専門獣医師が解説するモルモットとチンチラの膣膜・・・常に処女???
膣膜
雌の発情周期は、モルモットでは15〜17日(13〜21日)や14〜18 日毛利 1998〕、チンチラは20〜60日(平均35 日)〔Weir 1970〕で、発情前期、発情期、発情後期、発情休止期までの4期に分けられています。モルモットとチンチラの雌の膣は発情期にのみ開口し、それ以外の時期は膣膜が閉鎖しています。したがって、膣の細胞が発情期以外は採取できないことから、マウスやラットのような膣垢検査での発情周期ならびに交配的期の決定が難しくなります。
膣膜が破れて粘液がでる
モルモットの身体の大きさであれば、膣を広げて膣膜を監視することも可能です。モルモットの膣膜は薄い色で閉じているのが目視できます。しかし、排卵4~5日前から濃いピンク色になり、排卵時に膣膜は穿孔されます。穿孔と同時にしばしば膣分泌物の増加も認められます〔Wilson et al.1993〕。 その後、膣膜は完全な穿孔から48~72時間以内に閉鎖されますが〔Wilson et al.1993〕、個体により2週間くらい続きます〔Zhao et al.1993〕。
妊娠中の膣膜穿孔・・・
モルモットでは妊娠中にも膣膜の穿孔が発生している個体も見られ、妊娠中に胎子が喪失した可能性を示唆していました〔Ford et al.1951〕。しかし、一方では妊娠中の膜の穿孔は自然なプロセスであり、エストロゲンとプロゲステロンの変化によって引き起こされた可能性もあり、明確な理由は不明です〔Frre et al.1951〕。
参考文献
■Frre D,Voun WC.The role of proesterone in the production of cyclic vaginal changes in the female guinea pig.EndocrinoloBy49(6):795-804.1951
■Ford DH,Webster RC,Young WC.Ruptu re of the vaginal closure membrane during pregnancy in the guinea pB Anat Rec109(4):707-714.1951
■Weir BJ.Chinchilla.In Reproduction and breeding techniques for laboratory animals.Hafez ES ed:p209.Lea and Febiger.1970
■Wilson RL et al.Time Mating Guinea Pigs by Monitoring Changes to the Vaginal Membrane throughout the Estrus Cycle and with Ultrasound Confirmation.Methods Protoc27;4(3):58.2021
■Zhao CY,Tam CC,Wong YC.Morphogenesis and ductal development of the prostatic complex of the guinea pig.J Morphol217(2): 219-227.1993
■毛利資郎.実験動物の遺伝・育種概論.実験動物技術大系.日本実験動物技術者協会編.アドスリー.東京.1998