ワイルドなシマリスを長生きさせるコツ〔Ver.2〕 ストレス対応!
シマリスは野生動物と思って!
野性味が強いシマリスは野生と同じように習性を充たしてあげなければいけません。発情期を迎えると性格が狂変して、タイガーと呼ばれています。冬眠も本能的な行動ですが、ペットではあえてさせる必要がありません。
ワイルドなシマリスとのハッピーな生活を送るコツは以下の通りです!
- ストレス対応
- タイガーとの付き合い
- 冬眠させない
ストレス対応
シマリスの飼育環境が種特有のニーズを完全に満たしていない時、または不自然なストレスや欲求不満を強いられている時、ストレスによる異常行動を起こします。ストレスは病気を誘発し、不健康にさせます。シマリスにとってストレスフリーの環境を整えてあげましょう。以下のような行動はストレスが原因で起こります。
- 常同行動
- モビング
- スタンピング
- 自咬症・自傷
常同行動
同じ場所で反復横跳びやバク転を繰り返し、常同行動と呼ばれている。目的があって行動しているではなく、一定した様式が長期間繰り返される行動です。常同行動は、欲求を満たせないことによるストレスをやわらげようとする適応行動と言われています。研究によると、平凡な飼育環境で常同行動はみられ〔Sherwin 2004〕。環境エンリッチメントを配慮した環境を作ると、ストレスと不安を和らげ、常同行動が減ることが報告されています〔Benaroya-Milshtein et al 2004〕。
モビング
シマリスが尻尾を左右にゆさゆさと素早く振る動作をモビング(Mobbing)です。これは喜んでる合図ではなく、威嚇していたり、警戒している時で、緊張状態になっています〔Tamura et al.1989〕。ケージの周りにでシマリスが怖がるものがあるので確認して下さい。しかし、エサを見せた時や飼い主に甘えたい時でも尻尾を振るので、その時状況を判断します。
スタンピング
モビングに加えて、姿勢を低くして後足で足踏みする行動がスタンピング(Stamping)です。これは、威嚇や警戒を相手に示す感情表現です。
自咬症・自傷
シマリスはストレス発散のために、過剰な毛づくろいします。シマリスが、毛づくろいをするのは普通の行動ですが、ストレス発散のために毛づくろいが過剰になり、毛が抜けるほど激しく舐めたり、出血するほど皮膚をかじってしまうこともあります(自咬症・自傷)。
鼻先の脱毛
鼻先だけが脱毛している場合は、ケージに鼻を擦り付けている行動のためです。ケージから出たいという欲求で起こり、つまりケージが狭いか退屈であるからです。
ストレスの原因
- 小さくて狭いケージ
- 退屈/かじる物がない
- 大きな動物
- 不適切な温度や照明
- 騒音
小さいケージ
シマリスを飼育する場合はケージという限られた空間でしか行動できないのが欠点です。ゲージは大きめの物を用意します。飼育ケージは十分な高さと広さが必要で、最低でも50cm四方、高さ1.2m以上が必要ともされていますが、これは何も根拠がないです。
シマリスケージはずばりこの2つ!
定期的にゲージから出して、部屋の中に放してあげるのもよいでしょう。しかし、部屋の家具の隙間に入り込んだり、逃亡する可能性もあるので、注意が必要です。必ず人がみてる部屋で放して下さい。
退屈
ケージもただ大きいだけでなく、野性での動きが再現できるようでないといけません。枝を登ったり、穴に隠れるようにするため、流木や小屋を設置すると、探索するように遊びます。あるいは下のハンモックなども気にいります。
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物をかじることも習性の一つなので、かじり木になるような物が必要です。切歯は常生歯であるため、歯を削る必要があります。
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金属製の金網ケージをかじることで、切歯が折れたり、曲がってしまうような不正咬合の原因になります。ストレスが貯まるとケージをかじることが多くなります。
大きな動物
野性のシマリスは被捕食動物で、大きな動物をとても怖がります。性格的にも臆病であり、犬や猫などとは部屋を離してあげて下さい。シマリスは嗅覚に優れているので、他の部屋でもにおいだけで、他の動物の存在を察知し不快に感じます。
不適切な日照時間
シマリスは昼行性のため、昼に活動して夜は休んでいます。昼夜の明暗をしっかりとつけないと、ホルモンバランスが崩れてストレスになります。
騒音
臆病なシマリスは、騒音によって過大なストレスになります。
タイガーとのつきあい
シマリスは冬眠明けの春から発情が強く現れます。発情を迎えると、異常な鳴き声や行動がみられ、食欲も低下します。初めてシマリスを飼う方ですと、一見病気に思えてしまうかもしれません。「ホロホロ」と鳴き声を出し、興奮しています。あちこちに尿をするような行動も見られます。特に発情したオスは性格が狂暴になる傾向があり、人にかみつくこともあります。
狂暴になったシマリスをタイガーと呼ばれます。また、冬眠に入る前のエサを貯える秋にも攻撃的になることがあります。その理由は、冬眠前になわばり意識が強まる、成熟して自我意識が高まるなどの色々なことが考えられていますが、明確な理由はわかっていません。春になると元の状態に戻ることもありますが、そのままの状態のリスもいます。
攻撃的になったからといって、捨てたり逃がしたり愛情を失うようなことは絶対にしないでください。
冬眠させない
野生では秋から初春まで地下の巣で冬眠します。冬眠の平均期間は約200日で、翌年の4~5月に巣から出てきます〔川道 2000〕。冬眠中は3~7日間睡眠し、覚醒は1日以上というパターンを繰り返し、体温も呼吸数も下がります〔Telegin 1980〕。なお、冬眠させるか、させないかには賛否両論がありますが、死亡することもあるので、極力冬眠はさせないようにしましょう。冬に気温が低下すると冬眠してしまうので、最低でも15℃以上になるように保温をしっかりしてください(温度・湿度)。しかし、冬になると冬眠しなくても、活動量が低下します。
・かじり木を与える
・餌を蓄えさせる
・発情して狂暴化するのもシマリス
・冬は保温して冬眠させない
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参考文献
■Benaroya-Milstein N,Hollander N,Apter A,Kukulansky T,Raz N,Wilf A,Yanif I,Pick CG.Environmental enrichment in mice decreases anxiety, attenuates stress responses and enhances natural killer cell activity.Eur J Neurosci20.1341-1347.2004
■Clark ME,Kramer Dl.Scatter-hoarding by a larderhoarding rodent:intraspecific variation in the hoarding behaviour of eastern chipmunk,Tamias striatus.Anim Behav48.p299-308.1994
■Sherwin CM.The influences of standard laboratory cages on rodents and the validity of research data.Anim Welfare13.9-15.2004
■Tamura N.Snake-directed mobbing by the Formosan squirrel Callosciurus erythraeus thaiwanensis.Behavioral Ecology and Sociobiology24.175–180.1989
■Telegin VI.Chipmunks in Western Siberia.Akademia Nauka USSR.Novosibirsk.Rus.p111.1980
■川道道枝子.シマリス.冬眠する哺乳類.川道武雄他編.東京大学出版会.東京.p143-186.2000