専門獣医師が解説するセキセイインコの雌雄鑑別と繁殖〔Ver.3〕鼻で鑑別!
目次
雌雄鑑別
セキセイインコはオスとメスがほぼ同じ色をしています。雌雄鑑別は外鼻孔周囲の蝋膜の色で鑑別するのが一番です。他にも、恥骨間距離、行動や性格、鳴き声、体の一部の形状での違いはありますが、とてもあいまいです。雌雄の違いは性成熟を迎える半年頃に明確になっていきますので、幼鳥の時の判断は不確実です。最終的には遺伝子(PCR)検査で雌雄を鑑別するのが最も確実です。
- 蝋膜の色
- 行動や性格
- 鳴き声
- 遺伝子検査
蝋膜で鑑別!
幼鳥の蝋膜は全体がピンク色ですが、性成熟を迎えると変色します。しかし、個体差もあるので、明確に色が出ていない個体もいます。蝋膜のメラニン色素が欠損しているハルクインや赤目系(ルチノー、アルビノ)は、他の品種と異なり、色の鑑別が異なります。
幼鳥
オスは蝋膜が均一にピンク色をしていますが、全体的に赤紫を帯びた色をしていることもあります。成長とともに次第に青色になってきますが、ハルクインや赤目系(ルチノー、アルビノ)はピンク色のままです。
メスの蝋膜は、鼻孔周囲のみが白色を帯びています。
成鳥
性成熟を迎えたオスの蝋膜は青色になり、艶があります。
メスは白色を帯びた茶褐色になり、ガサガサしています。少しだけ青色を帯びた白色の場合もあります。発情が強くなると茶褐色が濃くなります。
メスは発情が強いと、蝋膜の角化が進行して盛り上がり、発情が終了すると剥がれ落ちることもあります。
ハルクイン、アルビノ、ルチノー
性成熟を迎えたオスは幼鳥のままピンク色、あるいは紫色を帯びたピンク色をしています。メスはピンク色を帯びた白色、あるいは少し青色を帯びたみ白色をしています。
オスとメスの行動の違い
行動や性格はあくまで傾向なので、当てはまらないこともあります。個体によって性格も違うので、蝋膜の色と一緒に判断して下さい。
オス
オス特有の行動と性格は以下の通りです。発情すると精巣が腫大しますが、鳥の精巣は体内にあるので見た目では分かりません。
- 気があらい
- 人の言葉を話す
- 長くさえずる
- 人に馴れやすい
- 性の対象に体を擦りつける(求愛)
- 餌の吐き戻し(発情吐出)
- 総排泄孔を擦りつける(マスターベーション)
オスはメスよりも気があらく、やんちゃです。積極的で甘えん坊が多いと言われています。人の言葉を真似しておしゃべりをするのはオスに多いです。これはオスがメスの鳴き声を真似して気をひく習性があるからです。メスもおしゃべりをしますが、オスに比べるとそれほど得意ではないです。「ピロロロ〜」と長くさえずるように鳴くのは、メスへの求愛の鳴き声で、オスが縄張りを主張する時にも使えます。一般的にオスの方が馴れます。手乗りにしたい人はオスをお薦めします。オスは性の対象としてメスの鳥だけでなく、飼い主である人、玩具、鏡、止り木を相手にすることが多いです。性の対象を気に入り、体を擦りつけるような行動をします。
オスは特に発情すると、メスの気をひくためによく鳴きます。縄張り意識が強く、攻撃的になって気があらくなるインコもいます。
オスは性に対象に対して求愛行動(プロポーズ)をするために、a餌を吐き戻しする行動をとります(発情吐出)。発情吐出は本来メスに吐き戻した餌を与える行動なので、エサを一か所に吐くのが特徴です。
発情したオスは、対象とする物に尾羽を左右に振って、総排泄孔を止り木などに擦りつける行動(マスターベーション)をします。
メス
メス特有の行動と性格は以下の通りです。
- おとなしい
- 一人遊びが好き
- 尾羽をあげる姿勢(交尾行動)
- 巣づくり(営巣)
- 巣ごもり
- 無精卵を産む
メスは発情すると、交尾を許容する姿勢で、尾花をあげる姿勢がみられ、その姿勢をシャチホコポーズと呼ばれています。巣材を使って巣作りをする(営巣)ことがあります。止まり木をかじってボロボロにしたり、紙をちぎるなどの行動は巣作りの材料を集める行動です。
巣にこもる行動(巣ごもり)として、紙の下などに潜りこみたがります。玩具や箱、餌容器の隙間に潜る行動も同じです。
メスはオスがいなくても無精卵を産みます。
遺伝子(PCR)検査
