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赤肢病レッドレッグス|カエルの細菌性皮膚炎

 2021/11/11 3 カエルの病気 この記事は約 14 分で読めます。 445 Views

カエルの皮膚の細菌感染

カエルに細菌による皮膚病は頻繁に見られる病気です。しかし、多くが飼育が不適切なため、その結果カエルの免疫力が落ちて、感染が成立します。

赤肢病

カエル(無尾類)で最も有名な細菌性皮膚炎は赤肢病(レッドレグス:Red‐leg/レッドレック:Red‐legs)赤脚症候群(レッドレグス症候群/レッドレック症候群)と呼ばれ、全身症状も起こるので細菌性皮膚敗血症とも言います。野生よりも飼育下のカエルに多発し、昔から有知られています〔Wright 2012, Densmore et al 2007〕。イモリやサンショウウオの有尾類でも発生します。

症状

病名の通りに皮膚の紅斑が見られ、腹側または後肢腹側に好発するために命名されました〔Densmore et al.2007〕。皮膚の紅斑はピンク色~赤色で、血管拡張やうっ血、および点状あるいは斑状出血が見られ、次第に皮膚の局所の浮腫、表皮びらん、潰瘍や脱落、または壊死が起こります〔Lewbart 2001〕。二次的に全身性浮腫(カエル風船病)も発生する可能性があります。他にも、食欲不振、全身の浮腫、体腔滲出液(胸腹水)、鳴かなくなる、総排泄腔脱、喀血、ケイレンなどが見られます。また全く兆候がなく突然死することもあります〔Densmore et al.2007〕。眼病変として角膜浮腫、前房蓄膿、眼内炎、および眼球突出も見られることもあります〔Wright et al.2001〕。

原因

最も頻繁に検出されているのはAeromonas hydrophilaです。その他、Chryseobacterium indologenes, Chryseobacterium meningosepticum,Citrobacter freundii,Klebsiella pneumoniaeProteus mirabilis,Pseudomonas aeruginosa,Serratia liquefaciensなどのグラム陰性菌が原因菌になります〔Nyman 1986,Taylor et al.2001〕。さらに、いくつかのグラム陽性菌(Streptococcus spp.,Staphylococcus spp.)も発生に関与しています〔Crawshaw 1992, Mauel et al.2002〕。

これらの細菌の多くは、健康なカエルの皮膚や腸内細菌叢に通常見られる日和見菌でもありますが、カエルの免疫が低下した際に発病します〔Hird et al.1981,Carey and Bryant 1995,Taylor et al.2001〕。

死亡率が高いの?

細菌が水中でよりよく伝染するので、水生のカエルは感染しやすい傾向にあります。ヒキガエルのような種類では、水中での交配期間を除いて陸場で生活しているので感染を広げる可能性が低いです。水質とろ過が不十分な環境でのカエルで、複数飼育をしていると容易に感染します。 赤肢病の致死率は全身状態の悪化が見られると81~100%とも言われています〔Wright 2012,Drake et al.2010〕。

えっ、今までの原因とは違うの?

研究者らは赤肢病を、Aeromonas hydrophilaをはじめとする細菌感染と決めつけていますが、同様の症状を示す可能性のある非細菌性病原体として、ラナウイルスおよびBatrachochy-trium dendrobatidisによる感染(カエルツボカビ症)が含まれています〔Cunningham et al.1996)。つまり、実際に赤肢病を示す病態には細菌以外にウイルスなどの感染の可能性もあるという説です。赤肢病は約100年も前から知られており、昔の死後の剖検では単純な菌分離しか行われていませんでした。両生類は死亡すると皮膚の抗菌ペプチドが分泌されなくなり、二次的な細菌による皮膚や臓器への侵入が容易に起こります。両生類は哺乳類などよりも、死亡すると皮膚も内臓の変化が迅速に発生するため、剖検の際には当然細菌が侵入して赤肢病と診断されがちです。例えば、Citrobacter spp.,Proteus spp.などの腸内細菌も必然的に分離されてしまいます。つまり、過去の歴史的に報告された赤肢病は過剰診断につながった可能性が高いのです。

フラボバクテリア症

フラボバクテリウム属(Flavobacterium spp.)の細菌はグラム陰性の黄色色素産生という特徴を持っています〔Taylor et al.2001〕。フラボバクテリウムは、水生環境に広く存在し、両生類から分離されているものは、F.oderans,F.indolo-genes,F.meningosepticumなどです〔Green et al.1999,Olson et al.1992〕。症状は赤肢病と類似し、水疱瘡や舌浮腫、角膜浮腫、眼球炎、および内臓うっ血が起こります〔Keller et al.2002, Olson et al.1992,Taylor et al.2001〕。全身の感染を起こすと浮腫症候群と呼ばれる、体全身の浮腫と体腔滲出液(腹水)が見られますが、ラナウイルス感染症、その他の全身性細菌感染症腎炎リンパ性心臓病など様々な病因でも発生するので鑑別が必要になります。

