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専門獣医師が解説するチンチラの飼育〔Ver.4〕

 2019/05/11 2 チンチラの飼育 この記事は約 11 分で読めます。 14,992 Views

涼しくピョンピョン飼育!

チンチラは標高が高い山に生息していますので、つまり飼育するには涼しく十分に運動ができる環境を与えなければなりません。

チンチラ

チンチラは1年で大人の体になり、4~6年で中年、7年を超すとシニアです。平均寿命は10~15年ですが、20年以上生きる長寿な個体もいます。年齢にあわせた飼育ならびにケアをしてあげましょう。

表:チンチラの年齢換算表

飼育

チンチラは夜行性ですが、ペットでは人の生活に合わせることができるため、昼に活動するように順応できます。

臆病な性格で、聴覚も発達しているために、静かでストレスの少ない環境で飼育することが理想になります。細な音にも敏感で、物音や気配に反応するため、ケージを置く場所は、静かな部屋にしてあげましょう。工事の音や赤ちゃんの泣き声などの大きな音はチンチラにとっては人間以上にストレスに感じてしまいます。ストレスが原因で、食欲不振、軟便や下痢、体重減少などが見られることもありますので注意しましょう。チンチラは敏感な動物です。

チンチラ

飼育頭数

群れで生活をするため飼育は単独でも複数でも可能ですが、チンチラは年齢が経つにつれ気難しくなる、あるいは人に馴れると、他の仲間を寄せつけなくなります。もし2頭以上で飼育をするなら、生後半年以内に初めて下さい。もちろん、複数で飼うとで優劣が認められ、相手の毛や耳をかったりすることもあります。オスとメスを一緒にすると繁殖をしますので、繁殖計画はしっかりと立てて下さいう。オス同士はケンカが起こりやすいですので、2頭以上で飼育する場合はメス同志がベストになります。

ケージ

チンチラは跳躍力が優れており、十分な運動量を確保できるスペースが必要です。そしてチンチラはかじる力が強いため、丈夫な金網タイプのケージを選びます。ケージの中に餌入れや給水器、小屋などをレイアウトして設置して下さい。

 

表:ケージの中に設置するグッツ

グッツ 必要度
小屋
エサ入れ
給水器
棚・踊り場
かじり木・チンチラストーン
回し車

 

金網タイプのケージの欠点は、網目が大きいと跳躍した際に後足が挟まり、骨折などの事故が起きやすいことです。

 

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棚・踊り場

ケージは床面積が広いだけでなく、高層で立体的に設置することが理想です。ケージ内の高い位置に、数段の棚や踊り場を設置し、跳躍して移動ができるように立体的なレイアウトをするとよいでしょう。

 

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小屋

暗くて狭いところが大好きです。自分一人で落ち着ける場所が必要なので、中で動けるくらい余裕がある小屋を1つ用意しておくとよいでしょう。かじることで歯の伸び過ぎも予防できるので、小屋は木製の商品を選んで下さい。かじる習性が強いチンチラはプラスチック製のものだとかじってしまい、小さい欠片が胃の中にたまると胃のうっ帯・毛球症になりやすくなります。

トイレ・床敷

トイレを覚えませんが、比較的排泄物の臭いは少ないです。さらに、チンチラは体臭もほとんどく、ケージの下は金網床でもよいし、床敷は牧草や木製チップなど種類は特別に問いません。金網床の下にペットシーツを敷くだけども構いません。

