専門獣医師が解説するモルモットの外部寄生虫〔Ver.2〕毛にダニやシラミがいる
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よく見て!何か動いている・・・
モルモットにも寄生虫がいることがありますが、特にモルモットセンコウヒゼンダニ(疥癬)、モルモットズツキダニ、ハジラミが多いです。ちなみに肉眼で見えるのは小さなモルモットズツキダニか、少し大きめのモルモットハジラミのどちらかだ思います。下の写真の毛に見られる虫はモルモットハジラミです。
モルモットハジラミ
2種類のハジラミ
ハジラミは目に見える大きさの寄生虫で、カビアハジラミ(Gliricola porcelli)やカビアマルハジラミ(G.ovalis)の寄生があります〔Wall et al.2001〕。虫体はやや黄色味を帯び、カビアハジラミは体長1.0~1.5mmで細長いです。カビアマルハジラミは体長1.0~1.2mmで、腹部がやや卵円形で丸いです〔奥祐ら 1985〕。ハジラミは、卵、幼虫、成虫と生涯にわたってモルモットに寄生し、皮や皮脂などをエサとして食べています。多くはカビアハジラミが検出されます〔Ronald et al. 1976〕。
どこでうつるの?
主に同居個体あるいは授乳中での母親から接触して感染します〔Fox et al.2002〕。ハジラミは温度や匂いに敏感なため、モルモットの体表温度を適温とし、もしモルモットが死んで体温が下がると、ハジラミは体から離れ、数日内に死にます。
症状は?
ハジラミは耳や肩の周囲によく寄生し〔Fox et al.2002〕、モルモットの毛をクシですくと動いているハジラミが見えます。少数の寄生では無症状ですが、重度寄生により痒がり始め、落ち着きがなくなってきます。寄生している耳や肩を物に擦りつけたり、自分の毛を抜いたり、かんだりします(毛咬み/バーバリング)。皮膚炎やフケなどはあまり見らません〔Timm 1988〕。なお、モルモットのシラミは人には寄生することはなく、ヒトのシラミもモルモットにはうつりませんので安心して下さい。
モルモットズツキダニ
モルモットズツキダニ(Chirodiscoides caviae)は体長0.35~0.5mmで、肉眼では毛についた灰褐色の粉がのように見える程度の大きさです。
細長くて扁平な体をしており、毛にしがみついて生活をしているため、モルモット被毛ダニ(Guinea pig fur mite)とも呼ばれています。体全域、特に背中やお尻に寄生し、皮膚にくいついて餌として体液を吸います〔板垣 1997〕。
オスは胴体尾側に乳頭状の生殖器が突出していますので特徴的です〔Schaeffer et al. 1997〕。
メスは生殖器が突出していません。
どこでうつるの?
主に同居個体あるいは授乳中での母親との接触、そして寝具や床材からも感染することがあります〔Fox et al.2002〕。
症状は?
通常は無症状ですが、免疫が低下すると増殖して、痒みとフケが見られ、脱毛まで起こることもあります〔Huerkamp et al.1996〕。痒みにより、自分の毛を抜いたり、かんだりすることもあります(毛咬み/バーバリング)。
モルモットセンコウヒゼンダニ
モルモットセンコウヒゼンダニ(Trixacarus cavaie)は、皮膚にトンネルを掘って生活をする小さなダニです。丸い胴体をしており、メスの体長は0.24×0.23mmです〔Fuentealba 1996〕。通常は体表に寄生していますが、メスは産卵するために皮膚内にトンネルを掘って産卵します。虫卵は皮膚内で長期間生存し、成長する機会を待ち、産卵から成虫になるまでに14日を要し、虫卵は21ヵ月間も宿主の体内で生存することができます〔板垣 1997〕。
どこでうつるの?
主に同居個体あるいは授乳中での母親との接触、そして寝具や床材からも感染することがあり、人へも一過性に感染することもあります〔Kummel et al.1980〕。
症状は?
栄養素のアンバランス、発情や妊娠、過密などのストレスで発症します〔Richardson 2000〕。体全域に脱毛と強いかゆみが特徴です 。初期は炎症を伴う皮膚炎だけですが、痒みに伴い傷が増えていきます〔White et al.2003〕。
進行するとフケも多くなり、次第に皮膚は硬いフケが重なって肥くなり、ガサガサしていきます〔White 2003〕。
皮膚病の悪化とともに、食欲も低下して痩せていきます。強い痒みが原因で、ケイレン発作が起こることもあります〔Beck 2005〕。
診断のために皮膚の掻爬検査(皮膚をひっかいたサンプルを顕微鏡で観察する)を行いますが、ダニの検出率は高いものではなく、繰り返して行うこともあります。
治療はどうする?
外部寄生虫の治療には、滴下式(皮膚に垂らす薬)の駆虫剤がモルモットへも使用されています。
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参考文献
■Beck W.Animal parasites and dermatophytes as a cause of epizoonoses in humans,Prakt Tierarzt86.p426-434.2005
■Fox JG,Anderson LC,Loew FM et al.Laboratory Animal Medicine 2nd ed.Academic Press.California.2002
■Fuentealba C,Hanna P.Mange induced by Trixacarus caviae in a guinea pig,Canadian Veterinary Journal37(12).p749-750.1996
■Huerkamp MJ,Murray KA,Orosz SE:Guinea pigs.In Handbook of Rodent and Rabbit Medicine. Laber-Laird K,Swindle MM,Flecknell PA.eds.Exter,UK,BPC Wheatons.1996
■Kummel BA,Estes SA,Arlian LG:Trixacarus caviae in festation of guinea pigs.J Am Vet Med Assoc177(9).903-908.1980
■Richardson VCG.Library of Veterinary Practice.Disease of Domestic Guinea Pigs.2nd ed.Blackwell Science Ltd.Malden, Massachusetts.2000
■Ronald NC, Wagner JE.The arthropod parasites of the genus Cavia.In The Biology of the Guinea Pig.Wagner JE,Manning PJ eds.Academic Press.New York.p201-209.1976
■Schaeffer DO,Donnelly TM.Disease problems of guinea pigs and chinchillas.In Ferret,Rabbits and Rodents.Clinical medicine and Surgery.Hillyer EV,Quesenbery KE eds.WB Saunders Company.Philadeiphia.1997
■Timm KI.Pruritus in rabbits,rodents,and ferrets.Vet Clin North Am Small Anim Pract18.1077-1091.1988
■Wall R, Scearer D. Veterinary Ectoparasites, Biology, Pathology and Control, Blackwell Science.UK.1997
■White SD, Bourdeau PJ, Meredith A.Dermatologic problems in guinea pigs.Compendium25.690-697.2003
■板垣博.節足動物,臨床寄生虫病.板垣博監.学窓社.東京.p267-286.1997
■奥祐三郎.神谷正男.3しらみ類およびはじらみ類.実験動物感染病学,藤原公策編.ソフトサイエンス社,東京. p371-375.1985