水ガメの頭の脇が腫れています・・・専門獣医師が解説する中耳炎/中耳膿瘍〔Ver.2〕
頭じゃなくて耳ね!
水ガメの鼓膜が赤くなっていると中耳炎が疑われ、腫れて盛り上がっていると中耳膿瘍です。下の写真のカメは頭の脇が腫れていますが、そこが鼓膜の場所で、中耳炎により膿が貯まって鼓膜が腫れているのです。
なんでなるの?
水ガメの幼体に圧倒的に多く起こり、次いでハコガメにまれに発生する程度です。頭や顔の脇、首のあたりが盛り上がるので、一見すると鼓膜と思われません。口の中からに中耳に細菌が侵入して、化膿を起こして膿がたまります。水の中に常存している細菌が原因となり、単に水が汚ったという感染だけでなく、環境温度やエサの栄養不足などが発生に関与しています〔Kirchgessner et al.2009, Stahl 2013〕。ビタミンA 欠乏症が、そのうちの主な発生要因ともされていましたが、実験においてその関連性は証明されませんでした〔Kroenlein et al.2008〕。
症状は?
炎症が起こっているだけの初期では気がつきませんが、中耳に膿が溜まって鼓膜が膨らんでくることで初めて異常に気づきます。通常は、元気と食欲などは正常です。
治療はどうするの?
慢性的になると膿が大きくなり、中耳の周囲の骨を溶かすこともありますので、早期の治療が必要になります。鼓膜を切開して膿を出し、洗浄を行いますが、膿を完全に除去しないと細菌が残り、切開した鼓膜も閉じてくるので、再び膿瘍が発生しやすいです。
再発する可能性があるため、十分な期間の治療が必要です。切開した鼓膜は次第に再生してきます。
予防は?
定期的に水を交換して水質管理に努めてください。水ガメは全身が乾かせるような陸地も作ってあげます。カメは甲羅干しで体を乾かすことで、体の清潔を保ちます。
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参考文献
■Kirchgessner M,Mitchell MA.Chelonians.In Manual of Exotic Pet Practice.MA Mitchell,TN Tully eds.Saunders Elsevier.St.Louis.p233-242.2009
■Kroenlein KR,Sleeman JM,Holladay SD et al.Inability to induce tympanic squamous metaplasia using organochlorine compounds in vitamin A-deficient red-eared sliders (Trachemys scripta elegans).J Wildl Dis44.664–669.2008
■Stahl S.Abscesses.In Clinical Veterinary Advisor:Birds and Exotic Pets.Mayer J,Donnelly TM eds.Elsevier Saunders:Publisher.St.Louis,MO.p71-74.2013