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ウサギってどんな動物?専門獣医師が解説する知らないといけない生態と特徴〔Ver.4〕

 2019/02/28 1 ウサギの生態・特徴 この記事は約 14 分で読めます。 40,352 Views

ウサギとは?

ウサギとはウサギ目ウサギ科に属する動物で、全身が柔らかい毛で覆われ、耳が大きい特徴があります。

ウサギ

日本でも野生のウサギを見ることがありますが、野生のウサギはノウサギ科に属しているニホンノウサギで、ペットで飼われているウサギ(カイウサギ)とは異なる種類です。ノウサギはカイウサギと比べて耳と手足が大きくて、性格的にも人に馴れません。最も大きな違いは染色体の数が異なることです。ノウサギとカイウサギは交配して、子供をつくることができません。

カイウサギは、アナウサギ科のヨーロッパアナウサギを家畜化したものです。ヨーロッパアナウサギは、フランスやイベリア半島(スペイン,ポルトガル)、アフリカ北西部に生息しています。紀元前数世紀にフェニキア人(イベリア半島に住んでいた民族)は、イベリア半島を Szpan (ウサギという意味)の国と呼び、これが今のスペインの語源になったと言われています。中世には食料や毛皮などの目的のために 、人の手によってヨーロッパ全域に広がり、そして海を越えてアメリカやオーストラリア、日本にも移入されました。本サイトで使用するウサギという言葉は、ノウサギでなくアナウサギを意味します(以下同)。

分類

ウサギ目(重歯目※)ウサギ科アナウサギ属
学名Oryctolagus cuniculus
英名:Rabbit
別名:カイウサギ
※ウサギは上の前歯の裏側に小さい歯が重なって生えているため、昔は重歯目(じゅうしもく)と呼ばれていました。

ウサギ小切歯

分布

スペイン、ポルトガル、モロッコ北部、アルジェリア北部(人為的にヨーロッパ各地を含め、オーストラリアやニュージーランド、日本などへ移入されています)

身体

頭胴長:38~50cm
尾長:4.5~7.5cm
体重:1.5~3.0kg
毛色:背中は灰色~茶褐色で、お腹は明灰色をしています。

生態

環境:草原や森林、草木のある丘陵地帯
行動
・夜行性で、昼は巣穴の中で休み、夕方から活動を始め、サッカーコート2~3面位の行動範囲を持っています

野生のウサギ

・巣穴はワレン(Warren)と呼ばれ、巣穴は寝室やトイレなどに分かれ、複雑な形をしています。なお巣穴は別に浅い窪みを作り、スポット(Spot)と呼ばれています。

ウサギ巣穴

・群居性があり、1頭のオスに複数のメスの一夫多妻制からなる2~8頭の群れで生活をしています。
・群れの中では、しっかりとした序列があります。オスは序列の優劣を競って喧嘩をします。序列の高いオスは群れの中の多くのメスと交尾をします。子ウサギが生まれると、メスであればそのまま群れに残り、オスだと序列争いでリーダーになるか、負けると群れから離れて、新たに群れを作ります。

ウサギ巣穴

・ウサギはイタチ、キツネ、コヨーテ、オオカミなどの哺乳類、ワシ、タカなどの猛禽類などの天敵のエサとなる被捕食動物(食べられてしまう動物)で、食物連鎖の底辺に位置しています。

ウサギ天敵

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食性:草食性で、通常は水分の多い葉を好みますが、冬など環境が苛酷であると茎、根、枝や樹皮なども食べています。

寿命:7~8年(10年を超すウサギも数多くみかけるようになりました)

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これがポイント!(分類と生態)
・カイウサギサギとノウサギは違う種類(ペットのウサギはアナウサギ)
・ペットのウサギはスペイン出身のヨーロッパアナウサギ
・上の前歯が重なっているので重歯目(ウサギ目)
・ウサギは自然界では弱い動物(被捕食動物)
・完全草食動物
・群れて仲間とコミュニケーションをとる
・オス同士はケンカをする
・寿命は7~8年(ペットは10歳近くまで生きる)