マイコバクテリム症

マイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)の細菌は、グラム陽性の抗酸菌です。マイコバクテリアの多くは病原性がありますが、両生類では目立った症状が見られずに、徐々に進行します〔Green 2001〕。両生類から分離されたものは、M.marinum, M.chelonei, M.fortuitum,M.xenopi,M.abscessus,M.avium,M.szulgaiなどです〔Chai et al.2006〕。マイコバクテリアの感染症は初期は微妙または不明瞭で、菌が全身に広がるまで何の症状も見られません。慢性肉芽腫性炎症として発見されることが多く、病変は皮膚に孤立性または多発性の結節が見られ、肝臓、脾臓、腸、腎臓などの内臓にも肉芽腫性炎症を起こします。カエルは活動性が低下し、削痩あるいは体重減少、粘液膿性の鼻汁などが見られます。マイコバクテリウムの一部の菌種は人獣共通感染症であるため、感染の可能性のある動物との取り扱いは注意しないといけません。

診断はどうするの?

生きているカエルの皮疹からの菌分離を行い、微生物検査と抗生物質の感受性試験を行います。あるいは皮膚の一部を切除して(生検査)して病理検査をして診断しないといけません。カエルは弱ると皮膚の抗菌ペプチドが分泌しなくなるため、細菌感染が原因でなく、他の要因(ウイルスや真菌感染、不適切な飼育環境など)が大きな原因となります。その見極めが重要です。

抗菌ペプチドって?

両生類であるカエルは生息環境が主に水であるため、皮膚から全身性に細菌や真菌などの微生物の侵入を受け易く、皮膚に被毛や鱗といった物理的な防御も持っていません。そのため病原体の侵入に対するカエルの皮膚の効果的な免疫防御として、抗菌ペプチドと呼ばれる防御手段をもっています。抗菌ペプチドはカエルの皮膚からの粘液にを含まれ、化学的な生体防御システムを担っています。粘液の中に抗菌活性を持つカチオン性のペプチドが多数含まれ、微生物の侵入を防いでいます〔Ladram et al.2016, 岩室2017, 茂里2014〕。

抗菌ペプチドはカエルの体外に分泌されるとバネのようならせん状構造に変化し、プラスの電荷を帯びます。侵入してくる微生物の細胞膜はマイナスに荷電しているため、両者は引き合います。そして、ペプチドのらせん構造は、微生物の細胞膜中の脂質と馴染み、細胞膜を突き抜け易い化学的な性質があります。その結果、抗菌ペプチドは細菌、真菌、ウイルスなどの微生物を引き寄せて細胞膜に穴を開けて、死滅させます。

両生類の抗菌ペプチドは、甲状腺ホルモンと深い関係を持っています。抗菌ペプチドは幼体であるオタマジャクシの間は作られず、変態を起こす甲状腺ホルモンによって成体のカエルになって、初めて作られます。農薬などの影響での存在下では抗菌ペプチドの効力が落ちるという報告も出ており、現在、両生類は世界的に減少の危機が伝えられていますが、環境汚染がカエルの微生物に対する抵抗性を弱めているのでしょう。しかし、細菌からの細胞外産物が、タンパク質分解によって抗菌ペプチドを阻害し、感染が成立するという説も出ています〔Pearson 1998,Simmaco et al.1998,Rollins-Smith et al.2002,2005,Woodhams et al.2007〕。

治療

抗生物質感受性試験などで原因菌を選定した抗生物質を投与します。一般的には以下のような治療が薦められています。

アミカシン

注射可能ですが、背部に経皮的に局所投与することもできます(2.5 mg / kg q48h)。

ニューキノロン系

注射可能なエンロフロキサシンのアルカ​​リ性なため、投与前に滅菌生理食塩水で1:1の比率で希釈して局所または皮下投与します(10 mg/kg SID)〔Baitchman et al.2013〕。

オキシテトラサイクリン

クラミドフィローシスが疑われる場合にオキシテトラサイクリンを局所あるいは筋肉注射します(2.5mg/kg 局所 q48h、50-100mg/kg IM q48h)〔Wright 2012〕。

第3世代βラクタム系

Ceftazidimeを局所または注射します(2.5 mg/kg 局所 q48h、20 mg/kg SC IM 局所 q48-72h)。

参考文献
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