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鳥の腫瘍ってどうなの?

4 セキセイインコのQ&A この記事は約 14 分で読めます。 195 Views

鳥のしこり

しこりとは皮膚や皮下組織にできる腫瘤(しゅりゅう)で、内臓にできることもあります。しこりの硬さ、大きさ、痛みの有無は、原因や種類によって異なります。しこりには腫瘍でないもの(非腫瘍)と腫瘍と分けられます。肉芽腫や黄色腫は腫瘍性増殖をしますが、本来の腫瘍とは別に考えます。さらに腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、悪性腫瘍は大きくなり、転移しやすいものが多いです。しこりの原因や状態はさまざまですが、放置すると悪化するものもあるので、早期に診断が必要です。自己判断はせずに動物病院で受診するようにしましょう。

肉芽腫

炎症反応による病変のひとつで、腫瘍ではなく毛細血管と線維芽細胞から成るしこりで、慢性炎症のようなものです。本来は組織欠損を補うためのものと考えられています。
オカメインコ趾瘤症

黄色腫

黄色腫は黄色をしており、脂肪のように見えるしこりで、セキセイインコに多発します。身体の全ての皮膚に発生しますが、翼角や大腿、体側に好発し、ヘルニアに併発してよく見られます。皮膚の真皮に脂質と貪食細胞やマクロファージが集合しているため、組織的には肉芽腫でとも言われています。ビタミンA欠乏や高脂血症などの基礎疾患が潜在している可能性が高いです。進行度の低い症例では栄養指導を行うことで治癒することもあります。

黄色腫は非常に血管が多い傾向があり、セキセイインコの性腺由来のヘルニアで腹部の皮膚が黄色腫を示している症例が多いです。外科手術の際に出血しやすいので、十分に注意を払わなければなりません。

どの鳥にどんな腫瘍が多いの?

鳥の腫瘍は発生状況やその動向などが詳細には分かっていません。もちろん鳥の種類などでも発生状況は異なります。オウム目では、3545症例中220例が腫瘍性疾患で、6.2%の発生率でした。他の種類と比べてわずかに高い報告があります〔Garner 2009〕。

表:鳥種毎の好発腫瘍

鳥種類 好発腫瘍
セキセイインコ 脂肪腫、軟部組織肉腫、線維肉腫、扁平上皮癌、腎腺癌
オカメインコ 軟部組織肉腫、線維肉腫、扁平上皮癌、卵巣/卵管腺癌、セミノーマ(精巣腫瘍)
ラブバード 軟部組織肉腫、線維肉腫、リンパ腫
ボウシインコ 扁平上皮癌、総排泄腔乳頭腫、胆道腺癌
バタン 軟部組織肉腫、総排泄腔乳頭腫
ヨウムとナナクサインコ 扁平上皮癌
コンゴウインコ 総排泄腔の乳頭腫、胆管腺癌
ブンチョウ 胸腺腫

どこにできる腫瘍が多いの?

鳥は哺乳類と異なり検査などが制限され、特に内臓の腫瘍を発見しずらいです。そのために体表の腫瘍いわゆる皮膚の腫瘍が多いという意味合いもあると思います。

表:鳥の部位別腫瘍発生数〔Garner 2009〕

発生 良性 悪性
皮膚 120 92 28
消化管 67 32 35
生殖器 64 59 5
肝臓 54 45 9
腎臓 28 17 11
呼吸器系 20 20 0
体腔 17 16 1
膵臓 13 12 1
筋肉骨格系 7 7 0
胸腺 5 4 1
結膜 5 2 3
中枢神経系 3 3 0
脾臓 2 1 1
心臓 2 2 0

腫瘍の解説

脂肪腫

脂肪腫は脂肪組織からなる良性腫瘍です。セキセイインコに多発します。通常は胸あるいは腹部の皮膚に発生し〔Latimer 1999. Reece 1997〕、脂肪のように柔らかいのが特徴です。初期の脂肪腫は、食事療法に反応します。症状を引き起こすことは稀ですが、生活の質を落とすように大きく増殖した場合は外科的に切除をします。悪性脂肪肉腫はインコやオウムでは稀です〔Tully 1994〕。

線維肉腫

線維肉腫は皮下組織のコラーゲンを産生する線維芽細胞の悪性腫瘍です。結節性の赤い表面で固定され増殖しているように観察され、翼や脚に好発しますが、体のどこにでも発生する可能性があります。悪性腫瘍なので局所的に侵襲的で、外科的切除を行っても再発しやすく、転移率は5〜15%の範囲です。外科的切除と放射線療法、化学療法などでの治療が報告されていますが、大型種でないと難しいです〔Lamberski et al.2002〕。

