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爬虫類の腎不全と痛風

3 リクガメの病気 この記事は約 10 分で読めます。 488 Views

腎不全と痛風って

腎不全は動物病院で血液検査などを行って診断するため、外観だけで判断できません。腎機能が低下すると老廃物を排泄できずに、体内に蓄積して症状が発現します。食欲や活動も低下し、痩削ならびに体重減少が見られます。しかし、これらの症状は他の疾患でも見られる非特異的なもので、腎不全との鑑別をする必要があります。腎不全は無症状の期間が長く、重症になって初めて異常に気づくことも珍しくはありません。哺乳類では腎不全によって尿素が体内に蓄積する状態を尿毒症、尿酸がたまる状態を痛風と呼ばれています(哺乳類も尿酸を少量だけ体内で作っています)。つまり、固形の尿酸を老廃物として排泄するリクガメ、トカゲ、ヘビの腎不全では痛風が起こり、水溶性の尿素やアンモニアを排泄する水ガメでは尿毒症が起こります。なお、血液検査において尿酸値が高くなることを高尿酸血症と言います。

原因は?

腎不全や痛風の多くがエサや脱水などが多くの発生要因として考えられていますが、一般的に病因を特定できないことが多いです〔Casimire-Etzioni et al.2004〕。痛風の原因も、尿酸の過剰な産生(エサの問題/高蛋白質のペレットを草食性のリクガメやグリーンイグアナに与え過ぎる等)、そして、脱水や腎不全による尿酸の排泄低下などです〔Hernandez-Diver et al.2008,McGavin et al.2007〕。アノールやカメレオンは基本的に水滴を口にするため、水入れの容器から水を飲むことはできませんので、水の与え方の知識不足から脱水が起こるケースも多いです。また、乾燥地帯に生息するリクガメなどは水分を多く必要としないという間違った知識から、水入れを用意しなかったり、低湿度の環境を提供しがちなことが、フトアゴヒゲトカゲやヒョウモントカゲモドキに脱水を生じさせやすくなりがちです。

 

高尿酸血症になると、尿酸の結晶が腎臓などの臓器に沈殿して結晶化します〔Zwart 2006,Hernandez-Divers 2004,Johnson 2004,Montali et al.1979〕。これを内臓痛風と呼ばれ、腎臓以外にも肝臓などでも起こります。痛風の状態になった腎臓は肥大し、トカゲでは肥大した腎臓が直腸や結腸を圧迫して便秘を起こともあります〔Schmidt et al.2020〕。また、尿酸の結晶が関節にも沈着することで関節炎を起こし、四肢の関節が腫れて歩行障害を生じます(関節痛風)。特に積極的に飲水をしないフトアゴヒゲトカゲなどに好発します。

フトアゴヒゲトカゲの痛風の詳しい解説はコチラ!

原因は何?

腎臓機能を直接低下させる腎不全の主な原因は細菌感染で、いくつもの種類の細菌が泌尿器系に感染する可能性があり得ます。爬虫類ではエロモナス感染症などによる敗血症で腎不全を生じたり〔Kim et al.2013〕、また、全身疾患であるマイコバクテリア感染症による腎不全の肉芽腫性炎も報告されています〔Ariel et al.1997,Greer et al.2003〕。ウイルスでは、ヘビのIBDによる腎不全の発生があり得ます。他にも爬虫類では腎臓における寄生虫感染もあり、ヘビでの吸虫〔Innis et al.1999,Johnson et al.1998〕、カメやヘビの核内コクシジウム〔Zwart 1964〕、ヘビやカメでのアメーバ〔Hollamby et al.2000,Jacobson et al.1983〕、リクガメやヘビでのヘキサミタ〔Zwart 2006〕などの寄生が有名です。感染以外にもビタミンA欠乏や薬剤投与でも腎不全が発生します。ビタミンAが欠乏することで、腎臓の粘膜上皮の扁平上皮化生を引き起こし、腎臓の集合管などの粘膜が剥離した角化細胞の蓄積により、管の部分的な閉塞を引き起こし、尿の腎クリアランスを減少させます〔Reavill 2010〕。

爬虫類に対してのゲンタマイシン投与の副作用として、痛風および腎不全の報告もあります〔Montali et al.1979〕。また、詳細は不明ですが、腎嚢胞〔Reavill 2010〕、石灰化〔Zwart 2006,Hernandez-Divers 2004,Johnson 2004〕、アミロイド沈着〔O’Malley 2005,Garner et al.2003〕なども画像検査や死後の剖検で確認されています。腎臓の石灰化は、特に爬虫類によく見られるもので、組織の壊死での発生またはカルシウム代謝の障害(腎不全や上皮小体機能亢進症など)による沈着です。石灰化は、血管、心臓、肺、精巣、および皮膚でも起こります〔Richman et al.1995,Shively et al.1985〕。なお、腎不全や痛風は、慢性腎疾患として生涯持病として付き合う必要がある場合も少なくありません。腎臓の組織が線維化や石灰化などの不可逆的変化を伴い、正常に戻らない状態になるからです。末期の腎不全になると全身の浮腫なども生じます。なお、高齢の爬虫類では腎臓腫瘍の報告もあります〔Barten et al.1994,Burt et al.1984,Gravendyck et al.1997,Jacobson et al.1986,Miller 1998〕。

 

  

治療は?