習性

群れる

野生のアナウサギは群れで生活をしており、複数で群れることで安心します。また、集団でいることで、天敵を見つけやすいという理由もあるでしょう。

ウサギの集団

夜行性

ウサギは夜行性で、明け方と日暮れ頃にもっとも活発に活動します。これは天敵から身を隠すための野生での生活パターンで、飼育下では天敵に襲われることがないので、人の生活に適応した昼間に行動するウサギも多いです。

ウサギ

被捕食動物

ウサギは天敵にいつ襲われても即座に逃げれるように、目を半分開いたまま眠ります。

ペットのウサギでは、横たわって眠ることも多く、これは完全にリラックスしている証拠です。

ウサギ睡眠

穴掘り

地面を掘る行動や隠れる動作は、野生での習性の名残りです。飼育下のウサギでも地面を掘る動作がよく見られます。

ウサギ地面を掘る ウサギの穴掘り

温和で臆病

性格は一般的に温和で、人に従順な個体が多く、飼い主を認識することができます。しかし、神経質で臆病な面も持ち合わせており、環境の変化によって拒食や軟便が見られます。極度の恐怖やストレスで突然死やショック死することもあります。ウサギの欲求を理解し、ストレスの少ない飼育環境を整えてあげることが大切です。

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表情豊か

犬や猫のように鳴くことがないため、コミュニケーションが取りづらいと思われていますが、色々なボディランゲージで意思を表す感情豊かな動物です。

リラックス

お腹を床につけて寝そべっているのは、警戒心を解いて、安心してリラックスしている時です。前足を体につけて丸くなっているので「箱座り」と呼ばれています。

ウサギリラックス

甘え/好き

鼻先でツンツン突いてくるのは、甘えたい時です。鼻音をブゥブゥと鳴らす場合も甘えている時に見られます。人の手をなめてくるのは、飼い主に対しての好意です。仲のよいウサギ同士も、お互いに舐め合いますが、親密さを深めているのです。声帯は発達していないため、声を出すことは限られています。小さい声で「プクク」と鳴いているのは、エサが美味しい時や楽しい時の独り言です。

自己主張

顎を擦りつける行動は、下顎の皮膚にある臭腺の擦りつけによるマーキング(チンマーク:Chin mark)で〔Donnelly 1997〕、自分の縄張りを主張しています。嗅いを好きな物や場所にマーキングすることで、「気に入った」ということ表しています。なお、飼い主の体にマーキングするのは親しみの表現です。

ウサギ下顎腺

警戒

後足で地面をダンダンと踏み鳴らす(スタンピング:Stamping)のは、仲間に危険を知らせる、怒って威嚇している、警戒している、怖いと思っている時の行動です。

後足で立ちあがるのは、危険を感じ取った時、面白い物を発見した時の行動です。

ウサギ探索

耳をピンと立てたり、ピクピク動かすのは、普段聞いている音とは違う音がして警戒をしている時です。耳はアンテナの役目をし、辺りの様子の変化を探るために、耳をレーダーのように動かして音の正体を探ろうとしているのです。

ウサギ耳

怒り

耳を背中につけるのは怖がっている時で、怒ると前足でパンチをしたり、頭突きをします。

ウサギ威嚇

威嚇または攻撃体制の時は、「ブーブー」と声をあげなが、前足で相手を小突くような攻撃もします。

餌容器や牧草入れをひっくり返すのは、お腹が空いていたり、退屈な時です。

毛づくろいが大好き

きれい好きで、体全体をくまなく毛づくろいをします。前肢をなめて唾液をつけて顔を洗い、口を使って体の被毛についたゴミを取り除きます。毛づくろいに多くの時間を費やし、多頭飼育ではウサギ同士でも毛づくろいをしあいます。

