専門獣医師が解説するシマリスの飼育〔Ver.2〕
シマリスと共存するつもりで!
シマリスは他のペットと異なり、野生動物の性格が強く残っています。そのような性格をどのように対応したらよいのか?答えはないのかもしれません。
飼育
シマリスは野生動物の側面も多く、頬袋につめこんでエサを巣にためこんだり、すばやく止まり木をかけのぼったりと、好奇心をそそられます。ペットとしての飼育は難しく、攻撃的な性格にならないよう、そしてストレスをためないようにすることが重要になります(飼育下ではストレスの証である常同行動や自咬症などの異常行動が見られます)。
飼育頭数
野生と同じように単独飼育が望ましいのですが、繁殖を希望している場合などは、番および多頭飼育(オス1頭にメス2~3頭)も可能です〔Meredith 2009〕。
ケージ
シマリスは活発で木登りが得意で、上下に活発に動き回る習性があるため、ケージもある程度の高さ(約1m)があるものが必要になります。本来は屋外の大きなケージが適していますが、屋内飼育の際には、高さのある金属性の金網ケージを使用して下さい。
階層
階層の床は外して、太い木の幹や枝を設置すると上下へ移動することが可能となり、運動量が増します。ハンモックなどもシマリスは大変喜びます。
最近は地下に巣が作れるハイブリットタイプのケージも販売されています。
ケージの中にエサ容器や給水器、小屋などをレイアウトして設置して下さい。
床敷
床敷はあえて種類は問いません。敷くことで糞や尿の臭いを抑えます。
小屋
小屋は低層に設置するとよいでしょう。シマリスは床敷の紙やチップを小さくちぎって、餌以外にも巣内に詰め込む習性があります。
トイレ
トイレは基本的に覚えません。排便は多くはケージの隅で行います。
排尿はケージにしがみついて外に尿を飛ばすような行為もみられますが、これはオスに多いマーキング行動です。
鍵
シマリスは小さい隙間でも簡単にケージから抜け出しますので、必ず鍵をつけましょう。部屋の中でも、窓の網戸も簡単にかじって屋外へ逃亡してしまう恐れがあり、1度逃げてしまったシマリスを捕まえるのはほぼ不可能です。ケージの掃除などを行う際は特に注意して下さい。
温度・湿度・照明
温度・湿度
シマリスは、本来寒い地域で暮らしているので寒さには強のいですが、暑さにはやや弱い動物です。冬の寒さに対しては、野生では冬眠という手段をとっています。日本の高温多湿な気候はやや苦手です。ケージを設置する場所は直射日光のあたる所を避け、梅雨から夏にかけては、エアコンなどを利用して、適切な温度と湿度を保ちましょう(温度・湿度)。冬に気温が低下すると冬眠してしまうので、最低でも15℃以上になるように温度管理をして下さい。しかし、冬になると冬眠しない個体でも、活動量が低下します。
表:温度・湿度
温度 | 20~26℃ |
湿度 | 40~60% |
照明
シマリスは昼行性の動物で、時に太陽光(紫外線)を浴びさせることは、カルシウム代謝を促進し、くる病・代謝性骨疾患などの骨の病気を予防します(照明)。長時間の日光浴は熱中症になりやすいため、必ずケージの一部に日陰を設けて下さい。
食事
餌
シマリスは雑食動物で、基本的にリス用ペレットを主食に、種子、野菜、動物性蛋白質を与えます。リス用ペレットは商品が少なく、ハムスター用のペレットが代用されています。給餌時間は昼行性のシマリスが活動し始める朝がよいでしょう。ペレットや種子は常に餌容器に入れておき、腐りやすい野菜は時間を決めて新鮮なものを与え、果物やおやつはコミュニケーションの手段として、時々与える程度にとどめて下さい。
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動物性蛋白質は、ドッグフードやキャットフード、低塩煮干しやチーズ、ゆで卵、小動物用ミルク、無糖ヨーグルト、ミルワームなどを時々与えるとよいでしょう。種子が多く、動物性蛋白質が少ないと、特に幼体では骨が曲がるくる病や神経症状を起こする低カルシウム血症が好発するので注意して下さい。
可能な限り野生での生活を再現するために、採食行動にも変化をもたせるとよいでしょう。前足でエサを持ってかじる機会を増やし、餌をため込むような本能も満足させなければなりません。硬いクルミなどはかじることで、前歯の伸びすぎ(不正咬合)を予防し、ストレス防止の役目もします。
シマリスは偏食が多く、好物の種子しか食べないことが多いです。栄養の偏りによる肥満、脱毛、脂肪肝などの内臓の病気になり、短命で終わるので、そのような時にはサプリメントを与える習慣をつけましょう。
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飲水
給水器も壁掛け式のボトルタイプと皿タイプがありますが、多くがボトルタイプで飲みます。
ケア
ケージの中にシマリスを収納して、餌を与えるだけという単調な飼育は、成長や健康維持、繁殖のみならず、精神的的なストレスの原因になります。シマリスが持つ野生本来の行動を発現できるような環境作りのために、それぞれ生息地に適応した体の特徴や生態を、環境エンリッチメントに沿って考えます。シマリスは野性味が残っているため、「ケージを広くする」以外に、「探索させるような動きをさせる」、「(巣穴に)潜る」、「(物を)かじる」という行動がポイントになります。ストレス反応である常同行動がみられるシマリスが非常に多いです。
運動
活発な動物であるが最低の運動量は一概に定まっていませんが、部屋に放す場合は、屋外への逃亡、家具の隙間に入ったり下敷きになる、観葉植物や電気コードをかじる等の事故に注意して下さい。ケージの中で枝を登ったり、穴に隠れるようにするため、流木や小屋を設置すると、探索するように遊びます。
かじり木
物をかじることも習性の一つであるため、かじり木になるようなものをおいてあげましょう。他にもクルミなどの硬い殻つき種子などを好みます。かじらせることで歯の伸びすぎ(不正咬合)を予防できます。
コミュニケーション
シマリスは人を認識して馴れるというより、人を怖がらないように認識させると取り扱いが楽になります。
最初に好物のエサを手渡しで与えたり、手に馴れるように匂いをかがせ、手を恐がらないようにします。馴れたシマリスは人に寄ってきて、膝や肩に乗ってきたりするようになります。
タイガー期の扱い
冬眠前の秋、そして発情期は普段おとなしいシマリスもそれなりに狂暴化します。このように狂暴化したシマリスをタイガーと呼ばれています。血が出るほど指をかまれたり、顔を引っ掻かれたりることもありますので、そっとしておきましょう。
爪切り
野生では爪を削る環境がありますが、飼育下では爪が伸びすぎることがあります。しかし、シマリスはじっとしていないため多くは爪切りができません。木や枝をいれてあげて、少しでも爪が削れる環境にしましょう。
水浴び
入浴などの必要はありませんが、暑い夏では水浴びを行うこともあります。
・隠れ家となる小屋を設置する
・冬眠させない
・時々日光浴をさせる
・主食はペレットがベスト
・発情期は触らない
・幼体の時から人に馴らす
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参考文献
■Meredith A.Chipmunks.BSAVA Manual of Exotic Pets 4th ed.Meredith A,Redrobe S.eds.British Small Animal Veterinary Association. Gloucester.UK.p47-51.2002