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専門獣医師が解説するウサギの雄雌鑑別と繁殖〔Ver.3〕ばんばん増えます!

 2019/02/19 1 ウサギの生態・特徴 この記事は約 9 分で読めます。 46,393 Views
ウサギ交尾

ウサギは性の象徴!

ウサギは繁殖力が強く、オスとメスを一緒にすると、あっという間に増えてしまいます。この繁殖力の強さのために、肉や毛皮をとるための家畜としても重宝され、実験動物でも使われてきた理由があります。そのため、ウサギは性や豊穣のシンボルとして扱われてきました。男性向け雑誌のプレイボーイのラビットヘッドやキャバレーでのバニーちゃんは、まさに性の象徴です。

 

復活祭のイースターラビットは、多産のウサギが豊穣のシンボルである卵(イースター・エッグ)を運んでくるキャラクターになりました。

雌雄鑑別

幼体での雌雄鑑別は生殖孔の形態と肛門との距離で行いますが、明確でないために鑑別が難しく、獣医師でも間違えることがあります。オスの生殖孔(包皮の開口部)は円筒状で肛門との距離はメスと比べて長いです。

ウサギ幼体のオスの陰部 ウサギ幼体のオスの陰部

メスの生殖孔はスリット状で、横からみると三角形をしています。肛門との距離はオスと比べて短いです。

ウサギ幼体のメスの陰部 ウサギ幼体のメスの陰部

オスは10~12週齢で精巣は陰嚢(いわゆる玉袋)に降りてきます。しかし、ウサギは鼠径輪が閉じないため〔Donnelly 1997〕、精巣がお腹と陰嚢の自在に移動し、陰嚢が膨らんでない時があります。成熟したオスはペニスと陰嚢の存在、メスはスリット状の外陰部で雌雄鑑別します。

ウサギのオスの陰嚢

オスの陰嚢

ウサギのメスの陰部

メスの外陰部

メスの特徴として、首の下には皮膚のたるみがあり、肉垂(デュラップ:Dewlap)と呼ばれています。中は脂肪で触ると柔らかいです。

ウサギの肉垂 ウサギ肉垂

これがポイント!(雌雄鑑別)
・幼体の雌雄鑑別は難しい
・生殖孔の形態で鑑別する
・2~3ヵ月齢になるとオスの精巣が明確になる
・メスは首下の肉垂が発達してくる

繁殖

ウサギは一年中繁殖か可能な周年繁殖動物ですが、特に繁殖適期は過ごしやすい春と秋です。繁殖させることは意外と簡単ですが、生まれた幼体のことをしっかりと考えて下さい。飼育ができるのか、もし飼育できない場合は里親を探さなければなりません。もちろんウサギの繁殖を希望していないなら、卵巣・子宮の病気精巣腫瘍などの病気の予防もできる去勢手術・避妊手術を検討してもよいかもしれません。

性成熟

オスは7~8ヵ月齢で性的な成熟を迎え、精子が生成されるようになります。メスは4~12ヵ月齢で妊娠が可能となりますが、品種によって時期が異なり、小型種は4~5ヵ月齢、中型種は4~8ヵ月齢、大型種は9~12 ヵ月齢と、体が大きくなるにつれて時間を要します〔橋爪 1992〕。小中型種であっても、繁殖する場合は体力を考えてメスは7~8ヵ月齢以上のウサギが最適です。また、オスとメスの体格差がある場合は、交尾が上手くいきません。

ウサギ

発情

発情したオスはマーキングのために縄ばり内に尿を飛ばしたり(スプレー:Spray)、人の足や物につかまり、腰を振り動かして自慰行為(マスターベーション)で射精をします。対策は去勢手術しかありません。発情したメスは、12~14日間の発情期が繰り返し起こり〔星ら 1996〕、発情期の外陰部は赤色を帯びて腫大します。

交配

交配はお見合いから始めます。基本的にオスとメス1頭ずつで行います。それぞれのケージを並べて、お互いの匂いをかがせて、存在を意識させます。慣れてきたらメスをオスのケージに入れるか、ウサギ同士をケージから出して交尾させます(オスをメスのケージに入れると、メスがオスを攻撃する可能性が高いので注意して下さい)。

ウサギのマット

メスはオスを気にいると、ロードシス(Lordosis)と呼ばれる尾を上げた姿勢が見られ、交尾を許容している証です〔星ら 1996〕。交尾はオスがメスの背中に回ってペニスを挿入します。交尾は1~2分と超短時間で〔星ら 1996〕、交尾が成功すると、オスは後ろに飛び跳ねるように倒れるのが特徴です。

交尾をしない場合は別の日に再び行い、相性が悪い場合はペアの組み合わせを変えます。交尾後はオスとメスは別々のケージに戻します。確実に妊娠させたい場合は、数日以内にもう一度交配をさせて下さい。

