専門獣医師が解説する鳥の脚弱〔Ver.2〕脚が弱い?力が入らない?あげている?
目次
脚が弱いとは?
小鳥の症状で、「脚が弱くなった」「脚に力が入らない」「脚をあげている」「止まり木に止まれない」など・・・よく聞くます。その原因は何かというと沢山あり過ぎて、特定の原因が正確に見つかることは少ないです。
もっと詳しく評価して!
脚だけの病気でなく、全身性疾患で脚弱になることもあります。脚の麻痺や疼痛以外に、運動失調や体型の異常などでも起こります。
脚の痛みはあるのか?
脚を触って鳥が嫌がらないか確認して下さい。痛いと暴れたり、鳴いたりします。
疼痛があると、しきりに脚を止まり木から上げ下げをするようになり、動かすと「キッキッキッ」と鳴くようになります。重篤になると食欲や活動性も低下します。
麻痺は力がはいらない
脚の麻痺の確認は、鳥が人の指をつかむ力で判断します。
具体的にどんな病気?
脚の疾患
外傷
飼い主が誤って鳥を踏む、鳥自身が落下する、ケージの金網やおもちゃなどに脚を挟むといった事故により、外傷、骨折、脱臼、捻挫などが起こります。羽切り(クリッピング)している鳥に多く見られ、当然飛んだり、逃げたりする能力が落ちているからだと思います。他にもネコなどに襲わたり、同居鳥とのケンカでも起こります。基本的には外傷によるものは疼痛が見られます。
骨折
骨折すると脚を上げていたり、脚が変な方向に向いていることがあります。触ることが可能であれば、骨折部位がゴリゴリという感覚があります。X線検査で骨折は確認できます。
若鳥やくる病だと骨が柔らかいために、完全な骨折ではなく、若木骨折と言ってぐにゃっと曲がって折れていることもあります。
安静(ケージレスト)にて骨が治癒するのを待ちます。鳥は痛みがなくなってくると動きまわり、骨が多少ズレてくっつきますが、大きな問題にはなりません。ギブス固定も行えますが、鳥は体に包帯などを巻かれるのを嫌い、つついて外してしまう欠点があります。ピンを入れるニング手術は中型大型の鳥にのみ対応です。
脱臼
関節が外れてしまう脱臼は、骨折よりも少ないです。X線検査で診断されますが、関節が元の位置に戻ってしまうと分かりにくいです。股関節の脱臼では足が外転し、膝関節の脱臼では膝を曲げられずに伸ばした状態になります。可能であれば脱臼した骨を戻します。難しい場合は安静(ケージレスト)にて、脱臼した周囲の靭帯や筋肉の修復されるのを待ちます。脚は変位した状態で固定されることが多いです。
趾瘤症
炎症などで、足の裏の赤みや腫れがある状態を趾瘤症と言います。
初期はわずかに赤くなっていますが、疼痛もなく無症状です。進行するにつれ徐々に痛がってきますが、硬くなりタコになって落ちついていることもあります。
悪化する場合は、徐々に炎症が進行して腫れがひどくなり、脚裏が変形します。
原因は、肥満による体重増加によって脚裏の負荷、細過ぎまたは太過ぎの不適切な止まり木、餌容器の縁に止まっている等による偏った脚裏への負荷などです。ビタミンAが欠乏すると皮膚が弱くなり、悪化させます。
全ての鳥類に発生しますが、飼い鳥ではインコ・オウム類、ウズラ、ニワトリ、アヒルに多く見られます。
趾瘤症を起こす根本的な原因を通常の生活の中で改善する必要があります。肥満の鳥はダイエットが必要で、適切な食事への改善もして下さい。止まり木の太さも見直して、足底への負荷を軽減する方法もとることがあります。ウズラ、ニワトリ、アヒルなどでは、コンクリートなどの硬い場所を歩かせないようにし、人工芝や低反発スポンジを敷いて足底への負荷を軽減します。治療には抗生物質や鎮痛剤を用います。
関節炎
