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専門獣医師が解説する鳥の疥癬〔Ver.3〕インコのヒゼンダニ

3 セキセイインコの病気 この記事は約 5 分で読めます。 12,477 Views

ダニの形態

疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生しておこる皮膚疾患で、鳥ではKnemidokoptes pilae が原因となり、オウム目、特にセキセイインコで発生します。ダニの成体は丸い楕円形で、オスは、長さ最大220μm、幅約150μm、メスは長さ最大356μm、幅約300μmです。4 対の脚は短く、体の側縁をわずかに超えて伸びている程度であるのが特徴です〔Mohamed EA et al.2017〕。

セキセイインコ疥癬

症状

主に進行性皮膚炎ならびに白色を帯びた鱗片状の痂皮形成や脱羽といった皮疹が見られ、同時に症状に応じて掻痒も起こり、顔や嘴を止まり木に擦り付けたり、脚をつつく行動を示します。皮疹以外にも、食欲不振や衰弱する鳥もいます〔Mete et al.2014〕。皮膚穿孔のダニで〔Mullen et al.2009〕、特に羽毛がない箇所に発生し、嘴や蝋膜を含む顔、手羽先、脚、総排泄孔周囲などに皮疹が起こり、最も好発するのは顔と脚です。顔は目の周囲も含み、鱗片状に過角化を起こして痂皮が増殖し、嘴も変形し、見苦しく不快な外貌になることから、Scaly Face(醜い顔)と称されるすることもあります〔Hochleitner 1992.Arends 1997〕。

 

表皮に直接侵入したダニは角質層に袋状の空洞(トンネル)を形成して、さらに二次的に多数の空洞が繋がって、特有の蜂の巣状の海綿状病変になります。

発生

主にオウム目の鳥に寄生し、ほとんどの報告症例もセキセイインコですが、アレキサンドリンインコ〔Keymer 1983〕やアカカンインコ 〔Kyoo-Tae et al.2016〕、アオコンゴウインコ やボウシインコ類から検出された報告もあります〔Bauck 1997〕。

感染

鳥同士の長期にわたる密接な接触によって感染し、母鳥と雛間あるいは同居個体同士などで寄生が成立します。そして、栄養の不均衡やストレスなどの免疫低下、または劣悪な環境衛が発症に関与し〔Koski 2002.〕、これらのダニの潜伏期間は1年以上の長期になることも珍しくありません〔Urquhart et al.1987〕 。

セキセイインコ

検査

10%KOHで患部の鱗片状痂疲を浸軟化して、サンプルを掻把して、鏡検してダニの卵や生体を検出して診断します。

顕微鏡 

治療はどうするの?

内服薬、注射、背中に垂らす薬などの殺ダニ剤を投与して治療します。同居の鳥がいる場合には、無症状でも後日発症したり、感染源となるので、一緒に受診し、同時に治療をすることをお薦めします。

参考文献

■Arends JJ.External parasites and poultry pests.In Calnek BW, Barnes H,Beard CW et al.eds.Diseases of poultry.10th ed.Iowa State University
Press.Ames:805-806.1997
■ Bauck L.Avian dermatology.In Altman RB,Clubb SL,Dorrestein GM et al, eds.Avian medicine andsurgery. Philadelphia, Pa:WB Saunders Co, 549.1997
■HochleitnerM.Diagnosis and Treatment of Avian Skin Diseases.Waltham Focus42:23-30.1992
■Keymer IF.Parasitic diseases.In Diseases of cage and aviary birds.2nd ed.Petrak ML ed.Lea&Febiger.Philadelphia.Pa:583-587.1983
■Koski MA.Dermatologic diseases in psittacine birds: an investigational approach. Semin. Avian Exotic Pet Med11:105–124.2002
■Kyoo-Tae KIM,Seung-Hun LEE,Dongmi KWAK,Developmental morphology of Knemidokoptes pilae on an infested red-crowned parakeet (Cyanoramphus novaezelandiae).J Vet Med Sci78(3): 509–512.2016
■Mete A,Stephenson N,Rogers K,Hawkins MG,Sadar M,Guzman DS,Bell DA,Smallwood KS,Wells A,Shipman J,Foley J.Knemidocoptic mange in wild golden eagles.California, U.S.A. Emerg.Infect.Dis20: 1716–1718.2014
■Mullen GR,OConnor BM.Mites (Acari).In Medical and Veterinary Entomology.2nd ed.Mullen, GR,Durden LA eds.Academic Press.London:p433–492.2009
■Mohamed EA et al.Diagnosis and Management of Knemidocoptes Pilae in Budgerigars (Melopsittacus Undulates): Case Reports In Egypt.Mathews Journal of Veterinary Science2(1).2017
■Urquhart GM,Armour J,Duncan JL,Dunn AM,et al.VeterinaryParasitology, Longman Sci.and Technical. Essex.UK.1987

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