セキセイインコの性別は、獣医でも間違えることがあります。遺伝子検査は、採血をして血液を調べてもらう方法です。専門の検査機関に依頼するので、結果がわかるまでに1〜2週間ほどかかります。遺伝子検査を行うと、ほぼ確実に性別が分かります。
繁殖(巣引き)
鳥を繁殖させることは巣引きと呼ばれています。相性がよく、年齢が近い雌雄の番を同居させて、巣を用意しましょう。セキセイインコは容易に発情を起こし、繁殖が簡単にできる鳥ですが、卵塞などの繁殖疾患、卵巣・卵管疾患が多いので、計画的な繁殖以外は、無駄な発情をさせないで下さい。1年中繁殖できますが、冬は低温による雛の死亡や卵塞やなどのリスクが高いです。
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性成熟
性成熟は6~7ヵ月齢です。オスは性的な成熟を迎えると精子が作れるようになります。メスは卵が産めるようになります。
発情
上述したようなオスとメスで発情兆候が見られます。発情させるために、栄養価の高い繁殖期用のペレットやシードに切り替えてください。産卵に備えてビタミンやカルシウムなども十分に補給して下さい。
交配
交配はまずはお見合いからです。基本的にオスとメス1頭ずつ同じケージに入れますが、相性が悪ければすぐに喧嘩が始まります。メスとオスのケージを隣同士に置いて、相性を確認してから一緒にすると良いでしょう。発情したオスは発情吐出したエサをメスに口移しで餌を与えたりするような求愛行動を示し、交尾をせまります。
メスはオスを気に入ると、しゃちほこポーズをとり、尾を上げて交尾を許容します(シャチホコポーズ)。交尾はオスがメスの背中の上に乗って、総排泄孔をこすり合わせて精子を注入します。相性が悪い場合はペアの組み合わせに変えて下さい。
産卵
交尾後にメスのケージに巣箱を用意をしますので、巣材にするために、ワラ、牧草、シュロ、紙などを与えて下さい。母鳥は自ら営巣を始めますが、セキセイインコはあまり営巣しません。巣箱は鳥の種類によって異なりますが、セキセイインコでは木製の巣箱が適していいます。
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巣の中に入っている時間が長くなると、それは産卵の兆候の始まりです。産卵は毎日あるいは1日起きに1個ずつ産み始め、産卵数は5~6個です。3~4個産んだ頃から抱卵を始めます。
抱卵は17~20日くらいで、メスは1日中巣にこもりっきりになります(巣ごもり)。出てくるのは排泄と採食時ぐらいなので、1日数回ぐらいしか出てきません。オスは基本的に巣箱の中にこもらず、本来のオスは餌を抱卵中のメスに届けたり、巣箱の前で見張りをします。母鳥は神経質になっています。巣箱の中を覗いたり、ケージを移動させるのは最低限にしましょう。刺激すると抱卵を辞めてしまうことがあります。なお、産卵した卵を人工孵化で孵卵させる方法もあります。
人工孵化の詳細な解説はコチラ!
雛・子育て
孵化が始まると、雛の鳴き声が聞こえます。雛は未熟な状態の赤子で、目も耳も開いておらず、体温調節もできません。
母鳥が上手に雛に餌を与えます。雛は孵化後に数日で目が開き、羽も生えてきます。
全身の羽が生えそろったら、雛なく幼鳥と呼ばれます。
巣から雛が出てくるようになり、この状態を巣立ちといいます。自ら餌を食べるようになることを一人餌(ひとりえ)と言います。一人餌になったら、別のケージに移してあげましょう。
幼鳥は3~5ヵ月齢に親の羽に変わります。手乗りに育てる場合には、生後18~20日齢で巣から雛を取り出し、親変わりに餌を与えます。
表:繁殖知識
性成熟 | 6-7ヵ月齢 |
発情 | 周年繁殖 |
繁殖回数 | 3-4回/年 |
産卵数 | 5-7個(1日おきに産卵) |
抱卵 | 17-20日 |
巣立ち | 28-32日齢 |
・ハルクイン、ルチノー、アルビノの蝋膜色は特殊
・繁殖は容易である
・無駄な発情は、病気の原因になるので注意
・オスは発情すると吐出し、精巣腫瘍の恐れがある
・メスは卵巣・卵管疾患、卵閉などのトラブルが多い
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