専門獣医師が解説するへビの雌雄鑑別と繁殖
雌雄鑑別
ヘビは大半の種類でメスがオスよりも身体が大きいです。特にニシキヘビ類やボア類、体重の性差が非常に大きく、場合によってはメスがオスを桁違いに上回っていることもあります〔Robert et al.2007〕。また、オスは相対的に尾が長く総排 泄孔から後ろに向かって徐々に細くなり、メ スは尾が短く総排泄孔の後で急に細くなります。そして、総排泄孔の両側に後肢の痕跡に相当する蹴爪をもっているボア科のヘビでは、オスは蹴爪が大きく発達し、オスのみにあってメスにない種類もいます。オスは蹴爪を使ってメスに刺激を与えて交尾を促します。そして、ヘビの繁殖期ならびに交尾の際の特徴的な行動として有名なのが、2頭のオスがメスを取り合う闘争様行動が見られます〔Capula et.al.1977〕。しかし、ペットで複数のオスがメスを争奪しりような状況はありませんので見かけることは稀です。
実際の方法
性別を判定するためには二次性徴やオスの半陰茎、メスの無精卵の確認などで容易に行えることもありますが、外観や行動だけでは不確実であるために以下のような方法をとることがあります。
・超音波検査
・X線検査
・内視鏡検査
・ヘミペニスの用手反転(ポッピング)
・排泄腔プロービング(プロービング)
超音波検査で体腔内に精巣や卵胞が、レントゲン検査で卵が確認されることで雌雄鑑別が可能です。ただし、発情期でないと精巣や卵胞は発育しませんし、卵の存在も産卵期のみに限られます。また、オスのヘビのヘミペニスの石灰化した突起がレントゲンで確認されるかしれません。なお、ヘビの柔らか卵殻はX線でも明確に写し出されないことがありますので注意して下さい。あるいは全身麻酔下で腹部に穴を開けて内視鏡を使って精巣や卵巣を直視する確認する方法もありますが、生体への負担が大きいですので、積極的には行われることはありません。そこで、動物病院での機械による検査以外に、簡易的にヘビでは、ポッピング (Popping)とプロービン(Probing)の2つの方法が行われています。
ポッピング
ホッピングとはヘミペニス(半陰茎)が収納されているクロアカサックの周囲を、尾の先から総排泄孔に向けて指で力をかけてヘミペニス(半陰茎)を露出させ、雌雄を判断する方法です。
プロービング
プロービングとは専用の先端が丸くなった滑らかな棒を総排出腔から後方のクロアカサックならびに反転したヘミペニス(半陰茎)に深く差し込めればオス、大して差し込めなければ、ヘミペニスを欠くメスとして判定します。
つまり、プロービングはクロアカサックの深さプローブで測定する方法で、このプローブはセックスプローブ(Sex probe)と呼ばれ、ステンレス製で先端は丸くなって おり、先端に潤滑油を塗布して静かに回転させながら総排泄孔から尾の先に向けてゆっくりと差し込んで使います。
つまり、プロービングはクロアカサックの深さを測っているのですが、明確な数値は分かっていません。一般的にはオスはプローブを抵抗なく深く挿入できますが、メスは総排泄孔から数 cm の所でプローブの挿入が止まります。ヘビでは総排泄孔から挿入したプローブの先端が鱗の数で数えると、オスで5~9枚目近くまで、メスで2~3枚目 程度になります。ただし、トカゲやヘビが抵抗してプロー ブを適切に挿入できないこともあり、また挿 入時に力を入れすぎて突き刺してしまうこと もあるため、優しく行うようにします。
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繁殖
ナミヘビ
コーンスネーク、アオダイショウ、カリフォルニアキングスネーク、ミルクスネークの繁殖はほぼ同じです。しかし、アオダイショウはコーンスネークなどと比べると繁殖するのが難しいです。
冬眠・クーリング
性成熟を迎えたら、繁殖に使用できます。飼育下で通年同じ室温だと繁殖行動をしないことがあります。繁殖能率をあげるために、発情前にク―リングという方法をとることもあります。野生では冬眠から目覚めると繁殖期を迎えますので、同じ飼育ケージにペアで同居させてください。相性が良ければ1~2日で交尾をします。
交尾
繁殖時期は春から夏にかけてになり、野生では冬眠から覚醒すると交尾をします。
抱卵
妊娠中のメスは攻撃的になるので、世話をする時は注意してください。妊娠後期になってくると腹部が膨らんできて、エサをほとんど食べなくなります。
産卵
産卵の時期は交尾後40~60日です。脱皮をしてから7~10日後に産卵をしますので、産卵場所として、産卵床(ヘビが入れるようなケージに湿った床材)を用意します。産卵が確認することができたら、卵を親から隔離する必要があります。爬虫類の卵は卵の向きが変わってしまうと胚が呼吸できずに死滅するので、卵を取り出すときに、卵の上部には印をつけて、上下の向きが変わらないようにして下さい。取り出した卵は25~30℃で、湿度65%以上に保ちます。適正な温度と湿度で維持していれば約50~60日程度で卵が孵化をします。
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表:繁殖知識
種類 | コーンスネーク 〔小林2001〕 |
カリフォルニアキングスネーク〔Bartlett et al.2005〕 | アオダイショウ 〔小林2004〕 |
性成熟 | 約2年 | 2-3年 | 3-4年 |
繁殖形式 | 卵生 | ||
発情 | 季節繁殖(発情期4-6月 産卵期6-7月) | 季節繁殖(発情期5月 産卵期6-7月) | 季節繁殖(発情期5-6月 産卵期7-8月) |
産卵数 | 10-20個/回 1回/年 | 9(5-12)個/回 1回/年 | 4-17個/回 1回/年 |
性決定 | 遺伝的性決定 |
参考文献
■ Bartlett RD,Markel R.Kingsnakes and Milksnakes.Barron’s Educational Services.2005
■Capula M,Luisell L.A tentative review of sexual behavior and alternative reproductive strategies of te Italian colubridsnakes (Squamata:Serpentes:Colubidae).Herpetozoa10:107-119.1977
■Robert M et al.CHAPTER 4.The evolution of sexual size dimorphism in reptiles. Oxford University Press:p38-49.2007
■小林章.ヘビを楽しむ,コーンスネークの繁殖.クリーパー8.クリーパー社.東京:p52-55.2001
■小林章.日本のヘビを楽しむ 第2回 ヒバカリ.クリーパー23.クリーパー社.東京:p24-28.2004