ウサギ毛づくろい 

特徴

天敵から逃げる被捕食動物特有の多くの身体の特徴があります。

跳躍

前肢は小さく、後肢が発達しており、ピョンピョンと跳躍しながら歩行します。

骨が薄い

骨質が薄くすることで、体重を軽くしています。体重に対する骨質量は猫の約1/3なので〔Donnelly 1997〕、ウサギに骨折が起きやすい理由になっています。

ウサギ全身骨格 ウサギの骨

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足指

指の数は前肢は5本、後肢は4本で、鉤爪をしています。足底には犬や猫のような肉球が見られず、毛で被われています。これは走行中に固い地面をとらえやすくし、クッションの役目をするからです。飼育下では足の裏の皮膚炎である足底皮膚炎が起きやすいのです。

ヒゲ

ヒゲは重要な感覚器官です。触毛とも呼ばれ、巣穴の中での障害物との接触、風の方向や強さなどを感じとる役目をしています。

大きな耳

ウサギは聴覚が優れています。大きな耳は音を能率よく集めて、小さい音まで聞き逃さないようにしています。耳には血管が豊富にみられ、動脈と静脈が走っています。これらの血管から熱が放散して体の熱を逃がしているのです〔Donnelly 1997〕。ウサギは汗腺が発達していないために汗をかけないので、暑さに弱いですので、熱中症には注意しなければなりません。耳での体温調節はとても大切になります。

ウサギの耳の血管

視力

ウサギは視覚はよくありませんが、暗闇の中では私達人間の8倍も視力がよいです。目が頭の脇に位置していることも、周囲を常に観察したり、天敵を早期に発見することに役立っています。

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鼠径腺

マーキングであるチンマークをする下顎腺以外にも、個体識別のために鼠径腺(そけいせん)、肛門腺と呼ばれる臭腺があります。鼠径腺は外陰部の両脇にみられ、分泌物がゴミのように黒褐色の塊としてくっ付いています。この分泌物が、いわゆる「ウサギ嗅い」原因になります。炎症などが起きていなければ取る必要はありません。

ウサギの臭腺 ウサギの臭腺

鼻ピク

上の唇の真ん中が縦に割れているのは、兎唇(としん)と呼ばれています。鼻をピクピクさせることができますが(鼻ピクとも呼ばれています)、これは匂いをかぐ、あるいは意思表示で行っているらしいです。

アイランドスキン

毛の抜け変え(換毛)は春と秋に起こります。アンゴラ種やロップ種などの一部のウサギの換毛が特異的で、毛が生えている部分と脱毛している部分が同時に発生し、継ぎ接ぎ状やまだら模様にみえます。これをアイランドスキン(Island skin)と呼ばれ〔Hoyt 1998〕、病的な状態ではありません。

ウサギの換毛 ウサギの換毛

乳首

乳首は4~5対(8~10 個)あります。第1乳頭は肩付近のかなり上の方にあります。

ウサギの乳首

尾は短く退化して、弓なりのへら型をしています。外観状は体に一体化しているように、丸まって見えます。

ウサギの尾骨 ウサギの尾

体内の特徴

草食動物であるウサギは、犬や猫の消化管の働きや構造が大きく異なり、低栄養で高繊維の牧草などを消化し、効率よく利用するための特徴を備えています。

常生歯

歯は切歯と臼歯があり、全部で28本です。特に前歯は大きくて鋭く、硬いものもかじります。臼歯は顎関節を半分脱臼させながら動かして、切歯で短く切断されたエサを、臼歯を石臼のにような動きで細かくすり潰します〔Cortopassi et al.1990〕。習性ですぐに物を齧ります。

ウサギの木齧り 

ウサギの切歯と臼歯は常生歯で、生涯にわたり伸び続けます。歯を使わないエサ(ソフトタイプのペレットや葉野菜)を多く与えることで、歯が伸びてしまい、不正咬合の原因になります。

ウサギの頭蓋骨 ウサギの奥歯

吐かない

胃は深い袋状の形をしており、食道とつながる入口(噴門 ふんもん)と十二指腸とつながる出口(幽門ゆうもん)が細く、それぞれが接近しており、胃が勾玉のような袋の形をしています。このような胃の特徴から、ウサギは吐くことができません。そのため、毛繕いした毛が胃の中で貯まる胃のうっ滞・毛球症になりやすいのです。

