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両生類の投薬 | どうやって投薬するのか?

 2021/12/16 3 カエルの病気 この記事は約 8 分で読めます。 1,712 Views

はじめに

カエル、イモリやサンショウウオなどの両生類は個体が小さいものも多く、皮膚からの粘液も出てくるため、保定が難しく、内服薬を経口させることも容易ではないです。また注射も難しく、両生類の皮膚は哺乳類のように伸びる皮膚でなく、牽引も大きくできないです。爬虫類のように硬い鱗はないが、粘液で覆われて、穿刺してもどこから皮下なのか、筋肉まで達しているか、感覚でも分かりにくいのが特徴です。

経口投与ってどうする?

両生類に経口投与することも可能ですが、保定を考えなければ難しい手技ではありません。短い食道はまっすぐで、口は比較的広いので、チューブゾンデを使用して食道の方に通過させるのは容易です。開口させると声門も自然に閉鎖するため、誤嚥の発生は稀である特徴があります〔Clayton 2007〕。

正確な薬剤の量を投与するためにマイクロピペットを使用することもあります。

両生類の脱水って分かるの?

両生類も病理ならびに食欲廃絶により、脱水を起こします。しかし哺乳類と異なり、外観からは分かりにくいです。

口腔内の乾燥した粘液、皮膚の皺や変色、椎骨脇の筋肉減少(際立った脊椎)、乏尿または無尿、体重減少などが特徴です。

一部の両生類、特にカエルでは、粘着の高い粘液が見られ、粘液が糸を引くようになり、スライムコート(Slim coat)とも呼ばれる症状が特徴です〔Wright 2006〕。

脱水の時の補液

補液は、拒食、嘔吐、下痢、その結果起こる脱水症に適応されます。 両生類の皮膚からの蒸発水分損失の割合は、陸生脊椎動物よりも大きいため、調子を崩した個体では、補液は重要な手技になります。 Wright(2006)によると、注射で補液をする場合は、初期の液体量は25mL/kgになります〔Wright 2006〕。しかし、注射での投与は以下のように理論的に可能ですが、熟練者が行わないと、保定はもちろんのこと生体へのストレスならびに侵襲が大きくなることがあります。

皮下投与

両生類の皮下投与はリンパ嚢への投与で、背側あるいは体の外側壁に沿って、無尾類(カエル)では大腿部に最もアクセスしやすいかしれません。皮下投与量は10~20mL/kg/日が一般的です〔Clayton 2007〕。

体腔内投与

体腔内は皮膚のダメージが強く、薬浴ができない生体で行われます。生体を背臥位に保定し、内臓が腹部体壁から離れるようにします。肺や消化器嚢の液体や薬物の注射を防ぐために、体腔の尾側3分の1に穿刺をします。なお、腹側腹部静脈の損傷を防ぐために腹側正中線を避けて下さい。針を体壁と平行に挿入し、針を吸引して空気が入らないことを確認します。投与は10〜20mL/kg/日が一般的です。

静脈投与

両生類では、静脈カテーテルを設置するのが難しいです〔de la Navarre 2006〕。腹側尾静脈や腹静脈を使用します。

骨髄内投与

骨髄内投与は重症の大型のカエルで行われることがあります。カテーテルは、脛骨あるいは大腿骨が使用されます。

そこで残るは経皮投与!薬薬のことです!

両生類は名前の通り、淡水と陸の両方で生きていけます。体液の主要な成分は0.65%の塩化ナトリウム(NaCl)、つまり体液浸透圧は鳥類や哺乳類の2/3で、周辺の低張な淡水から浸透的に皮膚を介して水分が体内に流入します。そのために両生類(特に無尾類:カエル)は経口的に飲水をしません〔Pessier2009〕。過剰な水分は主に腎臓から排泄されますが、電解質レベルは維持されます。両生類の皮膚は水分の浸透圧調節以外にも呼吸にも関与する特徴も備え、皮膚病または重篤な病気は、深刻な電解質および体液の乱れにつながります。

両生類の泌尿器は1対の腎臓と尿管、1つの膀胱から構成されます。特にカエル水分吸収は膀胱に蓄えた尿から再吸収するのが主であり〔Tanaka et al.2005,Shoemaker et al.1975〕、陸生種であると水分保持のために膀胱は大きいです〔Bentley 1971〕。この膀胱での水分再吸収により、哺乳類と異なり腎臓の腎髄質対向流系が欠如して尿の濃縮は積極的に行われず、大量の尿が排泄されます〔Bentley 2002〕。電解質などの再吸収も哺乳類と比べると低く、さらに窒素老廃物を排泄するのに大量の尿を排泄します。窒素老廃物は水生種はアンモニア、半水生種と陸生種の一部は尿素、陸生種の多くは尿酸で排泄されます〔Shoemaker et al.1975〕。

