして常時行 われています。排尿した尿サンプルの検査なため、ハムスターにも負担が少ない検査ですが、正確に尿だけを採取することが難しいです。採尿方法ひとつでも、検査結果は全く変わってしまうため、尿だけを他に成分が混じらないように採取することが重要です。実験動物でのマウスやラットでの採尿は代謝ケージ/採尿ケージはと言う器具が使用されています。糞尿の分離を完全にするために、エサや水の混入をなくすように二重式給水瓶や給餌器を使用し、床に排泄すると、糞と尿はそれぞれ分離ロート状になっており、独特の構造で尿が糞に混じらずに尿だけが採取できます。

 

代謝ケージや採尿ケージは通常入手できないため、ハムスターをプラスチックや缶のケースにしばらく入れておき、排尿したらすぐにスポイトで吸い取って採取します。

あるいはトイレ容器を空にしておいて採取することも可能ですが、床敷は敷かないほうがよいです。なお、糞と混じった場合は尿検査の結果の信頼性が落ちるので注意して下さい。尿検査は採取したら、可能であれば30分以内に行わないと、腐敗して尿が変性します。自宅で採尿が難しい場合は、動物病院で一時的に入院させて行います。30分以内が難しい、あるいは気温が高い時には、尿が腐敗するので、保冷剤で冷やしながら動物病院に持っていきましょう。

尿検査は、尿量、尿比重、尿試験紙検査、尿沈査の顕微鏡検査を行います。尿量が多い場合は

 

表1:ゴールデンハムスターの尿性状〔Reavill 1999,Quesenberry et al.1999〕

項目 性状
尿色 透明~白濁~黄色
尿量 5.1‐8.4mL/日
尿比重 1.05‐1.06
尿pH 6‐7
尿蛋白
潜血

表2:ゴールデンハムスターの尿沈査性状

項目 性状
扁平上皮
赤血球・白血球
結晶 カルシウム
円柱 不明
細菌 自然排尿サンプルでは+
その他 オスでは精子が見られる

膀胱炎の診断と治療

膀胱炎は血尿以外にも、頻尿が見られ、尿検査で赤血球や白血球が検出されます。膀胱炎の尿では
アルカリ性に傾き、健常でもアルカリ尿であるハムスターの尿はさらにpHが高くなります。これは尿中の尿素分解細菌の産生するウレアーゼにより尿素が分解されアンモニアが生じるためです。健常でも見られるストルバイト結晶が増加し、結石形成の素因になります。

治療は抗生物質の投与になります。しっかりと水を飲ませたり、葉野菜などの水分が多いエサを与えます。

X線検査で結石が・・・・

尿結石が主に膀胱で形成されますが、時に腎結石や尿道血清が認められます。

膀胱結石のX線像

腎臓結石のX線像

尿道結石のX線像

膀胱結石であると排尿障害が起こります。ハムスターの尿結石は、カルシウムあるいはリン酸塩(リン酸アンモニウムマグネシウム)で構成される成分と推測されます〔Wagner et al.2010〕。カルシウムの尿結石は基本的に薬剤で溶解しませんが、リン酸アンモニウムマグネシウムは尿酸化剤で溶解する可能性があります。ハムスターのリン酸アンモニウムマグネシウムの尿結石を塩化アンモニウム(尿酸化剤)の投与で尿石を溶解を試みましたが、上手くいきませんでした〔Bauck et al.1984〕。したがって、尿結石が形成されたら、外科的に摘出しかありませんが、ハムスターに負担が大きいです。しかしながら、過去の報告ではハムスターにおける膀胱結石の2つの症例で、手術後数ヵ月以内に再発をしています〔Bauck et al.1984,Lidderdale et al.1990〕。

ゴールデンハムスターの尿結石の病因は不明ですが〔Capello 2011〕、カルシウムの尿中の生理的排泄と食事中のカルシウム、マグネシウム、リンの相互作用関与する可能性があります〔Chow et al.1980〕。  Petriniらは尿結石を外科的に摘出後に、パルミトイルエタノールアミド(脂肪酸:慢性的な痛みや炎症を改善)、グルコサミン(アミノ糖:尿路上皮の保護作用を果たすグリコシル化タンパク質および脂質の合成における前駆体/痛覚過敏を軽減)、ヘスペリジン(柑橘類に含まれるフラバノン配糖体:膀胱の発がん抑制)のサプリメントを投与して再発を減らすことに成功した報告をしています〔Petrini et al.2016〕。下記のサプリメントなんかがお薦めになります。

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参考文献

■Bauck LA,Hagan RJ.Cystotomy for treatment of urolithiasis in a hamster.J Am Vet Med Assoc184:99-100.1984
■Capello V.Pet hamster medicine and surgery,part III: infectious, parasitic and metabolic diseases.Exotic DVM3:27-32.2011
■Chow FH,Taton GF,Boulay JP,Lewis LD,Remmenga EE,Hamar DW.Effect of dietary calcium, magnesium, and phosphorus on phosphate urolithiasis in rats.Invest Urol17:273-276.1980
■Lidderdale JA,St Pierre SJ.Cystotomy for treatment of urolithiasis in a hamster.Vet Rec127:364.1990
■Petrini D,Di Giuseppe M,Deli G,De Caro Carella C.Cystolithiasis in a Syrian hamster:a different outcome.Open Veterinary Journal6(2):135-138.2016
■Quesenberry KE,Carpenter JW eds.Ferrets,Rabbits and Rodents,Clinical Medicine and Surgery.2nd ed.1999
■Reavill DR ed.The Veterinary Clinics of North America – Exotic Animal Practice: Clinical Pathology and Sample Collection2:3.1999
■Wagner CA,Mohebbi N.Urinary pH and stone formation.Urinary pH and stone formation. Journal of Nephrology23.Sup(16):S165-S169.2010

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