温度・湿度・照明

生息地は寒冷で、降水量が極めて少ないため湿度もとても低いです。

温度と湿度

防寒のためにチンチラの厚い毛皮をしており、保温性に優れています。しかし、夏に気温が高くなると、その毛皮のために過ごしにくくなり、熱中症になる可能性が高くなります。ケージを直射日光が当たる所やしめきった部屋に置くと、熱中症になる可能性があります。チンチラの飼育温度は10~20℃ や10.0~15.6℃〔Dieterich 1979〕などと言われていますが、湿度を50%以下に設定すれば、18.3~26.7℃が理想環境温度です〔Donnelly 2000〕。湿度は体感温度に大きく影響し、他にも熱中症になりやすい要因は、肥満や活発な活動がいけないので、チンチラの状態と各家庭の飼育環境によって、理想温度と湿度が変わってきます。しかし、夏はエアコンによる温度管理が絶対に必要です(温度・湿度)。電気代はそれなりにかかりますので覚悟して下さい。そして、寒さに強く、冬は暖房は使う必要は基本的にありません。しかし、冬の極寒の時は、保温器具で寒さを防ぐ工夫を多少してもよいかもしれません。

チンチラの熱中症と温度の詳しい解説はコチラ!

照明

夜行性の動物なので、日光浴をさせる必要はありません。

表:環境温度・湿度

温度 18.3-26.7℃
湿度 40-50%

食事

チンチラは草食動物で、基本的に植物質の餌を食べています。最も重要な栄養素である繊維質は腸内細菌によって発酵・消化され、盲腸で揮発性脂肪酸(VFA)となり、それがエネルギー源になります。基本的に牧草を主食にし、その他チンチラ用ペレットや野菜を与えます。

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活動し始める夕方から夜の早い時間にかけて給餌をし、牧草やペレットは常にエサ容器に入れておき、しおれやすい野菜は時間を決めて新鮮なものを与えて下さい。果物やおやつなどはコミュニケーションの一環として、時々与える程度にとどめます。前足の偽指を使ってエサを握って食べます。そのため、ペレットは細長い形をしています。

栄養

チンチラの栄養学の詳細は分かっていません。一般的なペット用の用ペレットでは粗蛋白質15~18%、粗繊維18~20%、粗脂肪2.3~3.0%の製品が多いです〔Johnson-Delaney 1996〕。一部の文献では繊維質は30%〔Nikoletta et al.2019〕、粗蛋白質は14~16%が必要とされています〔Kennedy et al.1970〕。繊維質が少ないエサを食べると、胃のうっ帯・毛球症になりやすくなります。やはり牧草を主食にしましょう。チンチラは虫歯になりやすいので、甘い果物やおやつはできれば避けて下さい。

チンチラ

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飲水

野生のチンチラは草露や岩場などに結露した水滴を舐める程度なため、飲水を積極的に行わない動物です。しかし、ペットではしっかりと水を与えないといけません。給水器も壁掛け式のボトルタイプと皿タイプで与える方法があります。しかし、驚くべき報告もあり、チンチラは給水ボトルよりも皿タイプの給水器を好むと言われています〔Hagen 2014〕。

表:飲水量

採水量 参考文献
約40mL/日 富永 1977
20-40mL/日 Wolf et al.2003

ケア

ケージの中にチンチラを収納して、餌を与えるだけという単調な飼育は、成長や健康維持、繁殖のみならず、精神的的なストレスの原因になります。チンチラが持つ野生本来の行動を発現できるような環境作りのために、生息地に適応した体の特徴や生態を、環境エンリッチメントに沿って考えます。活動的なチンチラの場合、ケージを広くする以外に「跳躍させる」、そして「(物を)かじる」「砂浴び」がポイントになります。騒音も苦手で、ストレスがかかると、チンチラは自分の被毛をかじる毛咬みや、四肢や尾をかじる自咬症が起こりやすくなります。

チンチラ毛咬み

チンチラではかじり木以外に軽石(チンチラストーン)を与えることもある。そして最大のケアは毎日行わないといけない砂浴びです。

運動

活発な動物ですが最低の運動量は一概に定まっていません。ケージの中で立体的な高層を作って跳躍させる以外に、ケージの外に放すことで運動量を増やすなどの策もとられています。回し車で運動させることも方法の1 つの方法ですが、個体によっては興味を示しません。チンチラは玩具に対しては興味をもつことは少なく、基本的に不要になります。

