専門獣医師が解説するウサギの子宮疾患〔Ver.3〕赤いオシッコに注意!
目次
多くが子宮の病気?
ウサギが赤いオシッコをすると、多くが子宮のです。しかし、実際に検査をしてみないと、子宮の病気かは分かりません。膀胱炎や尿結石でも血尿が見られます。
「メスのウサギは年をとると子宮ガンになりやすい」そんな話を聞いたことがあると思いますが、現実的に子宮の病気は年齢に重ねると共に増加し、特に子宮の腫瘍が多いのも事実です。メスは子宮の病気により、陰部からの出血が起こり、これに驚いて動物病院で受診して初めて発見るケースがよく見受けられます。加齢とともに子宮も腫瘍化をすることから、適齢期に卵巣子宮摘出手術(避妊手術)を施すことも予防策の一つでしょう。
何で子宮の病気が多いの?
ウサギに子宮の病気が多い理由は以下のことがあげられています。
- 頻繁な発情
- 偽妊娠
- 不規則な生活
- エサ
- 肥満
- 加齢
- 遺伝
頻繁な発情
メスのウサギは4~17日間の発情期(許容期)が繰り返し起こります。発情すると、外陰部は赤色を帯びて腫大し、卵巣や子宮の組織に影響を与えます。ペットでは特に頻繁に発情を繰り替えすことが多く、本来発情していない休止期も1~2日と短く、慢性発情や持続発情とも表記されています。野生では天敵が多く、子孫を残すために旺盛な繁殖力が必要なのでしょう。
偽妊娠
偽妊娠が起こることで、子宮は腫脹します。偽妊娠が頻繁に起こることは発情と同様に卵巣や子宮の組織に影響を与える可能性が高いです。
不規則な生活
寝起きの時間がバラバラ、1日中ずっと電気つけっぱなし等の不規則な生活環境はホルモンの分泌に影響が起こります。
エサ
栄養のアンバランスはもちろんのこと、エサの化学物質などが発癌物質となることもあります。気になる方はオーガニックフードを選ぶとよいでしょう。
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肥満
栄養状態がよく肥満になると、生殖器にも栄養が行きとどき、発情しやすなります。
加齢
年をとるにつれ、子宮の病気や腫瘍の発生が高くなります。
遺伝
遺伝的な発生要因もあります。
症状は?
- 無症状
- 性格の変貌
- 性行動の増加
- 赤いオシッコ
- 乳腺が張る/乳腺腫瘍
無症状
子宮の病気の初期は無症状で、食欲や行動に何も影響が見られません。
性格が変わる
ホルモンのバランスが崩れて、イライラして落ち着かなくなります。自咬して自分の毛を抜いたり、毛や皮膚をかむウサギもいます。
性行動の増加
メスでもオスのように人の手足やおもちゃにしがみついて腰を振るような性行動が見られます。
赤いオシッコ
陰部から出血と言っても、真っ赤な血液が出ることもあれば、血液のかたまりのようなオリモノ状の分泌物、オシッコと一緒に排泄されると血尿と間違われます。
典型的な初期の赤いオシッコは下の写真を見て下さい。オシッコとは別に出血しているのが分かりませんか?
乳腺が張る
ホルモンのバランスが崩れて、乳腺が張ったり、偽妊娠と同じように母乳がでます。卵巣や子宮の病気になると、偽妊娠の期間が炎症することが多いです。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍にもなりやすくなります。乳腺腫瘍のあるウサギの多くが卵巣や子宮にも病気が見つかります。子宮の病気があると、交配しても子ができにくくなります(不妊)。
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繁殖生理と子宮の特徴
犬や猫の子宮は2本の子宮が癒合して1本になりますが、ウサギの子宮は、左右の2本の子宮がそれぞれ独立して膣に開口しているために、重複子宮と呼ばれます。それぞれの子宮の先に卵管と楕円形の卵巣があります。
性成熟に達するのはオス7~8ヵ月齢、メス4~12ヵ月齢(小型種 4-5ヵ月齢 中型種 4-8ヵ月齢 大型種9-12ヵ月齢になります〔橋爪 1992〕。メスは成体の体の大きさの70~80%のサイズに達すると繁殖可能になるので、小型種では早く、大型種では時間がかかるのです。
メスのウサギは犬や猫のような定期的に発情が訪れる動物でなく、12~14日間の発情期が繰り返し起こり〔星ら 1996〕、発情をしていない期間が極端に短いため、常に発情している感じになります。子宮が発情している期間が多いと、細胞が変化しやすくなり、病気が増えてしまうのでしょう。
みんな腫瘍?/病気の種類
子宮病気の原因は性ホルモン分泌の異常で、最初に子宮の内腔を裏打ちしている内膜にポリープができたり、透明な液体が貯まる嚢胞ができたりしますが、これは良性の変化で、いわゆる子宮内膜症とも呼ばれます。この病変が、次第に腫瘍性の変化を示し、つまり癌に進行する過程をたどります。他にも子宮内に液体が貯まって、子宮が巨大に膨らむ子宮水腫という病気もあります。
- 子宮内膜症
- 子宮内膜炎
- 子宮内膜の血腫
- 子宮の腫瘍
- 子宮水腫
子宮内膜症
子宮の内膜が異常を起こして増殖します。いわゆる子宮の壁が分厚くなり、太くなります。内膜が乳頭にようにボツボツと増殖したり、ポリープができたり、嚢胞ができます。
