モルモットの足が腫れた・・・専門獣医師が解説する潰瘍性足底皮膚炎〔Ver.2〕
モルモットの皮膚病の中でも最も多いのが後肢の裏に発生する足底皮膚炎(そくていひふえん)です。炎症がひどくなると痛みがみられ、英語ではソアホック(Sore hock:痛い足)と言います〔Brown et al.2008〕。後肢だけでなく前肢にも発生しますので、抱っこして足裏が赤くなっていないか確認して下さい。モルモットの足裏には肉球があり、ピンク色をしています。
わずかな皮膚炎や傷も見逃さないで下さい。この小さな病変が重症になることが多いのです。
なんでなるの?
原因は大きく分けて足裏の損傷(運動量がすくない、硬い床、肥満、伸びすぎた爪、老化)、と糞やオシッコによる傷口への細菌感染です。多くは原因は一つではなく、いくつかが複雑に関与しています〔Brown et al.2008〕。
- 運動量がすくない
- 硬い床
- 肥満
- 伸びすぎた爪
- 老化
- 糞や尿の感染
運動量が少ない
長時間にわたり狭くて硬い床のケージで飼育することは、運動不足はもちろんのこと、肉球に対して持続的な刺激が起こり炎症やタコができて、動かないことで血行不良も生じます。
硬い床板
硬い床板は、接触する肉球に対して慢性的な刺激を受け、タコができやすくなります。
肥満
体重が重くなると足裏への負担が増えます。足裏は床面の圧迫を受け、皮膚と骨との間に血行の循環不全を招き皮膚が薄くなり、炎症を起こしやすくなります(虚血性壊死)。
伸びすぎた爪
爪が長いと、座っている姿勢が後ろに重心が傾くのでタコができやすくなります。下のイラストを見て下さい。上のイラストは正常ですが、爪が長く床が硬いと必然的に体重がかかとに負荷がかかります。
老化
年をとったモルモットはあまり動かず、同じ姿勢で足の裏を床についている時間が増えます。老化で後足の関節の変形ならびに関節炎が起こると姿勢の異常が見られます。片足に負重がかかったり、かかとに体重をかけて座るようになります。
糞や尿の感染
モルモットは体の割に糞や尿が多いです。不衛生な環境だと足裏に細菌感染を起こしやすくなります。一度患部が皮膚炎を発症すると、傷口から雑菌などが侵入しやすくなり、皮膚の炎症をさらに悪化させます。
どうなるの?
初期は肉球が赤くなったり、慢性的になると皮膚が硬くなってきます(タコ)、次第に潰瘍が起こり、痂疲が形成されます。
重篤になると四肢端が腫脹し、歩行による刺激で出血を繰り返えし、足底の皮膚や軟部組織も丸く変形してきます。皮膚の潰瘍やかさぶたが割れて出血することもあります。
炎症に比例して痛みが出てきます。モルモットは痛い足をかばうような歩行をし、落ち着きがなく見えるかもしれません。じっとしている時も、片方に体重をかけたり、前肢に体重をかけて、異常な姿勢をとることがあります。
慢性的に炎症が続くと、足の裏が円形に変形してきます。ここまでくると残念ながら治ることはありません。
炎症は深層に波及すると、皮膚の下の組織(蜂窩織炎)や骨・関節まで炎症が及び、膿がたまります。関節炎や骨髄炎なども起こると予後不良で、疼痛のために食欲も低下し、次第に衰弱してきます〔Brown et al.2008〕。動物病院でレントゲン検査を受けて判断してもらって下さい。
治療と予防は?
初期の治療ならびに対応は、患肢の包帯や床敷の変更などの飼育環境を見直すことですが、まだ肉球が赤い、あるいは軽い炎症であれば以下の対策をとって下さい。
- 運動量を増やす
- 硬い床を避ける
- ダイエット
- 爪を定期的に切る
- 糞や尿の掃除を頻繁にする
怪しい場合は・・・
運動量を増やすには、運動可能なやや大き目のケージに変えるか、部屋で遊ばせる時間を増やします。1日に最低2回以上の掃除を行い、肥満であればダイエットをしましょう。爪が長い場合は、爪を切ってあげて下さい。牧草でできたウサギ用の座ぶとんなどモルモットが休める場所の設置を設置し、足底を休める状況を設けるのもよいです。
金網ケージは糞や尿がスノコに落ちるため衛生的ですが、金属のスノコは足底に対して硬いのが欠点になります。足底に対するクッション性を高めるために、床に牧草を敷き詰めることも薦められていますが、牧草の茎をふんで傷が付き、尿で濡れた葉はんなじめじめとするので、頻繁に交換するのが大変です。ブラスチック性の足底への負重を減らすために多数の孔のあいた休足マット(フットレスト床板)が掃除もしやすく便利なのでお薦めです。
ソアーホック予防の床板ならコレ!
モルモット休足マット数枚買って掃除用にローテーション組んで下さい。しなりもあって足に優しく出来ています。
なってしまったら・・・
足底皮膚炎になってしまったら、床にはタオルを敷いて、その上にペットシーツを敷いて下さい。モルモットはペットシーツを食べない個体が多いようです。糞やオシッコが多いのでシーツがある程度汚れてきたら1日に数回交換しましょう。足裏に毎日消毒をして下さい。炎症や疼痛が重篤な場合は抗生物質や鎮痛剤を使用します。また患部へのレーザー治療を創傷治癒促進や疼痛緩和のために行うこともあります〔Brown et al.2008〕。
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かなりひどい時・・・
痛みを伴うくらいひどい時は徹底した対応ならびに処置をして下さい。①で足裏を消毒し、②の抗生物質を塗り、③のドレッシング材を切って張り付けて、④で足にバンテージを巻きます。
②抗生物質は動物病院専用のコレ!
炎症を止めて!化膿させないようにしっかり塗って下さい。
③傷からの液体を吸収するドレッシング材ならコレ・・・
足裏に合わて切って張って下さい!
バンテージを巻いても、意外とモルモットが嫌がって外してしません。
④バンデージはこのレベルのもを揃えて!
この包帯は伸縮性があり、手で切れて使いやすいです。安物とは違います。
低反発マットを使う
人用の低反発のバスマットは衝撃を吸収するだけでなく、トイレに失敗してオシッコをしてもすぐに吸収してくれるので、足の裏が汚れることがありません。複数枚購入して毎日洗濯してあげて下さい。
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・モルモットの現代病?
・正直な所、原因は多すぎて特定できない
・抱っこして足の裏をチェックして!
まとめ
足底皮膚炎はうまく付き合っていかなければなりません。一番よい対策があるのではなく、モルモットの性格や状態によって、その方法がストレスなくできるのかによります。一つ一つ試してみて下さい。
参考文献