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専門獣医師が解説するモルモットの副腎疾患~リュープリンで治療するの?

 2023/07/09 4 モルモットのQ&A この記事は約 6 分で読めます。 709 Views

副腎疾患は脱毛だけ?

モルモットの副腎は豆状で,左副腎は右副腎より大きく、腎臓の頭内側に位置します〔Sheikhian et al.2015〕。モルモットにおいて、副腎疾患に起因して脱毛を示した症例がこれまでもいくつか報告されていますが、多くは死後の剖検による病理検査で副腎皮質腺腫と診断されており、全く内分泌の異常を来さない症例も多いです〔Roskin 1930,Papanicalaou et al.1940,Franks et al.1962,Toth 1970,Mueller 1982〕。

診断は?

臨床では生前検査として内分泌学的検査は実施されずに、あえて言えば脱毛が見られ、画像検査での副腎腫大も発見されて、副腎疾患と暫定的に診断されています。皮疹は後肢と腹部を中心とした痒みを伴わない対称性脱毛です。胸部や頚部,前肢にまで広がり,重篤化すると皮膚は菲薄になり、弾力を欠きます。稀ですが、多飲多尿、痩削ならびに体重減少、腹部膨満、両側眼球突出が認められることもあります〔Gaschen et al.1998〕。副腎の形態学的変化は超音波検査や CT検査で確認するが、大きさの基準は明確になっていません〔Gaschen et al.1998〕。Zeugswetterは健常体の副腎を超音波検査で測定し、左副腎で13~14×4 mm,右副腎で13×5~6mmと報告されています〔Zeugswetter et al.2007〕。

コルチゾール測定は?

実験動物のモルモットでは、下垂体-副腎軸の検査およびステロイドホルモンの測定が検証されています。マウスやラットにおいて副腎皮質から分泌される糖質コルチコイドはコルチコステロンですが、モルモットではコルチゾールが主体となります〔Clifford et al.1999 〕。モルモットの血中のコルチゾール値の測定範囲は 5~30 μg/dLと報告されており〔Washington et al.2012〕,年齢や性別によっても変動があります〔El Hani et al,1980〕。一般的にオスのコルチゾールはメスよりも高いです〔Clifford et al.1999 〕。しかし採血は侵襲が高いため,Zeugswetter はモルモットの副腎機能を評価するための非侵襲的方法として副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験を行いました。この試験では唾液サンプルを使用してコルチゾール値を測定し、副腎疾患と暫定的に診断されました〔Zeugswetter et al.2007〕。

治療は?

治療の報告はほどんどされていません。大きさの定義も明確でないため、生前検査で暫定的に診断されても、脱毛くらいしか症状が発現しないことから、外科的に摘出されることを検討されるのは稀です。トリロスタンでの治療を試みたところ(2~4mg/kg PO BID)、3カ月後には症状が改善してきましたが、次第に治療への抵抗性が見られ、高用量では副作用として食欲不振と体重減少が観察されました〔Zeugswetter et al.2007〕。

参考文献

■Clifford CB,White WJ.The guinea pig.In The Clinical Chemistry of Laboratory Animals.2nd ed.Loeb WF,Quimby FW eds:p65-70.CRC Press.1999
■El Hani A,Dalle M,Delost P.Sexual dimorphism in binding and metabolism of cortisol during puberty in the guin
ea pig.J Physiol(Paris)76(1):25-28.1980
■Franks LM,Chesterman FC.The pathology of tumours and other lesions of the guinea-pig lung.Br J Cancer16(4):696-700.1962
■Gaschen L,Ketz C,Lang J et al.Ultrasonographic detection of adrenal gland tumor and ureterolithiasis in a guinea pig.Vet Radiol Ultrasound39(1):43-46.1998
■Mueller M.Beitrag zu den Spontankrankheiten beim Meerschweinchen. Dissertation.Vet med Uni Wien.1982
■Papanicalaou GN,Olcott CT.Studies of Spontaneous Tumors in Guinea-Pigs:I. A Fibromyoma of the Stomach with Adenoma(Focal Hyperplasia)of the Right Adrenal.Am J Cancer40:310-320.1940
■Roskin G.Eine bösartige Geschwulst beim Meerschweinchen zur vergleichenden Histologie und Zytologie der normalen und pathologischen NNR. Virchows Archiv277(2):466-488.1930
■Sheikhian A,Saadatfar Z,Mohammadpour AA.A histological study of adrenal gland in guinea pig and hamster.Comp Clin athol24:1069-1074.2015
■Toth B. Susceptibility of guinea pigs to chemical carcinogens:7,12-Dimethylbenz(a)anthracene and urethan.Cancer Res30(10): 2583-2589.1970
■Washington IM,Van Hoosier G.Clinical biochemistry and hematology.In The Laboratory Rabbit,Guinea Pig,Hamster,and Other Rodents.1st ed.Suckow MA,Stevens KA,Wilson RP eds.:p57-116.Elsevier.2012
■Zeugswetter F,Fenske M,Hassan J et al.Cushing’s syndrome in a guinea pig.Vet Rec160(25):878-880.2007

 

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