子宮内膜炎
子宮内膜症の状態で細菌感染が起こると子宮内膜炎なります。子宮内膜炎は抗生物質で治療されますが、内膜症は炎症がないので、抗生物質は効きません。検査では内膜症と内膜炎は鑑別できませんので、最終的に子宮を外科的に摘出してからの病理検査で診断します。
子宮血腫
子宮内膜の血管が増殖して、出血して血液がたまります。血管の増殖の原因が内膜症や内膜炎、あるいは先天性(生まれつき)のこともあります。血管が増殖して大きな血腫(大きな血豆みたいなもの)ができると、大量出血をすることがあります。大量の出血が見られた時は、大きな血管が破裂した時でしょう。慢性的な出血では、飼い主も気づかないと、貧血を起こしています。ウサギは正常でも赤褐色のオシッコをするので発見が遅れがちです。
子宮の腫瘍
子宮の腫瘍は良性と悪性がありますが、ウサギの子宮では悪性が多いです。悪性の子宮腺癌(しきゅうせんがん)が最も多いのですが、診断は子宮を外科的に摘出してからの病理検査で行います。悪性腫瘍は摘出しても全身に転移しやすく、すでに転移していると残念ながら長生きできません。特にウサギでは肺へ転移が見られます。
子宮水腫
子宮の内腔に透明な液体が貯まり、子宮が大きくなります。お腹の大半を占めるほど巨大になることも多いです。
最近、太ったなと思っていたら、子宮水腫であったというケースが多いです。子宮水腫では陰部からの出血は多くないので、発見が遅れがちになります。
卵巣の病気
子宮の病気ほどではないですが、卵巣の病気も起こります。卵巣に卵胞が液体を含んで大きくなる卵巣嚢腫や腫瘍などが、子宮の病気と併発して起こること多いです。
どうやって検査するの?
子宮の病気はレントゲン検査やエコー検査で判断します。明確でない時や腫瘍の転移の詳細はCT検査をします。出血がひどい時には血液検査で貧血の有無などを確認します。腫瘍か腫瘍ではないのか?一番知りたい所だと思いますが、確定するには、外科手術で摘出した子宮を病理検査で調べるしか方法はありません。レントゲンやエコーである程度の大きさの子宮の腫瘍がある、CT検査で転移があるなどの情報から、悪性腫瘍の可能性が高いということは言えるかもしれません。
X線検査
X線検査は一般的な検査ですが、子宮が腸と重なるために分かりにくいです。尿結石や肺の転移なども同時に判断できます。
超音波検査
人で言う産婦人科での子宮の検診で超音波検査は行われます。ただし、盲腸でエサを発酵させるウサギはガスがたまっていることが多く、ガスが多いとエコー検査で子宮が見えにくくなります。
CT検査
X線検査や超音波検査で子宮が明確でない時や子宮の腫瘍の初期転移を評価できます。
病理検査
外科的に摘出した卵巣や子宮の状態を病理検査で細胞を検査します。腫瘍の場合は、良性か悪性を判断できます。例え子宮にしこりがなくても、顕微鏡レベルで悪性の腫瘍細胞が見つかることも珍しくありません。
治療は?
基本的には外科手術で子宮を摘出するのが一番の得策ですが、内科的なホルモン治療もあります。
外科手術
全身麻酔をかけて、卵巣と子宮を外科的に摘出します(避妊手術)。完治を望むなら外科手術をして下さい。悪性腫瘍ですでに転移が始まっていると、子宮を摘出しても、手遅れのことが多いです。特にウサギは肺への転移により肺炎や胸水が見られ、呼吸に異常が起こり、手術の麻酔から目を覚まさないこともあります。転移の有無の確認が重要ですね。
ホルモン治療
内服薬や注射によるホルモン剤で、卵巣や子宮の病気の進行をおさえます。ウサギのホルモン治療は完治させるものではありません。
予防あるの?
子宮の病気にさせない
規則正しい生活をウサギにさせて、ホルモン分泌のバランスが崩れないようにして下さい。ウサギは夜行性なので昼間はしっかりと寝かせましょう。容易に発情しないように太らせないことも大切です。発情が頻繁にくるのは仕方がないことですが、子宮が腫瘍にならないようにするために、エサの栄養のバランスを考えてあげましょう。
子宮の病気の初期発見
子宮の異常の初期発見として尿検査があげられます。例えオシッコが赤くなくても、尿に血液が混じっていることがあります。尿試験紙で潜血反応が陽性になるか動物病院で確認してもらいましょう。ただし、膀胱炎や尿結石、腎炎などでも陽性と出ます。
自宅でオシッコ採取はコレ!
注意:糞がつかない尿で、排尿後30分以内の新鮮なうちに検査すること!
予防手術?
卵巣や子宮の病気にならないように、予防的に避妊手術をするという方法もあります。ウサギの避妊手術は、犬や猫よりも死にやすいですので、よく考えてから受けて下さい。
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・年中発情があるのが原因?
・赤いオシッコで初めて気づく
・健診ならもっと早くに発見?
・ウサギの子宮腫瘍は癌が多い
・ウサギの子宮検診受けるべき
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参考文献
■星修三,山内亮.家畜臨床繁殖学 (改訂新版).朝倉書店.東京.1990