関節炎と言うと加齢で起こるイメージですが、鳥では発情による多骨性過骨症を繰り返し起こすことによって、膝や趾の関節に骨棘(トゲ状の突起)が出来たり、関節包への石灰沈着を起こします。必然的に慢性発情を呈すメスに多く発生します。肩関節の関節炎では飛ぶことができなくなります。レントゲン検査にて変形した関節を確認しますが、微妙な病変は分からないことも多いです。
変形した関節を元に戻すことは不可能です。原因である慢性発情を抑制し、進行を抑えることを治療方針とします。疼痛がある場合には、鎮痛剤を与えたり、関節のサプリメントも使用します。
痛風
痛風になると趾の関節が腫脹したり、黄白色の塊が形成されます(関節痛風)。進行すると基本的には痛みを伴い、脚を上げたり、嘴でつつくこともあります。
痛風の場合、血液検査で尿酸値の上昇が起こりますが、必ずしも上昇するとは限りません。高尿酸血症によって血液中に溶け切れなかった尿酸塩が結晶化して、足の関節内や皮下にたまって、結節を形成します。尿酸が高くなる原因はビタミンA欠乏症による腎臓の細胞の変性による尿酸排泄に障害が起こるからです。関節痛風はオウム・インコ類に発生し、特に高齢のセキセイインコに多いです。ブンチョウ、カナリヤなどのフィンチでは高尿酸血症はみられますが、足の関節痛風は見られず、内臓に尿酸が沈着することが多いです(内臓痛風)。痛風は完治は難しく、高尿酸血症の薬を与えますが、痛みがある時は鎮痛剤を用います。
栄養性脚弱
シードが主食だと栄養の偏りにより、多発性神経炎や開張脚などの脚弱が発生しやすくなります。特に若鳥に多発します。
多発性神経炎(脚気)
足が麻痺したり、上げる姿勢が見られ、感覚神経麻痺および神経炎による痛みによって起こります。よく、止まり木からの落下後や飛んだ後の着地後など、足に衝撃が加わった後に発現することが多いので、飼い主は足をねんざしたと思ってしまいます。脚弱以外にも翼を下げたり、呼吸が速くなることがあります。
ビタミンB1不足によって起こりますが、幼若鳥に多く発生します。ヒナは市販アワ玉にお湯で湯がいてさし餌していることが多いですが、これが原因なのです。アワだけでは必要な蛋白質とビタミンやミネラルを補うことはできず、また炭水化物やが多い種子のため、ビタミンB1の消費が増大して枯渇してしまいます。アワ玉に高品質なビタミン・ミネラル剤を加えたり、パウダーフードやふやかしたペレットを使用していると予防になります。
ビタミンBを投与し、餌も栄養の偏りがないペレットに切り替えます。ペレットを食べてくれない時はビタミン・ミネラル剤のサプリメントを使用します。
脚弱ビタミンならコレ!ネクトンBコンプレックス
足が弱い鳥のために脚弱の鳥はビタミンBをメインとした欠乏で起こります。ネクトンBコンプレックスは、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ニコチン酸アミド、パントテン酸、ビタミンB6(ピリドキシン)、葉酸などのビタミンBの複合体が調合され、粉タイプの甘いサプリメントに仕上げました。他にも季節の変わり目、環境の変化、繁殖や病弱の時にもビタミンB群は消耗されるので必需品です。
開張脚(ペローシス)
両側または片足の足が開いて伸びてしまう状態で、開張脚とも呼ばれています。ニワトリやアヒルで類似したペローシスと呼ばれる病気(栄養不足による、腱はずれによって開脚する)から、同じくペローシスと呼ばれています。
原因ははっきりと分かっていませんが、遺伝性疾患と考えられています。多くの鳥で発生しますが、オウム・インコのヒナに好発します。