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コミュニケーション

知能の高い動物で、人を認識して近寄ってくるほどまでに馴れます。部屋で遊ばせる時などは人とのコミュニケーションをとるよいチャンスです。ストレスをかけないように声をかけながら構ってあげて下さい。馴れると膝の上に乗ってくるようになります。

 

チンチラを抱っこをしたりすると、突然まとまった毛が抜けることがあります。これはファースリップと呼ばれ、天敵から逃げる手段、あるいは精神的な原因といわれています。

チンチラストーン

かじる物として、かじり木の他に軽石などの石を与えることもできます。チンチラストーンと呼ばれる専用のかじり石も市販されています。かじることも習性で、かじり木などを与えますが、チンチラはケージの金網をかじり壊すほどの破壊力があるため、軽石(チンチラストーン)を与えることが推奨されています。

砂浴び

厚い毛皮のコートをきれいにするため、自分でも毛づくろいはしますが、砂浴びをさせることで毛をきれいに保ちます。

毛はとても細くて緻密性が高く、ブラッシングなどを行わずに砂浴びにより管理します。皮膚からはラノリン様の皮脂が分泌され、綺麗な毛を保っています。しかし、余分な皮脂は砂浴びによって取り除き、調節をしています。砂浴びを怠ると、毛が絡んで毛玉をできやすくなります。野生下では細かい火山灰で砂浴びを行ってます。飼育下は、専用の砂と砂浴びの容器が市販されていますので、毎日砂浴びをさせてあげて下さい(詳細はコチラ!)。砂場を与えると喜んで、砂に転がって砂浴びをします。専用の砂は目が細かく、こまめに新しいものに交換してあげて下さい。

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砂浴びによる弊害もみられ、狭い容器の中で煙幕のように砂が舞うため、結膜炎角膜炎などの目の病気や、細い毛と砂か包皮とペニスの間に固まって絡んで炎症が起こることもあります。特にお腹や股を気にするようであれば、必ず包皮を剥いてペニスを確認して下さい。細い毛と砂が絡んでいることがありますので、取り除いて下さい。

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これがポイント!
・音に敏感なのでAV機器は近くに置かない
・ケージは縦運動にピョンピョンと動ける大きなものを用意する
・暑さに弱いので、夏はエアコンつけないと飼えない
・主食は牧草にする
・かじる力が強いので、かじり木や軽石(チンチラストーン)を与える
・砂浴びは毎日させる

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生態から飼育、そして病気のことまで・・・・日本語の本ではコレ最高

参考文献
■Dieterich WH.Temperature controls for chinchillas.Chinchilla World Trade Journal13.p24-26.1979
■Donnelly TM.Disease problems of chinchillas.In Quesenberry KE,CarpenterJW.eds.Ferrets,Rabbits,and Rodents:Clinical Medicine and Surgery.2nd ed.WB Saunders.Philadelphia.p255-265.2004
■Hagen K.Drinking preferences in chinchillas(Chinchilla laniger),degus (Octodon degu) and Guinea pigs(Cavia porcellus).J Anim Physiol a Anim Nutr98(5).2014
■Johnson-Delaney CA ed.Exotic Companion Medicine Handbook for Veterinarians.Zoological Education Network.1996
■Kennedy AH.Chinchilla Disease and Ailments.Clay Publishing Company.Bewdley.Canada.1970
■Nikoletta H,Kinga F,Gyergy FS.Degus and chinchillas as laboratory animals and pets:Literature review.Magyar Allatorvoska Lapja 141(1).11-23.2019
■Wolf P,Schröder A,Wenger A,Kamphues J.The nutrition of the chinchilla as a companion animal–basic data, influences and dependences Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition87(3-4).129-33.2003
■富永聡,辻紘一郎.チンチラ.実験動物技術編.田嶋嘉雄編.朝倉書店.東京.1977

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