基本的に輸液を行う、あるいはしっかりと飲水をさせて、老廃物である尿素や尿酸などを体外へ排泄させます。温浴の頻度をあげることも効率よく水を飲ませるため効果的で、エサや飼育環境を見直す必要もあります。重症であれば抗尿酸薬を投与することもあります。

参考文献

■Ariel E,Ladds PW,Roberts BL.Mycobacteriosis inyoung freshwater crocodiles (Crocodylus johnstoni).Aust Vet J75:831-833.1997
■Barten SL,Davis K,Harris RK et al.Renal cell car-cinoma with metastases in a corn snake (Elaphe gut-tata). J Zoo Wildl Med 25:123-127.1994
■Burt DG,Gillett CS,Rush HG.Two cases of renalneoplasia in a colony of desert iguanas.J Am VetMed Assoc185:1423-1425.1984
■Casimire-Etzioni AL,Wellehan JFX,Embury JE et al.Synovial fluid from an African spur-thighed tortoise(Geochelone sulcata).Vet Clin Pathol 33:43-46.2004
■Garner MM,Gyimesi ZS, Rasmussen JM et al.Anamyloid-like deposition disorder in komodo drag-ons.Proc Assoc Reptile Amphibian Vet. Minneapolis.MN:p50-51.2003
■Gravendyck M,Marschang RE,Schroder-Graven-dyck AS et al.Renal adenocarcinoma in a reticu-lated python (Python reticulatus).Vet Rec 140:374-375.1997
■Greer LL,Strandberg JD,Whitaker BR.Mycobacte-rium chelonae osteoarthritis in a Kemp’s ridley seaturtle(Lepidochelys kempii).J Wildl Dis39:736-741.2003
■Hernandez-Divers SJ.Endoscopic renal evaluationand biopsy of Chelonia.Vet Rec154:73-80.2004
■Hollamby S,Murphy D,Schiller CA.An epizootic ofamoebiasis in a mixed species collection of juveniletortoises.J Herp Med Surg10:9-15.2000
■Innis CJ, Kincaid AL: Bilateral calcium phosphateureteroliths and spirorchid trematode infection in ared-eared slider turtle (Trachemys scripta elegans) witha review of the pathology of spirorchiasis. Bull AssocReptil Amphib Vet 9:32-35.1999
■Jacobson ER, Long PH, Miller RE, et al: Renalneoplasia of snakes. J Am Vet Med Assoc 189:1134-1136.1986
■Johnson CA,Griffith JW,Tenorio P et al.Fataltrematodiasis in research turtles.Lab Anim Sci48:340-343.1998
■Jacobson E,Clubb S,Greiner E.Amebiasis in red-footed tortoises.J Am Vet Med Assoc 183:1192-1194.1983
■Johnson JD.Urogenital system, In BSAVA Manual of Reptiles.Girling SJ, Raiti P eds.BSAVA.Gloucester.UK:p261-272.2004
■Miller HA.Urinary diseases of reptiles: Pathophysi-ology and diagnosis. Semin Avian Exotic Pet Med7:93-103.1998
■Montali RJ,Bush M,Smeller JM.The pathology ofnephrotoxicity of gentamicin in snakes. A model forreptilian gout.Vet Pathol 16:108-115.1979
■O’Malley B.Snakes.In ClinicalAnatomy and Physiology of Exotic Species.O’Malley B ed.Elsevier/Saunders.Philadelphia.PA:p77-96.2005
■Reavill DR.Urinary Tract Diseases of Reptiles.Journal of Exotic Pet Medicine19(4):280-289.2010
■Richman L, Montali R, Allen M et al.Widespreadmetastatic soft tissue mineralization in vitamin Ddeficient green iguana (Iguana iguana).Vet Pathol32:560.1995
■Shively MJ,Edwards K.Pathological calcification in agreen iguana (Iguana iguana).Avian/Exotic Pract2:32-33.1985
■Zwart P.Intraepithelial protozoon,Klossilla boae n.sp.,in the kidneys of a boa constrictor.J Protozool11:261-263.1964
■Zwart P.Renal pathology in reptiles.Vet Clin NorthAm Exotic Anim Pract 9:129-159.2006

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