専門獣医師が解説するウサギの胃のうっ滞・毛球症〔Ver.3〕完璧な予防対策は?
目次
死亡原因トップのうっ滞と毛球症の全て!
ウサギの胃のうっ滞と毛球症は死亡原因のトップにあげられます。胃のうっ滞とは、食べたエサが胃の中で停滞して後ろの腸に流れにくくなった状態をさし、その結果、食欲不振や腹痛、軟便・下痢、動かなくなる、元気がなくなる等の症状が見られます。
なぜなるの?
ウサギの胃は入口(噴門)と出口(幽門)が細く、特徴的な形をしていますので、嘔吐ができません。
うっ滞の発生の要因の一つに、自ら毛づくろいして飲み込んだ毛が胃の中で塊となってしまっている場合を、胃の毛球症と呼ばれています。外から見たり、X線写真だけでは胃のうっ滞と毛球症の鑑別はできません。胃のうっ滞を起こす原因は、胃内に被毛をはじめとする異物が入っている場合と胃の蠕動が低下している場合の2つの要因があげられます。
薄緑縦長:牧草 緑色丸:ペレット
ウサギは几帳面に毛づくろいを行い、多少の毛が胃の中に入ります。猫は胃の中の毛を吐くことができますが、ウサギは胃の形状から吐くことができません。胃の中の排泄されなかった毛が多いと、胃の動きを低下し、食欲が落ちます。
胃内の被毛に食渣が絡んで毛球の基質が作られます。毛球が小さいと、無症状のこともあります。
パンやバナナなどの粘調性が高いエサも毛球を作りやすくします。そのため、最近はグルテン(※)フリーのペレットが胃のうっ滞・毛球症予防として注目されているのです。
※グルテン:小麦粉に含まれる、もちもちとした粘調性のある蛋白質です。
水をあまり飲まないと、胃の内容物の流動性が低下して、毛球ができやすいです
狭いケージに閉じ込めておく時間が長いと、ウサギは退屈になりストレスがたまり、毛づくろいを頻繁に行うようになります。ケージから出して運動させる時間が少ないと、胃腸蠕動を低下させます。カーテンや絨毯、タオルや毛布、ペットシーツやゴム、あるいはトイレのプラスチック製容器をかじったりすると、それが異物として、うっ滞や毛球の形成に関わることも多いです。
(タオルの繊維)
(輪ゴムとペットシーツ)
ウサギのうっ滞・毛球症は、餌が停滞したり、毛球などが原因となる以外にも、単に胃の蠕動が低下して起こることもあります。ウサギは消化管がデリケートなので、騒音や急激な温度変化などの不適切な環境、長距離の移動、恐怖や痛みなどのストレスが原因になります。
いつおこるの?
胃のうっ滞・毛球症は、あらゆる年齢で起こります。特にアメリカンファジーロップなどの長毛種や神経質なネザーランドドワーフなどに好発するかもしれません。全ての品種で、特に換毛期は要注意です。ウサギは抜ける毛の量が多いので、自ら毛づくろいを多くするようになります。換毛期は主に春と秋の季節の変わり目に発生し、春は冬毛から夏毛へと、秋は夏毛から冬毛へと生え変わります。しかし、室内で飼育されていると、換毛期が不明瞭になったり、年中だらだらと抜ける個体もいます。
・ウサギの胃は形状から吐くことができない
・換毛の時期に多発する
症状は?
胃のうっ滞・毛球症は、胃内容物(毛球)の量やウサギの年齢や体力などによって、症状が異なります。ゆっくりと数週間かけて症状が発現したり、突然発生することも珍しくありません。胃内容物が停滞するだけ、あるいは閉塞を起こします。重篤になるにつれ、腹部膨満、食欲低下、活動性の低下が見られます。
糞の異常も見られ、糞塊が小さくなったり、量が少なくなったり、あるいは全く排泄しなくなることもあります。
毛で連なった糞が出たり、軟便・下痢を起こすこともあります。
胃のうっ滞や毛球症により、胃腸内の環境が悪化し、腸内細菌が崩れてガスが発生することがあります。経過が長いと、痩削してきます。一方で胃内容物が充満して閉塞が起こると、腹部が膨満し、腹痛が起こります。
・ゆっくり進行するものから突然詰まることもある
・お腹が張って、食欲がなくなり、元気も落ちてくる
・糞は小さくなって出なくなったりする
・毛で連なった糞や軟便・下痢が起こることもある
治療は?
