1. TOP
  2. 7 診察・治療
  3. 鳥の糖尿病ってどうするの?

鳥の糖尿病ってどうするの?

 2020/05/13 7 診察・治療   10,465 Views

本当に糖尿病なのか?

血液中の糖(グルコース)が上昇する病気で、血液検査で血糖値が上昇します。グルコースは体内の主要なエネルギー源ですが、鳥は哺乳動物に比べて2倍以上の血糖値を持ち、血糖値を下げるインスリンの作用が低いという特徴があります。哺乳類の血糖値は100~150mg/dLですが、鳥は250~500mg/dLで哺乳類よりかなり高く、基準値は594mg/dL以下とも言われています〔Hochleithner 1994〕。鳥は高血糖を示しても何も異常を示しませんが、それストレスが原因で高血糖になっている可能性もあります。鳥の糖尿病は哺乳類とは病態が全く異なることを頭において下さい。

病態

血糖値の調整は、膵臓のα細胞から分泌されるグルカゴンとβ細胞から分泌されるインスリンのバランスによって行われています。穀食性の鳥と哺乳類ではα細胞とβ細胞の分布が著しく異なっており、人の膵臓はインスリンを分泌するβ細胞が優位ですが、穀食性の鳥はグルカゴンを分泌するα細胞が優位です。穀食性の鳥の血糖値を上昇させるグルカゴンは哺乳類に比べて5~10倍高く、空腹時のインスリン/グルカゴン比は哺乳類の3.0~3.5に比べて、穀食性の鳥は1.3~2.0にすぎません。

鳥ではグルカゴンが主要な血糖調節ホルモンと言われていますが〔Hazelwood 1986〕、グルカゴンの上昇を伴わず、インスリン分泌低下したインスリン依存性の糖尿病も存在すると言われ、詳細は解明されていません。

原因

鳥での糖尿病の原因は不明で、遺伝、炎症(卵黄性腹膜炎による膵炎)、感染(ヘルペスウイルス性膵炎)、薬物などで、特に肥満が発症を誘発すると言われています。

どんな鳥に起こるの?

セキセイインコ、オカメインコ、コンゴウインコ、ボウシインコ、ヨウム、オオハシ、ニワトリ、ハトなどのいくつかの種で報告されています。

症状

糖尿病の鳥は、以下の症状が起こります。

  • 多飲多尿
  • 削痩
水を飲む量が増えて、尿の量が増えます。水入れ内の水をほとんど飲みきって、床は水浸しになります。

発症当初は肥満だった鳥も次第に痩せていきます。血糖値の上昇を促進する一環として、グルカゴンは脂肪分解を強力に促進するためです。

診断

多飲多尿の時はまず、尿検査で尿糖を調べます。尿糖が出ている時は、次に血液検査で血糖値(グルコース)を測定します。糖尿病の症状がみられ、尿検査での尿糖の確認をし、血糖値が600mg/dL以上の場合、ほぼ糖尿病と診断してよいでしょう。糖尿病の鳥はケトン尿症もみられると報告されていますが〔Hochleithner 1994〕、ケトーシス〔Ganez et al.2007, Desmarchelier et al.2008〕は肝疾患または胃腸疾患が併発している鳥でも発生します。

鳥は採血による保定で、ストレスを伴う有意な高血糖をすぐに示すのが欠点です。ストレスがどれだけかかったかにもよりますが、糖尿病の診断を下すために、持続性の高血糖症と持続性の糖尿を確認しないと判断できない、また792や990mg/dL以上の血糖値の上昇でないと確定診断に至らないとも言われています〔Fudge 2000, Pilny 2008〕。

治療

鳥の糖尿病の治療はとても難しく、確立したものはありません。一般的には鳥は、グルカゴン優位の血糖値のコントロールのなため、インスリンによる治療の有効性に関して疑問視されいます。例え治療を施しても、血糖値のモニタリングが難しく。つまち鳥から頻回採血をすることは現実的ではありません。これらのことから、インスリンの投与は一部の症例を除いては現在のところ行われていません。経験的に使用されている内服薬の血糖値降下剤も病態生理が不明な鳥では治療法の確立には至っていません。肥満の個体では食事管理を徹底して減量に努める位しか具体的な対処がありません。

ダイエットならラウディブッシュ ローファット ニブル

 

ダイエット用ペレットはコレ!海外メーカーの減量を必要とする鳥のためのペレットです。通常のメンテナンスと比べて脂肪分が低く、直径約2mm、長さ約2mmの円筒状のペレットを砕いたフレーク状をしています。繁殖期や幼鳥には与えないで下さい。

まとめ

鳥の糖尿病に関しては解明されていないことが多く、今後の研究に期待されます。

参考文献
■Fudge AM.Avian metabolic disorders.In Fudge AM ed.Laboratory Medicine Avian and Exotic Pets.W.B. Saunders Company.Philadelphia.p56‐60.2000
■Desmarchelier M,Langlois I.Diabetes mellitus in a nanday conure.Journal of Avian Medicine and   Surgery3.246‐254.2008
■Ganez AY,Wellehan JFX,Boulette J et al.Diabetes mellitus concurrent with hepatic haemosiderosis in two macaws (Ara severa, Ara militaris).Avian Pathology36.331‐333.2007
■Hazelwood RL.Carbohydrate metabolism.In Sturkie PD.ed.Avian Physiology 4th ed.Springer‐Verlag.New York.p303‐325.1986
■Hochleithner M.Biochemistries.In Ritchie BW,Harrison GJ,Harrison LR.Avian Medicine.Principles and Application. Wingers Publishing.Florida.p223‐245.1994
■Pilny AA.The avian pancreas and health and disease. Veterinary Clinics of North America: Exotic Animal Practice 11.25‐34.2008

\ SNSでシェアしよう! /

エキゾチックアニマル獣医師情報室の注目記事を受け取ろう

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

エキゾチックアニマル獣医師情報室の人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

関連記事

  • 専門獣医師が解説するエキゾへのネブライザー療法と薬剤選択〔獣医師向け〕

  • 専門獣医師が解説するげっ歯類の薬用量マニュアル

  • ハリネズミは無麻酔診察でどのように診てるんですか?

  • 専門獣医師が解説するエキゾチックアニマルへのアリジン投与〔獣医師向け〕子宮蓄膿症の救世主!

  • 専門獣医師が解説するエキゾチックアニマルへのオメプラ投与〔獣医師向け〕

  • ウサギなどの麻酔ボックスはどうしてますか?