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専門獣医師が解説するゴールデンハムスターの皮膚型リンパ腫

 2022/03/24 3 ハムスターの病気 この記事は約 5 分で読めます。 6,504 Views

悪性腫瘍の皮膚型リンパ

高齢のゴールデンハムスターには人に見られる菌状息肉腫(きんじょうそくにくしょう)に似た上皮向性リンパ腫が発生します〔Harvey et al.1992〕。これをハムスターの皮膚型リンパ腫と呼ばれ、難治性の腫瘍疾患として有名で、リンパ球のタイプもT細胞と言われています〔Harvey et al.1992〕。

コラム:菌状息肉症はどんな病気?

人の皮膚型リンパ腫のなかで最も頻度の高い、低悪性度の一タイプです。皮膚型リンパ腫とは、白血球の一つであるリンパ球が皮膚で活性化しながら増殖し、皮膚病変を生じます。早期病変は、湿疹や乾燥肌のような病変が体幹や手足に出現します。リンパ球は、T細胞、B細胞、NK細胞などに分けられていますが、人の皮膚型リンパ腫の約85%はT細胞です。早期診断と適切な治療選択によって病気をコントロールすることが可能です。治療が成功するか否かは、リンパ球タイプ、病状の進み具合によって大きく左右されます。

どんな症状?

ハムスターの臨床症状の進行は早く、平均10週間で重篤になります。早期は皮膚の紅斑や炎症から始まり、罹患した皮膚は全身に広がり、脱毛ならびに自壊して、細菌や真菌などんの二次感染も起こします。皮膚の免疫低下によりニキビダニが発見されることもあります〔Berger 2000〕。進行とともにハムスターは皮膚を痛がり、食欲不振、不活発や沈うつになります〔Paterson 2006, Hoppmann et al.2007〕。強い疼痛にため、ハムスターは触れられたことに極度に嫌がり、声をあげて威嚇反応を示します〔Berger 2000〕。皮疹だけでなく、腫瘍は全身の臓器に蔓延していることあります〔Paterson 2006〕。最後は疼痛を伴いながら衰弱死をします。

どうやって診断するの?

確定診断は、麻酔下での皮膚の生検(一部の皮膚を切除)による病理検査を行います。

 

麻酔をかけれない個体では、皮膚の自壊した部分からの細胞診を行うと腫瘍細胞(リンパ芽球)が確認されます。皮疹ならびに臨床症状と細胞診検査から、暫定的な診断を下すこともあります〔Paterson 2006〕。なお、血液検査で、リンパ球増加症を伴う顕著な白血球増加症を示しす個体も多いです〔Berger 2000〕。

治療はどうするの?

治療は化学療法(抗がん剤)が行われますが〔Hoppmann et al.2007〕。成功することはめったになく、疼痛などの緩和治療も次第に反応しなくなり、安楽死は福祉の理由で行われることもあります。

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参考文献

■Berger JP.Cutaneous epitheliotropic T-cell lymphoma combined with demodecosis in a hamster.Pratique Médicale et Chirurgicale de l Animal de Compagnie 35(6):467-470.2000
■Harvey RG et al.Epidermotropic Cutaneous T-Cell Lymphoma (mycosis fungoides) in Syrian Hamsters (Mesocricetus auratus).A Report of Six Cases and the Demonstration of T-Cell Specificity.Vet Dermatol3(1):13-19.1992
■Hoppmann E,Barron HW. Rodent dermatology, Journal of Exotic Pet Medicine16(4):238-255.2007
■Paterson S.Skin disease and treatment of hamsters.In Skin Diseases of Exotic Pets,Blackwell Science, Oxford:260-263.2006
■Saunders GK et al.Cutaneous lymphoma resembling mycosis fungoides in the Syrian hamster (Mesocricetus auratus).Lab Animal Sci38(5):616-617.1988

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