1. TOP
  2. 7 診察・治療
  3. 専門獣医師が解説するフェレットの多血症?血液ドロドロ?

専門獣医師が解説するフェレットの多血症?血液ドロドロ?

 2020/05/14 7 診察・治療   4,460 Views

フェレットの血が多い?濃い?

フェレットではよく赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値が高いケースに遭遇します。ほとんどがいたって元気で異常が認められないです。医学的に赤血球増加症と診断するべきか?血が濃いと過粘稠症候群などが起こるのか?と考えてしまいます。赤血球増加症と過粘稠度症候群は病態が異なりますが、赤血球増加だと過粘稠度になるリスクを増大させます。

赤血球増加の原因は?

  • 脱水
  • ストレス
  • 真性多血症
  • 二次性赤血球増加症

脱水とストレス

脱水は相対的な血液濃縮およびヘマトクリット値の上昇を引き起こし,赤血球増多症に類似しますが、赤血球数の増加は見られません。総蛋白質濃度の増加も伴います。興奮、痛み、または恐怖への反応における交感神経刺激による脱水や脾臓収縮によるもので、ヘマトクリット値が上昇します〔Jain  1993〕。●脱水とストレスは、適切な輸液またストレスを無くすことにより、必要に応じて解決します。

脱水と保定のストレス?
・脱水が関与?
・フェレットの採血は興奮させるし、恐怖も与える可能性がある

真性多血症

ヘマトクリット値が89%で真性赤血球増加症と診断された5歳のメスのフェレットの報告があります。最初に瀉血(体重の1%を1回)を行い、その後ヒドロキシ尿素(10mg/kg PO BID)による化学療法を継続的に行い、ヘマトクリット値を効果的に低下させています。しかし、その1年後にフェレットは急性および重度の出血性下痢で死亡し、小腸および大腸の急性静脈梗塞と診断されました〔Kim et al.2016

二次性赤血球増加症

エリスロポイエチンの過剰産生を伴う疾患が考えられます。

  • 呼吸器疾患
  • 心疾患
  • 腎臓腫瘍
  • 腎嚢胞

呼吸器疾患・心疾患

フェレットでも、5カ月齢のオスのフェレットで、びまん性間質性肺炎を伴うファロー四徴の症例報告があります〔Dias et al.2017〕。

腎臓腫瘍

フェレットは腎臓における腫瘍発生は珍しくはないです。腎臓癌やリンパ腫などの報告が多いです〔Avallone et al.2016〕。

腎嚢胞

フェレットの先天性の腎嚢胞は一般的なもので、一部のデータでは54症例のうち、37(69%)は腎嚢胞を有していました〔Jackson et al.2008〕。


心臓?腎嚢胞?
・高齢になると心疾患が多い?
・半分以上のフェレットは嚢胞腎を持つ!

過粘稠度症候群

どんな状態?

過粘稠度症候群は,血管内の血液の泥化に起因する症候群です。赤血球量の増加によって血漿体積の相対的減少ならびに蛋白質および血小板の相対的増加が生じるために血液がドロドロします。症状は、心不全,脳血管および腎血管の血栓症、および中枢神経系機能障害(頻呼吸、チアノーゼ、発作、嗜眠、筋緊張低下、振戦、痙攣など)の症状が見られます。

対応は?

症状がありヘマトクリットが65~70%以上ならば、血液希釈を行って、ヘマトクリットを55%以下まで低下させて、血液粘稠度を下げて下さい。部分交換輸血として、体重0.5~1.5%の血液を除去し(瀉血)、同量の生理食塩水を輸液します。

原因は?

多発性骨髄腫やミンクアリューシャン病などのマクログロブリン血症、真性多血症などで発生します。フェレットでも多発性骨髄腫の報告もあり〔Methiyapun et al.1985〕、ミンクアリューシャン病は蔓延しています。多発性骨髄腫やミンクアリューシャン病では高グロブリン血症を引き起こします。

参考文献
■Avallone G,Forlani A,Tecilla M,Riccardi E,Belluco S,Santagostino SF,Grilli G,Khadivi K,Roccabianca P.Neoplastic diseases in the domestic ferret(Mustela putorius furo) in Italy: classification and tissue distribution of 856 cases (2000–2010)
BMC Vet Res12.275.2016
■Dias S,Planellas M,Canturri A,Martorell J.Extreme Tetralogy of Fallot With Polycythemia in a Ferret (Mustela putorius furo).Top Companion Anim Med32(2).80-85.2017
■Jackson CN,Rogers AB,Maurer KJ, Lofgren JL,Fox JG,Marini RP.Cystic Renal Disease in the Domestic Ferret.Comp Med58(2).161–167.2008
■Jain NC.Evaluation of anemias and polycythemias.In Jain NC. Essentials of veterinary hematology.Wiley-Blackwell.. Ames.p159–168.1993
■Kim Le,Hugues Beaufrère, Laura L Bassel,Sarah Wills,Delphine Laniesse,Shauna L Blois,Dale A Smith.Diagnosis and Management of Polycythemia Vera in a Ferret (Mustela putorius furo).Comp Med66(6):463–467.2016
■Methiyapun S,Myers RK,Pohlenz JFL,Spontaneous Plasma Cell Myeloma in a Ferret (Mustela putorius furo).Vet Pathol22(5).517-519.1985

\ SNSでシェアしよう! /

エキゾチックアニマル獣医師情報室の注目記事を受け取ろう

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

エキゾチックアニマル獣医師情報室の人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

関連記事

  • 専門獣医師が解説するインコ/オウムの腫瘍〔Ver.2〕〔獣医師向け〕

  • インコのメガバクテリアの治療

  • 専門獣医師が解説するウサギのリンパ腫〔獣医師向け〕

  • 専門獣医師が解説するミルタサピンはウサギの食欲増加させるのか?〔獣医師向け〕

  • 両生類用リンゲルの作り方と使い方

  • 専門獣医師が解説するげっ歯類の薬用量マニュアル