インコのメガバクテリアの治療
まずはメガバクって何?からですね
どの薬使うの?
メガバクテリアは早期発見・早期治療が重要です。発見が遅れ、胃の障害が大きいと メガバクテリアが糞便中から消失しても症状が治らないです。メガバクテリアは胃の粘膜に侵入するため、排泄量が少なくても、必ず処置をしたほうがよいでしょう。初めの1~2週間はアムホテリシンB(10~13mg/kg/日 PO)を投与し〔Filippich et al.2003〕、その後症状によってナイスタチン(71,000~143,000単位/kg/日 PO)を追加投与します。ナイスタチンとアムホテリシンBの併用投与方は、より 高い殺菌効果を期待できます。しかし、これら2剤は同系統薬ですが、明らかな副作用は少ないです〔平野ら 2019〕。ナイスタチンは有効であると信じられていましたが、その後の実験で証明されなかったという報告もあります〔Filippich et al.2003〕。単独よりもアムホテリシンBとの併用で効果を上げるのでしょうか?
投与2週後以降もメガバクテリアが検出される場合には,フルコナゾール(6.7~13.3mg/kg/日 PO)を内服に加えたり、ミカファンギンナトリウムを皮下注射(18~55mg/kg 1~2 回/週)を行います〔平野ら 2019〕。ヨウ素製剤、ルフェヌロン、ケトコナゾール、テルビナフィン、イトラコナゾール、それぞれ単独投与はあまり効果的ではなかったという報告があります〔Filippich et al.2003, Phalen et al.2002〕。
メガバクテリアの排除と平行して、胃炎や胃潰瘍、吐き止めの治療が必要です。もちろん胃に刺激のないようなエサを選んだり、栄養剤の投与も必要です。
どれ位の期間投薬するの?
メガバクテリアが糞から消失するまでの平均日数は、1歳未満で18.4日、1~3歳で34.3日、4~6歳で21.0日、7歳以上で42.0日と報告され、年齢が進むほど治療に対する反応が低下します〔平野ら 2019〕。糞便中にメガバクテリアが消失しても、胃粘膜内に侵入して残っていることも多いため、長期間の投与が必要になります。なお、注射薬でない内服のアムホテリシンBは消化管から吸収しないため、副作用の発現が少ない特徴があります。
併発疾患があるかも?
問題となるのは、各種の抗真菌剤がまったく効果を来たさない薬剤耐性と考えられるメガバクテリアと、免疫を低下させている他の感染症もあれば対応するべきです。51羽のメガバクテリアのキャリーのセキセイインコのうち38羽(74.5%)にPBFDやクラミジア、マイコプラズマ、アスペルギルス、ジアルジア、カンジダなど、いずれかの感染症を引き起こす病原体が同時に検出されました。セキセイインコ以外の鳥種においても、家禽やラブバードでも他の病気の発生と相関していたと報告があります〔Schulze et al.2001〕。
参考文献
■Filippich LJ,Perry RA.Drug trials against Megabacteria in budgerigars (Melopsittacus undulatus).Aust Vet Practit23.184–189.1993
■Phalen DN,Tomaszewski E,Davis A.Investigation into the detection,treatment, and pathogenicty of avian gastric yeast.In。:Proceedings of the 23rd Annual Conference of the Association of Avian Veterinarians.Monterey (CA).Association of Avian Veterinarians.p49–51.2002
■Schulze C,Heidrich R.Megabacteria-associated proventriculitis in poultry in the state of Brandenburg.Germany.Dtsch Tieraztl Wochenschr108.264-266.2001
■平野郷子、眞田靖幸.一動物病院におけるセキセイインコのマクロラブダス症の臨床疫学調査.日獣会誌72.157-161.2019