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専門獣医師が解説するヒョウモントカゲモドキの眼疾患

3 ヒョウモントカゲモドキの病気 この記事は約 11 分で読めます。 25,483 Views

レオパは目の病気が多い

飼育下のヒョウモントカゲモドキの目のトラブルは、非常に一般的です。112頭のうち52頭(46%)が眼疾患を患っていたと言う報告もあり、理由は不明ですが、メスよりもオスが発生率が高く、発生年齢は加齢とは無関係のようです〔Wiggans et al.2018〕。飼い主は頻繁に目を閉じたり、目の周りに目ヤニが付いていることで気付きます。これらの問題は家庭で一般的で治療可能なものから、非常に深刻なものまで様々です。

どんな症状?

目の症状は以下のようです。ただし、目の病気だけでなく、他の理由で目のトラブルを起こしているかもしれません。内臓疾患や呼吸器感染症などにより深刻な問題があると、目の治療だけでは問題が解決しない場合があります。

  • 目を細めている
  • 目を閉じている
  • 目を擦る
  • 目のケイレン(眼瞼痙攣)
  • 目ヤニ(眼脂)
  • 角膜のかすみ(角膜潰瘍角膜炎)
  • 目が白い(角膜潰瘍角膜炎)
  • 目が赤い(角膜炎ぶどう膜炎)
  • 目が大きい(緑内障眼球炎)
  • 目の中の細胞の塊(結膜嚢の角質堆積)
  • 目の周囲のカサブタ(脱皮不全)
  • 目の周りの膿(顔面の膿瘍)
  • 目や周囲の腫れ(眼瞼腫脹)
  • 見えていない(失明)

目を細めているだけでは気が付かないことも多いですが、閉じている時間が長くなり初めて異常と確認されます。

角膜炎角膜潰瘍を起こし、また自ら舐めることで角膜に浮腫が起こり白濁します。

角膜がふやけて白濁し、溶けてくることもあります。

角膜炎ブドウ膜炎が起こると目が赤くなります。

ブドウ膜炎が起こると眼球が拡張して緑内障になります。

目の中の細胞の塊は、結膜嚢の角質の堆積で、眼球が大きく見えます。

ヒョウモントカゲモドキは目の周囲に膿瘍を起こしやすいです。ビタミンA欠乏症が涙腺などの眼組織に関与し、感染が起こると膿瘍が発生します〔Philippe et al. 2017,Alejandro Bayón del Río 2002〕。

最終的に失明しても、ヒョウモントカゲモドキは生活ができます。コオロギなどの生き餌を捕まえるのに苦労しますが、その時は補食するのを手伝う必要があるかもしれません。

目の病気が多い理由は?

ヒョウモントカゲモドキは、パキスタン、インド、アフガニスタンなどの砂漠地帯に分布しており、半乾燥地帯に生息しています。しかし、生息地は夜間は涼しくなり、空気は湿った状態で、夜露や朝露が発生します。ヒョウモントカゲモドキは、イモリと異なり可動性の眼瞼を持っている特徴があります〔Wiggans  et al.2018〕。したがって、ヒョウモントカゲモドキの飼育では、目の周りの脱皮を促進するための適切な湿度と、そして適切な栄養のバランスがとれたエサが必要です。ヒョウモントカゲモドキの目は頭の大きさに比例して大きくなり〔Tony et al.2015〕、感染症や異物混入しやすく、他の動物よりも発生しやすい理由の1つです。

ヒョウモントカゲモドキ

具体的な原因は?

ビタミンA欠乏

ビタミンAは皮膚や粘膜ならびに分泌腺を維持するのに役立ち、 爬虫類において欠乏すると皮膚や粘膜が乾燥して角質化を起こし(扁平化生)、ハーダー腺や唾液腺の変性、鼻腔、肺、腸管、中耳などに感染を引き起こしやすくなります〔Boyer 2006〕。ヒョウモントカゲモドキのエサはビタミンAが少ないコオロギやワームであるため、そしてエサのカロチンからビタミンAに転換できるかが不明であることも発生要因にあげられています。ビタミンA欠乏のヒョウモントカゲモドキは、眼瞼の内側に固形物の細胞片(角質)や塊が蓄積したり、角膜潰瘍や角膜炎、または眼周囲の分泌腺の膿瘍が発生する場合があります(ヒョウモントカゲモドキの顔の膿瘍)。初期の場合はビタミンAが含まれているエサや総合ビタミン剤を与えて予防します。総合ビタミン剤にはβカロチンでなく、ビタミンAが配合している製品が無難です。

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カロチンがビタミンAに転換できない理由
近年、爬虫類のビタミンA欠乏症において、体内に存在するビタミンA及びβカロチンの吸収・代謝の中心的な役割を演ずるβカロチン中央開裂酵素(β-carotene 15,15′-monooxygenase:BCMO)が注目され、研究が進んで色々なことが解明されてきました。肉食や雑食性の爬虫類の方がビタミンA欠乏症を発症しやすく、草食性の爬虫類は発症しにくいそうです〔Mans et al.204〕。その理由は、肉食や雑食性の爬虫類では BCMOが発現せず、草食性の爬虫類ではBCMO により植物のβカロチンからビタミンAを転換しているという考えからきています。しかし、BCMO各爬虫類に存在するのか、ビタミンAにどの程度転換されるのかなどは現在研究されている段階です。βカロチンのエサを与えた、ヒョウモントカゲモドキでは十分にビタミンAに転換できるという結果も報告はされていますが〔Cojean et al.2018〕、まだまだ分かっていないことが多いです。