妊娠・出産

妊娠期間は30~32日です〔星ら 1996〕。妊娠診断は動物病院で、触診で胎子を確認したり、X線や超音波検査で判断します。

ウサギ妊娠レントゲン

妊娠した子供の数によりますが、後半になると腹部膨満になります。この時期に巣箱の用意をします。妊娠中のウサギにはストレスを与えないようにして下さい。栄養価の高い餌も必要になりますので、ペレットは繁殖期用のものに変えます。出産が近づくと、巣箱に牧草を運んで巣を作り始め、自ら乳腺の周囲の毛を抜いて巣材にします(営巣:えいそう)。

ウサギ巣箱 ウサギ営巣

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偽妊娠が起こることもあり、発情行動や営巣が頻繁に見られ、乳腺が腫って母乳が出てきます。

ウサギの多くは安産で、産まれてくる子供の数は、4~10(7.5)頭です〔Donnelly 1997〕。交尾後35日を過ぎても出産しない場合は、何か異常が起こっている可能性があるので、動物病院で診察を受けるべきです。子が1頭だと大きくなり過ぎて上手く出産できなかったり(難産)、子宮の中で死んでいる(胎子死亡)可能性が高いです。

赤ちゃん・子育て

新生子は赤子で生まれ、目も耳も閉じた状態です。

2~3日齢で毛が生え始め、目が開くのは12~13日かかります。

約20日齢からは、巣から出て遊び始めます。4週齢からは少量ずつ餌を自ら食べ、消化機能が完全に発達するのは6週齢以降で、完全な離乳は8週齢以降が理想です。早めに離乳すると腸内細菌叢が安定していないこともあり、下痢を起こすことが懸念されます。子育ては母ウサギだけで行いますので、安心して子育てできるような環境や食事の管理を行ってください。出産後は神経質になるため、ケージ内は暗くして静かにします。掃除も毎日やると母ウサギにストレスを与えるので、出産前にきちんと掃除をしておいて、しばらくは最低限の掃除にします。

ウサギの授乳は1日1回で、時間も5~10分と短い時間で行います。一見すると授乳していないように見えますが、子が順調に大きくなっているようであれば問題ありません。人工哺乳は難しく、失敗に終わることも多いです。絶対に子ウサギには触れないで下さい。触ると人の匂いがついて、母ウサギが育児放棄をすることがあります。約4週を過ぎれば触っても安心です。

表:繁殖知識

性成熟 オス7-8ヵ月齢/メス4-12ヵ月齢(小型種 4-5ヵ月齢 中型種 4-8ヵ月齢 大型種9-12ヵ月齢)〔橋爪 1992〕
繁殖形式 周年繁殖/発情周期12-14日〔星ら 1996〕
妊娠期間 30-32 日〔星ら 1996〕
産子数 4-10(7.5)頭〔Donnelly 1997〕
離乳 約8週齢
これがポイント!
・性成熟が早いので、オスとメスを早めに分けないと繁殖する
・繁殖は簡単
・妊娠したメスはストレスを少なくし、高栄養のエサを与える
・授受は1日1回で5分位で行う
・人工哺乳は難しい
・成熟したオスは尿スプレーが問題となるので、去勢手術を考える
・メスは卵巣・子宮の病気が多いので、避妊手術を考える

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参考文献
■Buss SL,Bourdeau JE.Calcium balanace in laboratory rabbits.Miner Electrolyte Metab10(2):p127-132.1984
■Cheeke PR.Nutrition and nutritional disease.In The Biology of the Laboratory Rabbit 2nd ed.Mannig PJ,Ringer DH,Newcomer CE eds.Academic Press.San Diego.US:p321-333.1994
■Cortopassi D,Muhl ZF.Videofluorograpjic analysis of tongue movement in the rabbit (Orctolagus cuniculus).J Morphol240:p139-146.1990
■Donnelly TM.Disease problems of small rodents.In Ferrets,Rabbits,and Rodents:Clinical Medicine and Surgery.Hillyer EV,Quesenberry KQ.eds.WB Saunders.Philadelphia:p307-327.1997
■Hoyt RF Jr.Abdominal surgery of pet rabbits.In Current Techniques in Small Animal. Surgery.4th ed.Bojrab MJ.eds.William &Wilkins.Philadelphia:p777-790.1998
■Norris SA,Pettifor JM,Gray DA,Buffenstein R.Calcium Metabolism and bone mass in female rabbits during skeletal maturation:Effects of dietary calcium intake.Bone 29(1):p62-69.2001
■橋爪一善.哺乳動物の生殖行動と繁殖管理.実験動物.哺乳動物の生殖行動.正木淳二編.川島書店.東京.1992
■星修三,山内亮.家畜臨床繁殖学 (改訂新版).朝倉書店.東京.1990
■平川浩文.ウサギ類の糞食.哺乳類科学34:p109-122.1995

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