ギリシャリクガメってどんなカメ?専門獣医師が解説する知らないといけない生態と特徴〔Ver.3〕
目次
飼いやすくて人気のあるリクガメ!
ギリシャリクガメは背甲の模様がギリシャ織のようにみえることが名前の由来で、学名のgraecaはギリシャという意味です。分布域は広く、10種以上の亜種が知られ、亜種によって大きさや色などが異なります。しかしながら、亜種の分類が混沌としており、独立種としての意義も唱えられています。ペットとして販売時に明記されている流通名は、必ずしも正確な亜種名とは限らないのです。性格も温和で、とても飼いやすいリクガメです。日本でのリクガメの中でも飼育頭数が最も多いです。
分類・生態
分類
カメ目リクガメ科チチュウカイリクガメ属
学名:Testudo graeca
英名:Greek tortise,Spur-thight tortoise
分布
ヨーロッパ南部、アジア南西部および西部、アフリカ北西部、地中海諸島
生態
環境:分布域が広く、森林や草原、山地等の比較的乾燥した地域
行動
・昼行性で昼間に活動し、夜は窪みのある穴で過ごしています。
・亜種や個体群によって、冬眠で越冬するものもいます〔安川 2000,安川2002〕。
食性:草食性で、主に植物や低木の葉を食べています。
寿命:40~50年
身体
甲長:20~30cm(最大甲長約36㎝)
亜種
多くの亜種の中で、本邦に輸入される数が多い種類は、アルジェリアギリシャリクガメ、トルコギリシャリクガメ、アナムールギリシャリクガメ、アラブギリシャリクガメです。他にもキレナイカギリシャリクガメ、モロッコギリシャリクガメ、チュニジアギリシャリクガメ、ニコルスキーギリシャリクガメ、ダゲスタンギリシャリクガメ、ザグロスギリシャリクガメ、スースギリシャリクガメ、イランギリシャリクガメ、アンタキヤギリシャリクガメ、アルメニアギリシャリクガメ、カスピギリシャリクガメ、ランバートギリシャリクガメ、レバントギリシャリクガメ、ニコルスキーギリシャリクガメなどが知られています。現在は繁殖(CB)個体も数多く流通しています。
ムーアギリシャリクガメ(T.g.graeca)
ギリシャリクガメの基亜種で、アルジェリアギリシャリクガメやグラエカ種という流通名があり、亜種の中では小型です。アルジェリア北部~モロッコ北東部、そして一部スペイン南部の山地に生息しています。アルジェリア北部~モロッコ北東部の個体は冬眠しません〔安川 2000,安川 2002,Ernst et al.1999〕。背甲のギリシャ織模様は成長に伴い不明瞭になり、暗~灰褐色を帯びる個体が多く(ブラックギリシャリクガメ)、お尻の甲羅はフレアー状に外側へ張り出しません。しかし、亜種の中でも、大きさ、色彩もかなり違うため鑑別が難しく、さらに細かい亜種へと分類が分かれるかもしれない種類です。入手困難な亜種なため、価格がやや高価です。
コーカサスギリシャリクガメ(T.g.Iberia)
亜種の中で最も大型になる亜種で、トルコギリシャリクガメやイベラ種という流通名があります。アゼルバイジャン、ロシア西部に生息し、最も寒さに強い亜種で、数ヶ月の冬眠をします〔安川 2000,安川2002〕。背甲のギリシャ織模様は多彩ですが、暗色の模様が多く入るようになり(ブラックギリシャリクガメ)、腹甲全体にも模様か多いです。お尻の甲羅はフレアー状に張り出し、特にオスでは外縁は尖ることもあります。
アナムールギリシャリクガメ(T.g.anamurensis)
トルコ中南部の地中海沿岸性気候の低地に生息し、基本的に冬眠はしません〔安川 2000,安川 2002〕。大型の亜種で、背甲のギリシャ織模様は不規則で、全体が暗褐色になる個体が多いです(ブラックギリシャリクガメ)。
お尻の甲羅はフレアー状に張り出し、背甲は上からみると台形のようです。
アラブギリシャリクガメ(T.g.terrestris)
テレストリスギリシャリクガメという別名もあり、亜種の中では小型で、全体的に丸みを帯びています。そして、背甲のギリシャ織模様が不明瞭になることも多く、全体が黄色あるいは黄褐色になり(イエローギリシャリクガメ/ゴールデンギリシャリクガメ)、ギリシャリクガメの中では、最も鑑別がしやすい亜種かもしれません。シリア、トルコ南西部、イラク北西部の、ステップ気候や地中海性気候の地域の乾燥した地域に生息し、ギリシャリクガメの中でも最も寒さに弱く、基本的に冬眠をしません〔安川 2000,安川2002〕。
背甲の縁甲板や臀甲板のフレアーが張り出しています。
キレナイカギリシャリクガメ(T.g.cyrenaica)
キレーナギリシャリクガメとも呼ばれ、リビア北東部のキレナイカ高原に生息し、亜種の中では小型です。背甲はギリシャ織模様にはならずに、大小の不規則の暗色の模様が散らばっており、腹甲の模様も不規則に入り、一部連続しています。
背甲の縁甲板や臀甲板のフレアーが張り出しています〔安川 2000,安川 2002〕。
性質
基本的に神経質で、臆病なカメです。飼育することで人に応じない個体になることが多いです。
特徴
ギリシャ織姫模様の背甲
背甲は暗褐色で黄褐色のギリシャ織のような模様が入っていますが、亜種や個体群によって模様は不明瞭になり、かつ全体が黄色あるいは黒褐色になることもあります。
亜種の鑑別が難しいため、甲羅が黄色を帯びるものをイエローギリシャリクガメ、黒褐色を帯びるものをブラックギリシャリクガメという単純な流通名で呼ばれることもあります。
フレアー
亜種によっては、背甲の縁甲板や臀甲板が張り出している(フレアー)ものもいます。
腹甲の蝶番
腹甲の各甲板に黒褐色のまだら模様が入ったりたり、変異が大きいです。
全ての亜種に共通して腹甲に1つの蝶番があります。
蹴爪
後肢と尾の間にそれぞれ丸い突起状の鱗(蹴爪)があり、英名のSpur-thighed tortoise(トゲモモリクガメ)の由来になっています〔安川 2000,安川2002〕。
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・地中海沿岸にいるリクガメ
・ギリシャ織模様の甲羅
・温和な性格
・亜種の鑑別は容易でない
・昼行性
・草食性
・腹甲の蝶番
・臀甲板は1枚
・大腿に突起状の鱗(蹴爪)
■安川雄一郎.チチュウカイリクガメ属の分類.クリーパー.創刊号.クリーパー社.東京.p4-19.2000
■安川雄一郎.チチュウカイリクガメの分類.クリーパー13.クリーパー社.東京.p4-23.2002