盲腸便の食糞

糞は硬い球状の形をしており、コロコロしています。糞を割ると繊維の塊で、全く臭いません。

ウサギの糞 ウサギの糞

盲腸では盲腸便と呼ばれる柔らかい便が、鈴なり状にまとまって排泄されます。盲腸便にはビタミンと良質なタンパク質が含まれており、ウサギはこれを直接肛門から食べ、再び消化吸収します(食糞)〔Cheeke 1944〕。

ウサギの盲腸便 ウサギの盲腸便 ウサギの盲腸便

食糞は主に深夜から早朝にかけて行われます。このようにウサギは食物を1度で消化吸収するのではなく、一旦ある程度消化して盲腸便として排泄し、さらにその便を食糞することによって完全に消化吸収をします〔Cheek 1944,平川 1995〕。

ウサギ食糞

腸内細菌

ウサギの消化器で最も特徴を持つのが盲腸です。お腹の大半を占めるほど大きく、盲腸にはたくさんの腸内細菌が共存し、繊維の細胞壁を壊し、消化吸収を行う発酵タンクとしての重要な役割をしています。薬に対して敏感で、特に抗生物質の内服投与により腸内細菌が崩れやすいです。その結果、悪玉菌が増えて腸炎を起こし、下痢や食欲不振が見られます(抗生物質性腸疾患)。悪玉菌が毒素を出して、全身状態が悪化して死亡するようなこと(腸性中毒)もありますので、普段からプロバイオティクスやぷればいおてっくすをサプリメントとして与えましょう。

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尿の色は黄色~茶褐色などの有色で、白く濁っています。餌や代謝の問題により、尿の色は変化し、これは健康なウサギでも見られます。色の元はポルフィリンやビリルビンの誘導体などの色素といわれています〔Norris et al.2001〕。

ウサギの有色尿

ウサギは体の中の余剰なカルシウムは主に腎臓から排泄されます。その結果、尿中に多量のカルシウムが含まれるために、尿は白く濁るのです〔Buss et al.1984〕。

ウサギのカルシウム尿

これがポイント!(特徴)
・夜型生活が基本だが、昼型にも合わせられる
・ストレスに弱い動物で、突然死やショック死することもある
・ウサギはボディランゲージで意思を表現する
・骨は軽くて薄いので骨折しやすい
・暑さに弱い
・陰部の脇の汚れは臭腺
・換毛のまだら模様はアイランドスキン
・切歯も臼歯も一生伸び続ける常生歯
・ウサギは吐けない
・抗生物質の内服投与で下痢しやすいので注意する
・食糞をする
・オシッコは色がついたり白く濁っている

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参考文献

■Buss SL,Bourdeau JE.Calcium balanace in laboratory rabbits.Miner Electrolyte Metab10(2):p127-132.1984
■Cheeke PR.Nutrition and nutritional disease.In The Biology of the Laboratory Rabbit 2nd ed.Mannig PJ,Ringer DH,Newcomer CE eds.Academic Press.San Diego.US:p321-333.1994
■Cortopassi D,Muhl ZF.Videofluorograpjic analysis of tongue movement in the rabbit (Orctolagus cuniculus).J Morphol240:p139-146.1990
■Donnelly TM.Disease problems of small rodents.In Ferrets,Rabbits,and Rodents:Clinical Medicine and Surgery.Hillyer EV,Quesenberry KQ.eds.WB Saunders.Philadelphia:p307-327.1997
■Hoyt RF Jr.Abdominal surgery of pet rabbits.In Current Techniques in Small Animal. Surgery.4th ed.Bojrab MJ.eds.William &Wilkins.Philadelphia:p777-790.1998
■Norris SA,Pettifor JM,Gray DA,Buffenstein R.Calcium Metabolism and bone mass in female rabbits during skeletal maturation:Effects of dietary calcium intake.Bone 29(1):p62-69.2001
■平川浩文.ウサギ類の糞食.哺乳類科学34:p109-122.1995

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