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原猿類の飼育の心構えと基礎知識

 2021/08/20 2 原猿類 この記事は約 7 分で読めます。 1,502 Views

不思議なサル

原猿類はかつて霊長目原猿亜目に属する動物の総称とされ、名前の通りに原始的なサルの仲間で、キツネザル、ロリス、メガネザルなどが属しています。原猿類は真猿以外の霊長類になりますが、現在の分類では曲鼻猿亜目(キツネザルとロリス)とメガネザルに別れました。メガネザルは実際は真猿類に近いことが明らかになったため、霊長類は曲鼻亜目としての原猿類、直鼻亜目としての真猿類とメガネザルに分けられるようになりました。原猿類は形態的にも真猿類のサルの特徴と、サルになりきれない部分とが混在してます。

表:サルの分類

サル目(霊長目) 原猿類

曲鼻亜目 ・スローロリス
・ピグミースローロリスなど

直鼻亜目


メガネザル
真猿類 旧世界ザル ・二ホンザル
・カニクイザルなど
新世界ザル ・リスザル
・コモンマーモセット
・オマキザルなど
類人猿 ・ゴリラ
・ヒト
・チンパンジーなど

特徴

小型のサル

原猿類の体のサイズは、体長約12 cm体重100 g未満のネズミキツネザルから、体長が約90 cmの尾のないインドリまで様々ですが、多くは小型の種類になります。

知能が低い

霊長類はかなり知的な動物と考えられていますが、原猿類は他の哺乳類に比べて頭があまり大きくありません。彼らの脳の容積は同等のサイズのサルのそれよりも著しく小さいです。メガネザルでは、脳の重量は片目の重さとほぼ同じです〔Rosenberger, Alfred 2010〕。そのため原猿類は一般的に認知能力が低いと言われています。

優れた嗅覚

原猿類の一部の種類では鼻先が尖っており、サルらしくない顔をしています。しかし、全ての種類で、鼻先は湿っており、嗅覚が優れているのが特徴で、発達した臭腺を多様に役立ています〔Schilling 1979〕。種類によって臭腺は身体の様々な箇所に存在し、。環境ならびに縄張りでマーキングをする行為を頻繁に行います。

臭腺からの分泌物は個体鑑別、性別、ホルモン状態などの詳細な情報をもたらし、この情報は、縄張り意識、生殖、社会的階層など、多くの状況で重要です。また、臭腺は活動の季節変化を受けたり、尿臭あるいは尿と臭腺分泌物と混ぜて使用することもあります〔Epple 1986, Schilling 1979,1980〕。

歯が少ない?

歯数は基本的に他の哺乳類と比べて少ないです。最少がアイアイの18本、次いでインドリの30本です。

櫛歯

下顎の門歯あるいは犬歯が、櫛状になっており、櫛歯と呼ばれています。この櫛歯は毛繕いや樹液を採取するために樹をかじるために役立っています。なお、アイアイは例外で櫛歯はありません〔岩本 1989〕。

平爪と鉤爪

ほとんどの指が平爪ですが、一部に鉤爪が混在します。キツネザルとロリスでは後肢第2指のみが鉤爪、メガネザルでは後肢第2と第3指のみが鉤爪で、毛づくろいに適していると考えられています。しかし、アイアイは例外で、基本的に鉤爪ですが後肢第1指のみ平爪です〔岩本 1989〕。

二枚舌

原猿は本来の舌の裏側に小さな痕跡的な舌様構造物があります。これは人や類人猿に見られる采状ひだ(Plica fimbriata)と同じに考えられています(舌の裏側の、右側と左側それぞれに縦に走行しているひだ:舌下腺からの唾液の開口部が存在する場所)。原猿ではこの小さい舌を下舌(Sublingua)と呼ばれ、ロリスでは櫛歯を綺麗にする掃除のための舌という説もありますが、必ずしも確かではありません。

行動・習性

夜行性

多くの原猿類は夜行性で、網膜の裏側に光を反射する膜(タペタム)があります。 しかし、キツネザル、インドリ、シファカなどの昼行性の種類もいます〔小山 1992〕。タペタムによって網膜を通過する光を反射し、光受容体の光への曝露を増加させています。

熱帯の樹上生活者

東南アジア、インド、アフリカ、マダガスカル島の、主として熱帯多雨林に分布し、基本的に樹上生活を営んでいます。

ビタミンcが合成できる

真猿類はL-グロノラクトンオキシダーゼ(ビタミンC合成酵素)を欠き、身体内でビタミンCを合成できません。しかし、原猿類は酵素を持っている種類が多いです〔National Research Council 2003〕。シファカ、ポット、およびキツネザル、ブッシュベイビー、ロリスはのグロノラクトンオキシダーゼを持っていますが〔Elliot et al.1966,Nakajima et al.1969,Pollock et al.1987〕、メガネザルは酵素を欠いていますので、原猿類はこのビタミンを合成する能力がすべて同じではありません〔Pullock et al.1987〕。

人獣共通感染症

原猿類は、他の霊長類よりも好奇心が弱いく、強引な保定などをしないかぎり、サルからの咬傷や掻創を負うことは少ないです。また、分類学的に人から最も遠く離れた位置にいますので、人間と他の霊長類の間よりも人獣共通感染症の可能性が低いです。現在、本邦ではサルは検疫対象動物となり、輸出国によって異なるが輸出前に検査を受けた健康個体のみが輸出され、本邦でも検疫を行い輸入される仕組みになりました。現在は野生個体がペット用として日本に輸入されることはなく、驚異的な感染症のリスクも低いです。

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参考文献
■Evans CS,Goy RW.Social behavior and reproductive cycles in captive ring-tailed lemurs(Lemur catta).J Zool156.171–179.1968
■Rosenberger Alfred L.The Skull of Tarsius: Functional Morphology,Eyeballs, and the Nonpursuit Predatory Lifestyle.International Journal of Primatology31 (6).1032-1054.2010
■Elliot O,Yess NJ,Hegsted DM.Biosynthesis of ascorbic acid in the tree shrew and slow loris. Nature 212.739-740.1966
■Nakajima Y,Shantha TR,Bourne GH.Histochemical detection of L-gulonlactone: Phenazine methosulfate oxidoreductase activity in several mammals with special reference to synthesis of vitamin C in primates. Histochemie 18.293-301.1969
■National Research Council.Vitamins.In Nutrient Requirements of Nonhuman Primates:Second Revised Edition.The National Academies Press.Washington DC.p113-149.2003
■Pollock JI,Mullin RJ.Vitamin C biosynthesis in prosimians: evidence for the anthropoid affinity of Tarsius. Am.J.Physical Anthrop73.65-70.1987
■Schilling A.Olfactory communication in prosimians.In The Study of Prosimian Behavior.Doyld G,Martin RD eds.Academic Press.New York.p461–542.1979
■Schilling A.The possible role of urine in territoriality of some nocturnal prosimians.Symp Zool Soc45.165–193.1980
■岩本光雄.サルの分類名(その8:原猿).霊長類研究5(2).日本霊長類学会.129‐141.1989
■小山直樹 .始的なサルである原猿類は、その名のとおり、古いタイプの哺乳類の特徴をもっている. 動物たちの地球 哺乳類I.5 キツネザル・ロリスほか.第8巻 41号.小山直樹編著. 朝日新聞社130-131.1992

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