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専門獣医師が解説する鳥の嘴と舌!

1 セキセイインコの生態と特徴 この記事は約 9 分で読めます。 659 Views

歯が無いんです

現生の鳥類の特徴の1つは歯がないことです。鳥の歯の喪失は、これまで頭部の重量を軽減して重い負荷がかからないようにし、飛翔を最適化するためと解釈されてきましたが〔Zimmer 1996,Ackermann 1998〕、この解釈は絶対的な説得力はないです。鳥類は餌を一気に食べて、そ嚢で一次的に貯め、筋胃で摩砕したり、消化できない部分をペリットとして吐き出したり、歯のような飲み込む前に餌を分解する機能を喪失した代替機能を備えています。

鳥のペリットの詳細な解説はコチラ!

嘴は上顎と下顎が突出し、口周辺がひと繋がりの角質の板によって硬くなったものです。鳥類では前肢が付属肢としての機能を持たないため、嘴は採食の他にも、羽づくろい(グルーミング)、物をつまむ、求愛行動、雛への給餌などで使用されます。そのため、嘴の形状は鳥の生活と深い繋がりがあり、様々な適応を示します。タカやフクロウなどの肉食の猛禽類は、小動物の獲物を食べるために、先端が尖っています。ヘラサギの嘴はしゃもじ状で、口をやや開き気味にして水中に入れ、頭を左右に振り、嘴に触れた魚類・貝類・甲殻類などを食べます。花蜜食であるハチドリは鼻の中の蜜を吸うために細長い形状をしています。カモ類は嘴の咬合縁に歯の様な櫛状突起が並んでおり、 筋肉質の舌の棘乳頭と連携し、水の中で水草や草の種子を越して食べます〔van Grouw 2013〕。嘴は飛翔のために軽減目的として、中空もしくは多孔性の骨で構成されていますが、表面はランフォテカ(Rhamphotheca)と呼ばれる薄い角質で覆われており〔Campbell et al.1985〕、骨の間には血管と神経の通った層があります。嘴が伸びたと言うのは角質であるランフォテカが成長することで、普段は使用することで磨耗して調整されています。鳥類の多くの種類には、嘴のどこかに外鼻孔があり、頭蓋骨内の鼻腔と呼吸器系の他の部分につながっています〔Campbell et al.1985〕。なお、キウイの鼻孔は嘴の先端にあり、優れた嗅覚を持っています〔Stettenheim 2000〕。 猛禽類、オウム目、七面鳥などは、上嘴の嘴の根元に外鼻孔を覆う肉質の部分があり、蝋膜と呼ばれています〔Lawrence  2008 〕。セキセイインコなどの一部の種類では、蝋膜の色や外観によって雄雌鑑別がされ、ハト類ではこぶ状に盛り上がるため、鼻瘤とも呼ばれています。

セキセイインコの雌雄鑑別の詳細な解説はコチラ!

鳥類の舌は多種多様な形状や特徴があり、餌の種類や摂食方法などに関連しています〔Emura et al.2008,Rodrigues 2012,Susi1969〕。 舌骨装置も、大きさや形状、骨の数が異なり、舌の上皮が部分的に角質化 (硬化) し、乳頭で覆われている種類もいます〔Proctor 1993〕。キツツキは長い舌を道具にして木の中にいる昆虫の幼虫を、舌の先端の棘と分泌される粘液によって捕獲します〔Bock 1999〕 。ハチドリの舌は蜜を吸い易くするため、ストロー状になっていたり、キジ類のツカツクリの舌は、土中に産み落とした卵の孵化状況を調べるために温度を確認します〔Beason 2003〕。なお、鳥の舌骨装置は頭蓋骨から離れているため、食道への入口を広げ、大きな獲物を素早く摂取できるようになっています〔Homberger 1994〕。