薬液の選択にもこだわりが・・・

脱水のある両生類は一般的に等張~低張性の液体を体内に拡散します。しかし、両生類の治療等で使用できる等張液は数多く報告されていますが、理想的なものは数少なく、Holtfreter溶液と呼ばれる両生類の胚を研究で使用される平衡塩類溶液が有名です〔Armstrong et al.1989〕。しかし、個人で複数の試薬を調合する手間がかかります。調合が面倒であれば、哺乳類で使用する生理食塩水やリンゲル液を精製水で2/3に割った溶液を簡易的に両生類に使用します(両生類用生理食塩水両生類用リンゲル液)。

両生類生理食塩水・リンゲル液の作り方はコチラ

一般的な補液は経皮で!

両生類の補液の最も一般的な経路は、局所または経皮です。リンパ嚢への注射(皮下補液)と経口投与は、軽度~中等度の脱水にも適し、中等度~重度の脱水では体腔内や骨髄内、まれに静脈投与も行われますが、一般的に生体への侵襲が高いです。

局所ならびに経皮的な水分投与、つまり補液である薬浴は、常に両生類の支持療法の最初のステップになります。薬浴は液体に両生類を浸けて、皮膚から吸収させる両生類特有の投与方法で、他の投与よりも侵襲が少なく、過剰投与のリスクも避けられます〔Clayton 2007〕。カエルでは、特にペルビックパッチを薬液に浸して、補液や薬剤の取り込みを行います〔Pessier 2009〕。両生類の至適環境温度域に設定(温帯両生類は18~22°C、熱帯種は21~29°C〔Wright 2006〕)し、十分に酸素化されたカルキ抜きをした水がを用意します。抗生物質などはこの水に溶解して投与します。

ツリーフロッグなどのカエルでは跳躍したり、壁に張り付いてしまう場合は、水槽や容器内にサランラップやビニールなどを詰めて、水底に腹部のペルビックパッチを浸けた状態を長くとらせます。薬浴の回数や時間は正確に定まってはいません。薬剤にもよりますが、1日1回または2回/60分~24時間までと臨機応変に行います〔Clayton 2007〕。

浮腫などに使用する高張液の薬浴や塩水浴は、生体を注意深く監視して下さい。両生類が弱ったり、異常が見られたら中止します〔Wright 2001〕。

両生類の塩水浴はコチラ

参考文献
■Armstrong JB,Duhon ST,Malacinski GM.Raising the axolotl in captivity.In Developmental Biology of the Axolotl.Armstrong JB et al.eds.Oxford University Press.New York.p220-227.1989
■Bentley PJ.Endocrines and osmoregulation.Springer,Berlin Heidelberg New York, p161–197.1971
■Bentley PJ.Endocrines and Osmoregulation.A Comparative Account in Vertebrates.In The Amphibia.Bentley P ed.Springer.New York:155-186.2002
■Clayton LA,Gore SR.Amphibian emergency medicine.Vet Clin North Am Exot Animal Pract10(2):587-620.2007
■de la Navarre BJS.Common procedures in reptiles and amphibians.Vet Clin Exot Anim 9(2):237-267.2006
■Pessier AP.Edematous frogs,urinary tract disease,and disorders of fluid balance in amphibians.J Exotic Pet Med18(1):4-13.2009
■Shoemaker VH,McClanahan Jr.LI.Evaporative water loss,nitrogen excretion and osmoregulation in phyllomedusine frogs.Journal of comparative physiology100.p331–345.1975
■Shoemaker VH,Nagy KA.Osmoregulation in amphibians and reptiles.Annu Rev Physiol 39:449–471.1977
■Tanaka S,Hasegawa T,Tanii H,Suzuki M.Immunocytochemical and phylogenetic distribution of aquaporins in the frog ventral skin and urinary bladder. Ann NY
Acad Sci 1040:483-485.2005
■Wright KM.Overview of amphibian medicine.In Reptile Medicine and Surgery,2nd ed. Mader DR ed.Saunders Elsevier.St.Louis.p 533-971.2006

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