専門獣医師が解説するミルタサピンはウサギの食欲増加させるのか?〔獣医師向け〕
ミルタサピンって?
ミルタザピン(Mirtazapine)は四環系抗うつ薬/ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA)というカテゴリに分類され、うつ病に効果的である。短時間で効果が発現し、効果は持続的です。ミルタザピンは錠剤および経皮製剤で入手可能で、 犬の推奨用量は1.1~1.3mg/kg SID、猫の場合は 0.5~1 mg/kg SID-EODです。ミルタザピンは制吐や食欲刺激効果もあるとされ、特に猫などでは食欲刺激作用の目的でも使わています。副作用は比較的まれで、発声や運動失調、震え、唾液分泌過多、肝酵素の上昇などす。ミルタザピンはウサギや他の小型哺乳類で食欲増進剤として使用されているという逸話がありますが、実際のところはよくわかっていません。
ウサギでの効果は?
ウサギでの食欲刺激の効果の報告は一定していません
効果なし?
ニュージーランドホワイトウサギ低用量のミルタザピン(1mg/kg)、高用量(3mg/kg)をSID2日連続の経口投与を行ったところ、食物摂取量に変化は示さなかったが、3mg/kgの投与は糞便排泄量の増加を生じました。 ただし、治療後は体重がわずかに減少しました〔Ozawa et al.2022〕。
去勢手術後3日間、カプロモレリン8mg/kg PO BID、ミルタザピン1 mg/kg 経皮 SIDの投与をそれぞれ行ったところ、ミルタザピン群の食物摂取量と糞便排出量は、カプロモレリン群および対照群と有意な差はなかった〔Draper et al.2011〕。
効果あり?
慢性化した食欲不振のウサギ3症例に対してミルタザピンを使用したところ、食欲が改善し臨床的な副作用は認められなかった〔毛利2019〕。
ニュージーランドホワイトウサギにカプロモレリンとミルタザピンの効果が研究がされた。 カプロモレリン(4mg/kg PO SID、8mg/kg PO SID、4mg/kg PO BID、8 mg/kg PO BID)、ミルタザピン(0.5 mg/kg経皮 SID、1 mg/kg経皮 SID) の投与を3日間行い、食物摂取量と糞便排出量は、カプロモレリン4mg/kgおよび8mg/kg PO SID グループの糞便排出量を除き、すべての治療で効果がありました。 特にミルタザピンでは、カプロモレリンに比べて食物摂取量と糞便排出量が有意に高かった。ミルタザピンの経皮投与において、対照群よりも1mg/kg TD SIDの群において、刺激によるものなのか、耳介の紅斑/点状出血が明らかに認められました。
まとめ
ウサギの食欲不振の治療法としてミルタザピンは効果はありそうですが、今後も続けられています。
参考文献
■Draper, Janna MH et al.Comparison of Effects of Capromorelin and Mirtazapine on Appetite in New Zealand White Rabbits(Oryctolagus cuniculus).Journal of the American Association for Laboratory Animal Science61(5):495-505(11).2011
■Ozawa S et al.Safety and efficacy of oral mirtazapine in New Zealand White rabbits (Oryctolagus cuniculus).Journal of Exotic Pet Medicine40:16-20.2022
■毛利崇.慢性化した食欲不振に対してミルタザピンを使用したウサギ(Oryctolagus cuniculus)の3例.日本獣医エキゾチック動物学会誌1:14-16.2019