大腿骨が内側に回転し、その下の足が外側に回転することで足が開きます。ひどくなると、膝や足根関節の脱臼が起こります。胸で体重を支えて成長するため、胸の変形も起こり、呼吸が速くなります。成長期であるヒナや幼鳥であれば、テーピング固定にて矯正を行いますが、完治は難しいです。すでに若鳥にまで成長し、骨の成長が終わっている場合矯正できません。
趾曲り
足の指のみが内側に湾曲した状態で、グ―とした感じです。ビタミンB2不足が原因と言われ、先天性奇形であるとの報告もあります。多くの鳥に発生し、目立つ異常ではないため、幼鳥時には気づかないです。指も短く、足全体が矮小なことが多いことから握力が弱く、止まり木から落ちやすくなります。特異的な治療法はありません。止まり木に伸縮テープを巻いて足底の保護を行います。
全身の病気
全身の病気で足が弱く見えることがあります。くる病・骨軟化症、脊椎変形/骨折、内耳炎、腫瘍、中毒など多岐に渡ります。足だけでないので、元気や食欲、そして他の部位にも障害が見られます。
くる病・骨軟化症
くる病と骨軟化症は、全身の骨の変形で、全ての鳥に見られ、足や背骨が変形する病気です。カルシウムが少ない餌を与えられたり、産卵中にカルシウムが枯渇することで発生します。血中のカルシウム濃度が低下することで、神経の伝達や筋肉の収縮の障害が起こるために、全身がぐたーと脱力します。特に足の麻痺によって立ち上がれなくなり、脚弱になります。血液のカルシウム濃度の測定を行う必要がありますが、状態が悪いため血液検査はできないことが多いです。治療はカルシウム剤を投与します
鳥のくる病・骨軟化症の詳細な解説はコチラ!
腫瘍による麻痺
腎臓腫瘍や精巣腫瘍は、近くにある坐骨神経を圧迫して、脚弱を起こります。主にセキセイインコにみられますが、まれにラブバードにもみられることがあります。X線検査や超音波検査で腫瘍を確認します。治療法は摘出手術術ですが、リスクの高いです。
脚弱の鳥のケアー
ケージの中で止まり木やブランコに乗っても、ケージの床に落ちることあります。止まり木を取り払ったらケージの側面に張りついて辛そうにします。ケージの中では動けずにいて移動するときはきつそうに羽をバタバタさせてバランスをとっています。
下に落ちることを考えて柔らかいマットを敷く
下に鳥が落ちても怪我しないように、かつ糞や尿が落ちるので掃除がしやすいものとは・・・ぶちゃけて、ティッシュやキッチンぺーパーを何枚も敷いておくのがベストです。掃除も簡単にできて値段も安いです。
止まり木を太いクッション包帯で巻く
弱い力で止まり木をつかむので、止まり木にクッションを巻くと、鳥にとって少しの力で止まれます。爪もひっかかりにくいものがあるんです!
粘着包帯テープならコレ!
鳥が好きな色はどれですか?
座りやすい止まり木が良い
止まり木をつかむ力が弱いので、つかまなくてもよい休む場所を用意してあげましょう。巣箱だと発情するのも心配だし・・・ならば以下のフラットの木製の止まり木がお勧めです!
脚弱用の止まり木ならコレ!
木製で爪も削れて、鳥も安心して止まれます!
移動が上手くできないので、餌容器を鳥に近くに設置する
採食しやすいように、いつも鳥が止まっている止まり木や踊り場の近くに設置して下さい。餌容器には餌は満杯に入れておかないと鳥は食べにくくなります。
ビタミン、カルシウムなどの栄養のバランスをよくする
栄養のバランスが悪くて起こる脚弱が多いです。普段の主食が種子の場合、野菜なども好き嫌いがある場合は、サプリメントを与えましょう。
まとめ
脚弱は色々な原因で起こりますので、動物病院できちんと診察を受けましょう。早期に対応すれば治るものもあれば、治らないものもあります。治らなくても、正しいケアーをすれば寿命を全うできます。