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脱皮不全

脱皮不全のヒョウモントカゲモドキは、目に問題がある可能性が高いです〔Wiggans et al.2018〕。眼の周りならびに眼瞼の古い皮は、結膜や角膜に影響しますが、眼瞼の内側(裏地)にある結膜嚢に角質が蓄積することがあります〔Reavill et al.2012〕。これが継続的に発生すると、角質のさらなる増殖が起こりプラグ(栓子)が形成され、眼球の圧迫を起こしたり、角膜がプラグと融合し、永久的な眼の損傷を引き起こす可能性があります。初期の場合は、綿棒などを使用して古い脱皮をはがしたり、目のプラグを除去します。眼瞼の皮を剥がす時は、眼瞼の裏地も剥がれていることを確認しないと、結膜嚢にのプラグの原因になります。密閉されたシェルターに湿ったバーミキュライトやミズゴケを入れて、湿気のある隠れ場所を提供したり、温浴をさせて脱皮を促進させます〔Reavill et al.2012〕。

ヒョウモントカゲモドキの脱皮不全

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目の異物混入

床材などの砂などの粉塵や小さい粒子が目に混入して目の問題を引き起こす可能性があります。異物により角膜潰瘍や角膜炎を引き起こします。これらの異物は生理食塩水または他の洗眼剤で目から洗い流す必要があります。ペーパータオルなどの粉塵が少ない床材であると目のトラブルは少ないです〔Wiggans et al.2018〕。

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感染症

細菌や真菌、ウイルスの感染症は、角膜潰瘍や異物混入が原因で二次的に感染を起こします。シュードモナスなどの細菌感染で炎症が起こることで、緑内障眼球炎が起こります〔Philippe et al. 2017〕。真菌感染の報告もあります〔Christian et al.2019〕。

外傷

自分自身による引っかき傷、同居個体からの咬傷、ケージ内の枝やシェルターなどで目を傷を付けることがあります。まれにコロギやワームに咬まれることもあり得ます。これら損傷から二次的に感染を引き起こします。

ヒョウモントカゲモドキの飼育

遺伝性素因

近親交配の結果として小眼球症単眼症無眼球症など、遺伝的異常による先天性眼異常があります。先天性の眼瞼変形や癒着のヒョウモントカゲモドキも発見されており、潰瘍や感染症を引き起こす可能性があります〔Franck 2015〕。アルビノ種では、明るい光に敏感になっています。

舌で目を舐める行動

ヒョウモントカゲモドキは舌で自らの目を舐めることができます。これは体表についた水分を摂取する目的とも言われています。目の病気があると、それを舐めることで病気をひどくする可能性もあります。また、治療のための目薬を舐めとってしまう可能性もあります。

予防

目の問題を防ぐ方法として以下の策を考えて下さい。ケージ内を一貫して清潔で安定した環境を提供します。 温度、湿度など、テラリウムの最適な状態を維持します。水と床材も清潔に保ちます。特に床材に素材についても慎重に選択して下さい。砕いたクルミの殻、砂利、木片などの特定の種類の素材は、目に影響しますので避けるべきです。レイアウトの流木やシェルターも、目を突いたり引っかいたりする可能性のある鋭いエッジやポイントがないことを確認して下さい。脱皮不全が起こらないように、湿度を保つ環境作りもして下さい。餌もカルシウムはもちろんビタミンA(βカロチンでないもの)が不足しないように考えて、総合ビタミン・ミネラル剤を与えましょう。

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参考文献
■Alejandro Bayón del Río.Reptiles Ophthalmology.WSAVA 2002 Congress
■Boyer T,Scott P.Nutrition, nutritional diseases, nutritional therapy.In Mader’s Reptile and Amphibian Medicine & Surgery.3rd ed.Diver SJ,Stahl SJ,eds.Elsevier Saunders.St.Louis.MO.2019
■Christian M et al.Acremonium and trichosporon fungal keratoconjunctivitis in a Leopard Gecko (Eublepharis macularius).Veterinary Ophthalmology22.6:928-932.2019
■Cojean O,Lair S,et al.Evaluation of β-carotene assimilation in leopard geckos(Eublepharis macularius).J Anim Physiol Anim Nutr (Berl)102(5):1411-1418.2018
■Franck R.Congenital ankyloblepharon in a leopard gecko (E ublepharis macularius).Veterinary ophthalmology 18:71-73.2015
■Mans C,Braun J.Update on common nutritional disorders of captive reptiles.Vet Clin North Am Exot Anim Pract 17:369-395.2014
■Philippe DV et al.The leopard gecko manual: expert advice for keeping and caring for a healthy leopard gecko. i5 Publishing LLC.2017
■Reavill D,Schmidt RE.Pathology of the reptile eye and ocular adnexa.19th Annu Conf Assoc Reptilian Amphib Vet.Proceedings.87-97.2012
■Tony G et al.Into The Light:Diurnality Has Evolved Multiple Times In Geckos. Biological Journal Of The Linnean Society, vol 115(4).p896-910.Oxford University Press (OUP).2015
■Wiggans KT,Guzman DSM,Reilly CM  et al.Diagnosis,treatment,and outcome of and risk factors for ophthalmic disease in leopard geckos (Eublepharis macularius) at a veterinary teaching hospital:52cases(1985-2013).J Am Vet Med Assoc1.252(3):316-323.2018
■Ophélie Cojean,Stéphane Lair,Claire Vergneau-Grosset.Evaluation of β-carotene assimilation in leopard geckos (Eublepharis macularius).J Anim Physiol Anim Nutr (Berl)102(5):1411-1418.2018

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