筋骨格系に発生する骨肉腫、軟骨肉腫、平滑筋肉腫

脂肪や筋肉、骨、神経などの非上皮細胞(支持組織)に発生した悪性腫瘍が肉腫で、 身体のあらゆる場所に発生します。翼や脚の深部に発生し場合は炎症などと間違いやすく、あ初期診断がしにくいです。良生では腫瘍を完全切除で治癒することが多いですが、悪性腫瘍では腫瘍の減容手術、あるいは広範囲の外科的切除または切断術が一般的に推奨されます。骨肉腫などの腫瘍は転移率が高いため、追加の治療法が必要になる場合があります。

尾脂腺の腫瘍

尾腺腺には、良性の乳頭腫と腺腫、悪性の腺癌と扁平上皮癌が発生します〔Cooper 1994,Bauck et al.1997〕。セキセイインコとフィンチに多発し、片側性または両側性です。表面的に潰瘍化することもあり、基本的に外科的に手術をするしかありません。

扁平上皮癌

扁平上皮癌は皮膚の悪性腫瘍で、局所的に浸潤する傾向があり、完全切除が難しいです。放射線療法はある程度の成功を収めて試みられましたが、扁平上皮癌は非常に放射線耐性のある腫瘍であるようで、長期的な制御は稀です〔Manucy et al.1998〕。

血管腫

血管腫は血管系の良性腫瘍で、血管の拡張を主体とするものと、血管壁を構成する細胞の増殖を主体とするものの2種類に大別されます。鳥では皮膚よりも、内臓に発生しやすく、一般的に赤紫色の平らな硬い病変として現れます。良性腫瘍ですが、完全な外科的切除が難しい場合もあります。放射線療法による血管肉腫の治療が1例報告されています〔Freeman 1999〕。

内臓腫瘍

下垂体腺腫

下垂体の良性腫瘍で複数の鳥種で報告されていますが、セキセイインコやオカメインコで多発します。影響を受けた動物は、急性の神経学的状態(発作/弓なり姿勢)を呈する可能性があります。下垂体ホルモンに関連する症状として多飲多尿が起こりますが、球後腫瘤とそれに続く眼球突出の症状も見られます〔Romagnano et al.1995〕。鳥での治療は難しいです。

甲状腺腫瘍

ヨウ素不足による甲状腺の腫大がセキセイインコに好発し、声の変化や呼吸異常を引き起こします。腫大でなく良性の甲状腺腫は一般的ではありませんが、発生の報告があります。甲状腺腺癌は、いくつかのオウムで報告されています。外科的切除が主要な治療になります。

膵臓腫瘍

乳頭腫症とは関係のない、原発性の膵臓腫瘍のまれな報告があります〔Rae 1995〕。

胆管癌

胆管の悪性腫瘍で、コンゴウインコで多発しますが、ヘルペスウイルスによる乳頭腫症との関連性はよく分かっていません。抗癌剤であるカルボプラチンはいくつかの症例で使用されており、結果はあまり期待できませんが、明らかな毒性はありませんでした〔Degernes 1998, Zantop 2000〕。

呼吸器腫瘍

原発性の呼吸器腫瘍はオウムではまれですが〔Jones et al.2001〕、オカメインコでは胸腔内腫瘍の報告があります。

リンパ腫

リンパ腫はリンパ系組織の悪性腫瘍で、オウム特にヨウムの眼球突出に関する多数の報告が球後リンパ腫と診断されています。鑑別診断は、下垂体腺腫またはハーダー腺の腫瘍になります。リンパ腫は、他の動物と同じように多くの症状を示します。化学療法が最適な治療法ですが、鳥類へのプロトコールは確立されていません。孤立性リンパ腫の症例では外科手術と放射線療法が行われています〔Coleman 1995〕。リンパ腫とレトロウイルスとの関連性はよく分かっていません。

胸腺腫

鳥の頸部に位置するリンパ系組織である胸腺の良性腫瘍で、フィンチ(特にブンチョウ)、ニワトリに多発します〔Latimer 2001,Blakey J et al.2021,Maeda H et al.1994〕。頸部に腫瘤が形成され、良性であるので基本的に大きくならない限り症状が現れませんが、巨大化すると採食困難や呼吸困難が見られます。稀ですが、49歳のメスのコンゴウインコで肺への転移を伴う悪性胸腺腫の報告があります〔Lang et al.2016〕。

総排泄腔の乳頭腫

ヘルペスウイルスに関与した腫瘍で〔Johne et al.2002, Styles et al.2002〕、コンゴウインコとボウシインコに多発し、総排泄腔にポリープが発生します。バタン、ヨウム、ハシブトインコ、イワインコにも発生します〔Graham 1991, Sundberg et al.1986〕。一般的に良生腫瘍ですが、悪性化した例もあります〔Sundberg et al.1986〕。乳頭腫は口腔、前胃、後鼻孔などにも発生し、膵臓や胆管での乳頭腫の発生にも関連しています〔Graham 1991, Sundberg et al.1986, Witter 1997〕。口腔や総排泄腔の粘膜の腫瘍では出血していることで発見されます。腫瘍は軽度だと大きな症状はないですが、重度になると潰瘍および出血をします。重度な出血では焼灼または外科的な切除が必要な場合があります。

参考文献
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