治療は内科治療と外科治療があります。動物病院で診察と検査を受けて、うっ滞と毛球症の診断を行い、症状に適した治療を選択します。X線検査ならびに消化管造影X線検査では胃の拡大は判断できますが、毛球の存在はCT検査で評価します。うっ滞であれば内科治療、大きな毛球や異物があれば外科手術を行います。
一般的には、まずは内科治療を行い、それでも改善しない時に外科手術を選択します。検査で大きな毛球がある、あるいは完全に閉塞している場合は外科手術で取り除くしかありません(胃切開毛球摘出手術)。しかしながら、全身麻酔にはリスクが伴います。また多くのウサギは体力を消耗していることが多く、安易に外科手術を行うことができません。治療手段と治療に対する反応は、ウサギによっても個体差があり、症状や状態が大きく影響します。また、どの位の期間で回復するのかということも、予測することも困難です。短期間で回復することもありますが、長期間にわたることもあります。外科手術で毛球を取り除いても、衰弱することもあります。
・胃のうっ滞や小さい毛球ならば内科治療、大きな毛球や異物があれば外科手術
予防と対策は?
予防と対策はずばり、以下の6つです。
- 牧草を多く与える
- ペレットを一騎食いさせない
- 運動をさせる
- 蛋白分解酵素を与える
- 毛球予防・除去剤を与える
- ブラッシングをする
- 水を飲ませる
ブラッシングをする
自らの毛を飲みこませないように、ブラッシングをストレスにならない範囲で習慣にしましょう。しかし、ウサギの皮膚はデリケートなので優しくブラッシングをして下さい。長毛種のうさぎでは毎日した方がよいかもしれません。また換毛期は頻繁に行う必要があります。ブラシ以外にも手袋で体を撫でて毛をとってあげるのも良い方法です。
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牧草を多くして、ペレットを考える
繊維質の高い牧草を主食にすると、胃腸蠕動が正常化になります。牧草は臼歯を使って時間をかけてすり潰してから食べますので、一機食いもしません。
どうしてもペレットが大好きなウサギであれば、与える回数を1日に3~4回に分けるなどの工夫をして下さい。グルテンフリーのペレットは胃のうっ滞や毛球症対策のペレットになりますので、現在のペレットから少しづつ切り替えてみましょう。換毛期には大豆油が配合されている毛球対策ペレットを混ぜて使うのも一方法です。
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運動させる
運動あるいは遊ぶ時間を設けるとストレスの減少になり、毛づくろいが減るうえに胃腸の動きが活発になります。ただし、壁紙、絨毯やカーテンをかじったりしないように、出きるだけウサギの行動範囲の届く場所に、食べられそうな物を置かないようにして下さい。
蛋白分解酵素剤を与える?
蛋白分解酵素が毛球を作るムコ蛋白質(粘性蛋白質)を分解し、毛球を細かくして排泄させるという方法が昔からウサギのうっ滞・毛球症の治療や予防とされてきました。ウサギの栄養補助食品としてタンパク分解酵素は、パイナップルのブロメライン酵素、パパイヤのパパイン酵素が使われ、生ジュースを投与したり、乾燥フルーツを食べさせたり、酵素がサプリメントとして配合されているペレットも販売されています。しかし、ウサギの胃の中は強酸性で、それぞれの酵素の活性は低くなると言われ、その効果に疑問視されているのが現状です。一方、果物に含まれている果糖は甘いので、ウサギは喜んで口にしますが、肥満や脂肪肝などの原因になりがちです。
毛球予防・除去剤を与える
毛球予防・除去剤は流動パラフィンやワセリンが配合されており、ペースト状でウサギになめさせて、毛球をほぐして糞に出しやすくします。流動パラフィンは鉱物油といって体内吸収されないものですので、基本的に体には大きな影響がありません。麦芽シロップも配合され、茶褐色をしており、甘味のあるペーストです。この甘味を気に入るウサギと気に入らないウサギがいます。
成分に小麦の胚芽油や大豆油を配合した製品もありますが、これらの植物性の油は体に吸収され、肥満や脂肪肝の原因になります。ショ糖(砂糖)も配合して甘味を強くしている製品も多く、あまりお勧めできません。
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水を飲ませる
毛球の形成には水分が少ないことも関与していますので、水をしっかりと飲んでいるか確認してください。あまり水を飲まないウサギであれば、野菜で水分をとらせるのも一方法です。
おまけ1
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おもけ2
腹部をマッサージすることで胃の蠕動を促進する方法も多くで報告されています、専門家にマッサージの方法を指導してもらわないといけません。
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・繊維が多い牧草を多く与える
・グルテンフリーペレットに切り替える
・野菜で水分をとらせる
・効果的な毛球予防・除去剤は選んで与える
・パパイヤ.パイナップル酵素はお勧めしない
・運動がなによりも一番の予防法かも
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まとめ
野生のウサギは、エサである植物を求めて移動し、天敵に遭遇したら巣穴に向かって逃げて隠れるので、必然的に運動量が多くなります。冬などはエサが乏しく、樹皮なども食べることもあり、高カロリーなエサを口にすることはほとんどありません。必然的に胃腸の動きも停滞すこともなく、胃のうっ滞や毛球症にはなりにくいです。ペットのウサギでは、いつでもエサが与えられ、あまり動くことがありません。日頃からエサや環境を注意してあげることで、胃のうっ滞・毛球症は予防することができる病気です。
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