オウム目

オウム目の舌は肉厚で、舌の動きを制御する固有の筋肉が備わっています。 人の舌には内舌筋と外舌筋がありますが、多くの鳥は外舌筋しかありません〔Huang 1999〕。特にインコやオウムの舌は短くしっかりとしており、舌の動きを制御する固有の筋肉を持っています〔Homberger 1986〕。固有の筋肉のおかげで舌を自在に動かすことが可能となり、僅かにしわが寄せて折り畳まれ、一方で伸ばすこともできます 〔Homberger 1999〕。採取した種子を舌で押し込んだり、所定の位置に保持し割ったり、また殻を分離して廃棄することができるくらい器用に使用します 〔van Grouw 2013,del Hoyo 2011〕。

ローリー

ローリーはオウム目のヒインコ亜科の俗称で、主に花蜜食です。特化した長い舌は、先端が非常に細かな乳頭がブラシ状になっており、器用に動かして花粉を食します〔del Hoyo 2011〕。

唾液腺

鳥類の唾液腺は舌根など様々な場所にあります。唾液および粘液を生成し、飲み込む前に食物を湿らせる〔Gill 1994,Samar et al.2002)。鳥類の唾液腺は哺乳類と比較すると一般的にあまり発達していませんが〔Klasing 1998〕、果物や花蜜などの柔らかい餌を食べる鳥よりも穀食や昆虫食の鳥の方が発達しています〔Iwasaki 2002〕。

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参考文献

■Ackermann J.Dinosaurs take wing.National Geographic194(1):74-99.1998
■Beason RC.Through a Bird’s Eye-Exploring Avian Sensory Perception.Bird Strike Committee USA/Canada, 5th Joint Annual Meeting.Toronto: Internet Center for Wildlife Damage Management.2003
■Bock WJ.Plenary03:Functional and evolutionary morphology of woodpeckers.Proc22 Int.Ornithol.Congr.Durban:Ostrich70(1):23-31.1999
■Campbell B,Lack E eds.A Dictionary of Birds.T and A.D. Poyser.Carlton.England.1985
■del Hoyo J,Elliott A.Sargatal J.eds.Handbook of the Birds of the World (Vol.1-16).Lynx.Edictions.Barcelona.2011
■Emura S,Okumura T,Chen H.Scanning electron microscopic study of the tongue in the peregrine falcon and common kestrel.Okajimas Folia Anat Jpn85:p11-15.2008
■Gill FB.Ornithology 2nd ed.WH Freeman and Company.New York.1994
■Homberger DG.S02.3:The avian tongue and larynx: Multiple functions in nutrition and vocalisation.Proc22 Int.Ornithol. Congr.Durba.Johannesburg: Birdlife South Africa:94-113.1999
■Homberger DG.The hyoid suspension apparatus as a structural constraint of feeding mechanisms in birds and mammals.Journal of Morphology220(3):355.1994
■Huang R,Zhi Q,Izpisua-Belmonte J,Christ B,Patel K.Origin and development of the avian tongue muscles.Ana Embryol200:137-152.1999
■Iwasaki S.Evolution of the structure and function of the vertebrate tongue Anat201:p1-13.2002
■Lawrence E.Henderson’s Dictionary of Biology 14th ed.Pearson Benjamin Cummings Prentice Hall:p111.2008
■Portman A.Sensory Organs:Skin,Taste and Olfaction.In Biology and Comparative Physiology of Birds,Vol II.Marshall AJ.Academic Press.New York and London:37-48.1961
■Rodrigues MN.Microscopical study of the digestive tract of blue and yellow macaws.Mendez-Vilas A ed.Current microscophy contributions to sdvances in science and technology,Formatex,Spain:p414-421.2012
■Susi FR.Keratinization in the mucosa of the ventral surface of the chicken tongue.J Anat105:p477-486.1969
■Samar ME,Avila RE,Esteban FJ.Olmedo L,Dettin L,Massone A et al.Histochemical and ultrastructural study of the chicken salivary palatine glands.Acta Histochem104:p199-207.2002
■Stettenheim PR.The Integumentary Morphology of Modern Birds—An Overview.Integrative and Comparative Biology40(4):461–477.2000
■van Grouw K.The Unfeathered Bird. Princeton: Princeton University Press.2013
■Proctor NS,Lynch PJ. Manual of Ornithology.New Haven and London.Yale University Press.1993
■Zimmer C.From teeth to beak.Discover17(1):44-50.1996

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