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必ず読んでおいて!シマリスの冬眠

 2021/07/29 2 シマリスの飼育 この記事は約 10 分で読めます。 283 Views

なぜ冬眠するの?

冬眠とは動物が寒い冬にが活動を24時間にわたり、代謝を低下させて食料の少ない冬を過ごす生理的な休眠現象です〔森田 2000〕。陸生変温動物(爬虫類や両生類)と一部の恒温動物(哺乳類)で見られますが、この定義によると、哺乳類の18目のうち、単孔目、有袋目、食虫目、翼手目、霊長目、げっ歯目、食肉目の7目に、計183種で冬眠が確認され、全体の5.7%を占めます〔川道 2000〕。哺乳類の中にはジャンガリアンハムスターのような24時間未満の低体温現象は日内休眠と言われ冬眠と区別されていますが、日内休眠も含めると低体温になる哺乳類はとても多くなります〔関島 2002〕。

巣に引きこもって、無駄な体力を使わないように巣外活動をしなくなり、冬眠中の動物は代謝を下げて体温低下が見られます。呼吸数も心拍数も低下します。冬眠といっても、冬の間ずっと寝続けるのではなく、大半は持続的冬眠と中途覚醒を繰り返します。中途覚醒では、体温が数時間で急激に高くなり、その間に排泄やエサを食べます。

リスは全ての種類が冬眠するのではなく、シマリス属の一部の種類だけですシマリス属のみで、キマツシマリス、タウンゼントシマリス、 ミミナガシマリス、サンバーナディーノシマ リス、チビシマリス、コロラドシマリス、タ カネシマリス、ユインタシマリス、トウブシ マリス、シベリアシマリスが行います〔川道 2000〕。冬は巣の中で冬眠して過ごし、冬眠前の秋に種子を巣内に貯えた(貯蔵行動/巣内貯蔵)エサを食べて暮らします〔Clark et al. 1994〕。

シマリス巣内貯蔵

シベリアシマリスの冬眠ってどれくらいするの?

シベリアシマリスの冬眠は10月上旬に始まり、4月上旬まで単独で行われ、寒い地域に生息している個体群では最大6〜7ヵ月間と長くなります〔Anufriev et al.2004, Anufriev et al.2005,Vinokuv et al.2002,Kawamichi et al.1993〕。帰化したヨーロッパなどの温暖な地域の個体群では、冬眠期間は短く、4〜5ヵ月です〔Jaeger 1969,Jaeger1974〕。

日本のシマリスは?

北海道に生息しているエゾシマリスは、冬眠準備は9月中旬から始まり、巣内貯蔵を始めて、翌年の4~5月に覚醒します〔川道 2000〕。野生ではメスが最初に冬眠に入り、次にオス、次に幼若なメス、最後に幼若なオスが冬眠に入ります〔Kawamichi1996,Kawamichi1999〕。冬眠期間は、メス(211±4日)よりもオス(180±5日)の方が短いです。その理由は、交尾の準備のために、オスはメスよりも早く覚醒するからです〔Kawamichi et al.1993〕。ただし、気温が0°Cを下回るようになると、突然冬眠が始まることもあります〔Kawamichi 1996,Kawamichi et al.1993〕。冬眠が開始されると、野生のシマリスは巣穴の入り口を土で塞ぎます。

冬眠中、時々目を覚まして巣内に蓄えられたエサを食べますので、冬眠前に過食 して身体に脂肪を蓄えることはしません。冬眠中は3~7日間睡眠し、中途覚醒は1日以上というパターンを繰り返します〔Telegin 1980〕。体温は8〜 10℃、時に2.8℃まで下がり、呼吸数は3〜4回 / 分にまで低下し、いわゆる仮死状態になりますが、覚醒する際には体温は 37.0〜 38.0℃まで一時的に上がります。冬眠中の覚醒時には1日あたり4gのエサを食べます〔Telegin 1980〕。外部からの刺激が起こると冬眠から覚醒することがありますが、外気温が上昇してくると、覚醒する時間が長くなり、徐々に冬眠から覚めてきます。

冬眠タンパク質って?

これまで動物が冬眠するメカニズムはよく分かっていませんでした。体温が低下しても低体温耐性能を持ち、細胞や組織が異常をきたさず、生体機能が維持している点が不思議でした。しかし、チョウセンシマリスの血中から肝臓で作られる冬眠特異的タンパク質(Hibernation-specific proteins:HP)が発見されました〔近藤ら1998、Kondo et al.2006〕。HPは冬眠時期を決定する年周リズム(温度差や日照時間の変化)により制御され、血中から脳内へと輸送されて冬眠に深く関わることが明らかになりました。シマリスの冬眠から覚醒する前から血中のHP 量は増加し、覚醒後の活動期中にそのピークを迎えます。次の冬眠に先行して産生量が減少し始め、冬眠期間中は少なくなります。しかし、不思議なことにHP は、周年リズム(冬眠以外は外気温23℃という温暖な環境で飼育させること)が体内で自律的に働き、それが血中のHP 量を調節することで、冬眠をさせます。

肝細胞でつくられる HP を冬眠時のように低下させる物質として甲状腺ホルモンのチロキシンが、また産生を促進する物質として男性ホルモンのテストステロンが考えられています〔Ohtsu et al.1996〕。この2つのホルモンは脳内で周年リズムに関与しています。

シマリスは生息域が温暖だと冬眠しない個体がいます。温暖な地域だと周年リズムが消失し(寒暖差が少ない)、このように適応度が高いためか、中国から輸入されてくるシマリスに中には全く冬眠する気配がない個体も多く見かけます。すなわち、気づかないうちに、冬眠という生理現象が消失するのかもしれません。

ペットでは冬眠させるべきか?

冬眠させるか、させないかには賛否両論があります。上述したようにHPが消失している個体かもしれません。健康体でも冬眠中の死亡率はたった約5%という報告もありますが〔Kawamichi et al.1993〕、体力がなかったり、病気を持っていると覚醒せずに死亡する確率が高くなるので、基本的に飼育下では冬眠はさせないほうがよいでしょう。

冬眠すると長生きするの?

毎年冬眠をする動物は長寿であると言われています。冬眠は代謝を低下させ、代謝速度は動物の寿命と密接に関係していると考えられているからです。冬眠中の極度に低下する体温により、細胞が生理学的あるいは生化学的変化を起こすことにあると考えられています。冬眠によって修復不能な酸化的傷害の蓄積が予防されるという説が唱えられ、その有害なものがフリーラジカルと思われいますが、しっかりと解明はされていません。

冬眠した時の緊急対応

冬眠に入ったシマリスーをヒーターやストーブに直接当てて急激に温めることはやめて下さい。急激に暖めると、循環がよくなり、心臓に負担がかかり死に至ってしまう可能性があります。急速に暖めるのではなく、ゆっくりと暖めるがコツです。

まずは30分くらいシマリスを温かい部屋に移動し、両手でシマリスを包み込んで自分の体温で温めて下さい。循環を促すために、シマリスの体を優しくさすってあげてみましょう。

それでも覚醒しない場合は、湯たんぽやカイロをタオルに巻いて火傷をしないように、1時間ほど焦らずにゆっくりと温め続けてみましょう。

しばらく時間が経っても覚醒しない場合は、深い冬眠に入っているかもしれません。死亡しているか分からない場合は、動物病院へ連れて行ってあげて下さい。

 

参考文献
■Anufriev AI,Arkhipov GG.Influence of body weight and size on the mode of wintering in hibernators of the family Sciuridae in Northeastern Russia. Russian Journal of Ecology35.189-193.2004
■Anufriev AI,Solomonova TN,Turpanov AA,Solomonov NG.Ecological Mechanisms of the Formation of Biological Rhythms in Hibernators of the Family Sciuridae in Northeastern Siberia. Russian Journal of Ecology36.343-348.2005
■Clark ME,Kramer Dl.Scatter-hoarding by a larderhoarding rodent:intraspecific variation in the hoarding behaviour of eastern chipmunk,Tamias striatus. Anim Behav 48.p299-308.1994
■Jaeger R.On the hibernation of the chipmunk, Tamias (Eutamias) sibiricus Laxmann,1796.(Zum Winterschlaf des Burunduks, Tamias (Eutamias) sibiricus Laxmann,1796.) Zeitschrift fur Säugetierkunde34.:361-370.1969
■Jaeger R.[English title not available]. (Die unterschieldliche Dauer von Schlaf- und Wachphasen während einer Winterschlafperiode des Burunduk, Tamias (Eutamias) sibiricus Laxmann,1796.) Zeitschrift fur Säugetierkunde39.10-15.1974
■Kawamichi M.Ecological factors affecting annual variation in commencement of hibernation in wild chipmunks (Tamias sibiricus).J.Mamm77.731-744.1996
■Kawamichi M.Ecological aspects of the solitary ranging squirrel, Siberian chipmunk (Tamias sibiricus).Mammalian Science78.185-187.1999
■Kawamichi T,Kawamichi M.Gestation period and litter size of Siberian chipmunk Eutamias sibiricus lineatus in Hokkaido,northern Japan.J Mamm Soc Japan18.p105-109.1993
■Kondo N,Sekijima T,Kondo J,Takamatsu N,Tohya K,Ohtsu T.Circannual control of hibernation by HP complex in
the brain. Cell 125(1):161-172.2006
■Ohtsu T,Kondo N.Possible regulation of hibernationspecific proteins in primary cultures of hepatocytes from
chipmunks.In Adaptation to the Cold.Geiser F,Hulbert AJ, Nicol SC eds.University of New England Press.Armidale.p357-362.1996
■Telegin VI.Chipmunks in Western Siberia.Akademia Nauka USSR.Novosibirsk.Rus.p111.1980
■Vinokurov VN,Solomonova TN.Ecology and life cycle of yakutian Chipmunk (Tamias sibiricus jacutensis Ognev, 1936). Yakutsk,Izdatelstvo Yakutskogo Universiteta.Russia.122.2002
■川道道枝子.シマリス.冬眠する哺乳類.川道武雄他編.東京大学出版会.東京.p143-186.2000
■近藤宣昭、近藤淳.冬眠物質を探す. 日経サイエンス 28(2):64-72.1998
■森田哲夫.冬眠現象.冬眠する哺乳類.川道武男,近藤宣昭,森田哲夫編.東京大学出版会.東京.p3-23.2000
■関島恒夫.冬眠できない動物の体温低下現象.遺伝56(1):61-67.2002
■川道武男.冬眠の生態学.冬眠する哺乳類.川道武男,近藤宣昭,森田哲夫編.東京大学出版会.東京.p31-99.2000
■関島恒夫、原範和、大津敬、近藤宣昭.哺乳類の冬眠.分子から生態への展開を探る.日本生態学会誌57.335-344.2007

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